トラベルライター含むフリーランスで海外に住んでいる日本人は、確定申告や源泉徴収に関して不明点・不安点が多くあるようです。そもそも海外に住んでいるのに日本で払う必要があるのか。海外現地でも確定申告しなければならないのか、トラベルライターが不安なく仕事に打ち込めるよう、海外在住者の確定申告と源泉徴収事情をすべて解説します。
海外在住のトラベルライター。収入源が重要
海外在住のトラベルライターやフリーランスの方も、近年は大分増えてきました。特に20代の男性女性で増加傾向で、海外現地の旅行会社やホテルのゲストリレーションズでアルバイトをする傍ら、トラベルライターとして旅行記事を書いている人が多く見受けられます。
また、トラベルライターといっても記事を書くだけが仕事ではなく、サイト制作やSEOコンサルといったITの事業を担い、毎月安定した収入を得ている海外在住フリーランスも少なくありません。
今回ご紹介する海外在住のトラベルライターの確定申告や源泉徴収に関しては、まずは収入源がどこにあるかが重要となります。
多くの海外在住トラベルライターは「日本にある企業から報酬を得ている」
長年海外に住んでいれば、居住国で収入源を見つけることもできるようになりますが、海外在住歴が浅い内は、依頼主のほとんどは日本にある日系企業となります。この場合は日本で収入を得ているため、日本にて確定申告をする必要があります。そのため、依頼主によっては源泉徴収税を抜いた額を報酬とするところもありますし、「申告はご自身でお願いします」と源泉徴収を含まない金額で報酬を入金するところも普通です(どちらかというと、後者が多いです)。
「でも住民票を抜いているから確定申告の必要はないのでは?」という海外在住トラベルライターも
しかし、中には「私は日本を離れるときに住民票を抜いている。だから日本で確定申告をするのはおかしいのでは?」と考えるトラベルライターもいますね。確かに一見すると、日本で確定申告の必要はなさそうですが、実は異なります。
住民票を抜いて海外転出届を出している日本人は、一般的には「非居住者」と呼ばれる括りとなります。しかし、日本で確定申告の必要の有無は、居住者か非居住者かが問題ではなく、「収入の源泉が日本か海外か」が重要となります。上記のように日本にある日系企業から報酬を受け取っている場合は、日本が源泉となるので、日本で確定申告をする必要が出てきます。
また、海外に183日以上居住を想定する人が一般的に非居住者と呼ばれ、「183日ルール」などと呼ばれることもありますが、税務申告は当該国と日本の租税条約(国家間の納税の決まり)や、当該国の法律によっても異なりますので、一概に説明することはできません。
源泉徴収税が引かれている場合は、確定申告の必要はない
ちなみに、上記で触れたように、依頼主によっては、報酬の中から源泉徴収税を差し引いた金額をトラベルライターに振り込むパターンも見受けられます。これは源泉分離課税と呼ばれ、トラベルライター側からの確定申告は不要とみなされます。ただし、この場合は年末調整後、3月の還付手続きでお金が戻ってくる可能性があることも覚えておいてください。
納税管理人は家族に依頼しよう
海外在住者の中で、非居住者に該当するトラベルライターは、オンラインによる納税申告ができません。そのため、日本に帰国して直接税務署に足を運ぶか、納税管理人を指定して、彼らにお願いするかのいずれかを選択することになります。納税管理人は自分に代わって納税の義務を全うしてくれる人となり、いわゆる代理人です。収入が増えてくれば税理士にお願いするのもいいのですが、収入が微々たるうちは、納税管理人は家族の誰かにお願いするのがよさそうです。ちなみに、「仲のいい友達や知人は駄目なの?」という意見もありますが、仮に納税忘れをしたり、何かしらのトラブルで納税ができなかった場合、責任を負って滞納処分を受けるのは納税管理人となります。そのため、友人や知人はあまりおすすめしません。
海外在住国がトラベルライターの収入源の場合。確定申告はどうする?
一方で居住している海外現地が収入源の場合はどうすればいいのでしょうか。海外現地の旅行会社やホテルから依頼を受けたり、現地法人の日系企業が依頼主である場合が該当します。このように海外居住国に源泉がある場合は、当然のことながら居住国にて確定申告を行うことになります。
ビザによっては確定申告ができないこともある
ただし、ここで注意点が1つ。トラベルライターやフリーランスで海外現地に住んでいる人の中には、観光ビザを更新して中長期滞在をしている方も少なくありません。観光ビザはご存知の通り、観光目的での滞在となるので、現地で収入を得る(働く)ことは認められていません。そのため観光ビザのトラベルライターが現地で確定申告をすると矛盾が生じてしまいます。
そのため、このような状況下にあるトラベルライターやフリーランスは、基本的に確定申告はしないで、収入=所得となります。「でもそれって違法でしょ?」と言われるとぐうの音も出ませんが、実際このようなケースは非常に多くありますので、正論をかざすだけではなく、実情も把握しておくことも大切です。ちなみに、他にも現地人と結婚して配偶者ビザで滞在している人も同様で、確定申告をすると矛盾が生じてしまう可能性が高いです。ただし、居住国によってビザの活動範囲は異なるので、そのときになったら調べてみるのがいいでしょう。
フリーランスのトラベルライターは経費を有効活用しよう
仕事の備品や取材にかかる費用を経費で落とす……というと、最低でも個人事業主として登記が必要と考えがちですね。しかし、個人事業主ではなく、フリーランスであってもトラベルライターとしてあらゆる備品や必要支出を経費として落とすことができます。例えば仕事の必需品であるパソコンや取材をするために必要な移動費や宿泊費も経費として申請できます。
ただし、私生活と混在する微妙な支出に対しては、100%経費申請するのではなく、「〇%分を仕事で使ったため、経費で落とす」といったような按分が必要となります。また、基本的に確定申告は住民票記載の住所を管轄している税務署に申告するものとなるので、非居住者の場合はそもそも経費が認められないことも覚えておきましょう。基本的に経費を有効活用したい場合は、拠点(事務所)は日本に置き、海外移住ではなく、あくまでも日本在住であり、取材案件として海外出張するという体が必要となります。
海外在住のトラベルライター。確定申告や源泉徴収の実情は?
現在は世界中に海外在住の日本人トラベルライターが、各々フリーランスとして活動しています。では、トラベルライターは漏れなくしっかりと確定申告をしているのかと言えば、決してそうとは言い切れません。法律上は年間で20万円以上の所得を得た場合は確定申告の必要が発生しますが、トラベルライターとして駆け出しの数年間は、確定申告はおろか、普段の生活も安定しない状況が続くこともあるでしょう。そんなときは無理をせず、ある程度収入が安定した後に、改めて納税を考えるのがいいでしょう。ただし、トラベルライターもフリーランスも立派な自由業です。社会の枠組みの中で生きるうちは、必ず確定申告や税務申告の知識も学習しておくようにしましょう。