日本におけるフリーランスの人口は1500万人以上と言われており、その中には、生活の拠点を海外に移す人も多くなってきました。しかし、海外移住は何かと困難がつきもので、結局現地採用で会社員になった、という人がほとんどです。
では、海外移住先で会社員ではなくフリーランスを選択するメリットはどのような点が挙げられるのでしょうか。今回はデメリットも交えてご案内します。
憧れの海外移住を実現!フリーランスだからこその新しい道
「夢はいつか海外移住を……」という人はいまもなお増え続けています。昨今は英語を話せる人も多くなってきましたし、海外インターンや留学などで海外暮らしを体験する人も増えてきました。
そういった人の中には「若いうちに海外移住を果たして、現地で働きたい」と考え、実際に実行に移す人もいます。フリーランスとしての働き方とお金の稼ぎ方を多少なりとも心得ていれば、あとは片道航空券を買って日本を発つだけとなります。
海外移住後にフリーランスから会社員に転身を余儀なくされる人が多い
しかし、単身海外移住は一朝一夕にはいきません。会社の辞令で行く駐在員は、海外現地に降り立ったら、現地の生活をアテンドしてくれる秘書やプール付きの高級マンション、自由にタクシーを使えるタクシーカードなどが支給されますが、フリーランスは無論そのような手厚い待遇はなく、現地でゼロから築き上げなければなりません。
そのため、案件を思ったように受注できなかったり、現地の生活費が想像以上に高くつき、現在の収入では毎月赤字になってしまう、といった状況が数か月にわたり続いてしまうと、フリーランスを諦めて現地の日系企業に就職を余儀なくされるケースが散見されます。
フリーランスのキャリアが長くなると、現地の就職が難しくなるって本当?
もしかすると国や地域によって状況は異なるのかもしれませんが、少なくともアジア圏においては、フリーランスとしてのキャリアが10年、20年と長くなってしまうと、その後の現地採用で内定を貰うのが若干困難となります。
現地企業の採用担当者からすると、海外でフリーランスとして10年以上活動している人は、自立心が高く、会社が求める理想の社員に育ってくれないとして、敬遠されがちです。良くも悪くも「海外に適応しすぎているため、扱いづらい」というのが本音のようです。
そのため、海外移住後にフリーランスを諦めて現地就職をするのであれば、なるべく早い時期に区切りを付けるといいかもしれません。もちろん、一度会社員に転身後に、再び退職してフリーランスの道を歩むことは容易です。会社側も、現地採用者が5年10年と末永く働いてくれるものとは考えていないはずです。
海外移住で会社員ではなくフリーランスを選択するメリットとは
では、海外移住を果たしたのち、会社員として働くのではなく、フリーランスの道を選択するメリットとはどのような点が挙げられるのでしょうか。
憧れの海外移住とノマドを365日体験できる
そもそも海外移住に憧れたのは、トラベルライターのように世界を回りながら生計を立てたり、ノマドとして職場を選ばず誰からも指図されず、自由に生きる道を選びたいから、ではないでしょうか。
現地採用で会社員として働くと、よほど待遇がいいホワイト企業でない限りは、日本と同じようにサービス残業があったり、1日12時間労働を強いられたりします。海外支店は日本人が1~2人程度しか常駐していないので、現地採用であっても、駐在員と同じように責任ある仕事を押し付けられます。
「海外移住したけど、日本で働いていたころと生活が変わらない……」とうなだれる現地採用者を横目に、カフェでコーヒーを啜りながらパソコンを打っていると、「フリーランスでよかった」と心から思えます。
海外で働く現地採用の会社員よりもフリーランスは収入が上
海外で働く現地採用者の平均月収は、英語力など特別なスキルなしで、1200~2000ドルが相場となります。欧米圏内でも実はそう大差はなく、仮に現地採用で給料が30万円貰えたとしても、その分税金と生活費が高いため、生活の質は決して高くはありません。
また、現地採用者の多くは昇格・昇給がほとんどありませんので、現在の生活水準を上げるためには、転職するか、副業を掛け持ちするかとなります。
一方でフリーランスは良くも悪くも出来高となりますし、日本企業から案件を受注すれば、日本水準の収入を海外移住先で確保することができ、往々にして現地採用者よりも手取りの収入は多くなります。
フリーランス最大のメリット!将来設計を描くことができる
上述したように、現地採用者は昇格や昇給がないため、将来に渡って同じ給料をもらい続けることになり、生活水準を上げる方法を知りません。一方でフリーランスは、自由自在に将来設計やビジネスプランを描くことができます。
例えば、旅行会社から毎月記事を請け負っているトラベルライターであれば、自分でブログや旅行予約サイトを立ち上げたり、ゆくゆくは旅行会社を自分で起業することだってできるはずです。
海外移住先でフリーランスの道を選択するデメリットとは
一方で海外移住先でフリーランスとして生きるデメリットもあります。海外でフリーランスを選択する際は、メリットとデメリットを天秤にかけ、どちらがより自分の理想の人生プランに沿っているかを考えてみるといいでしょう。
海外移住で最重要の「滞在ビザ」の取得が困難
フリーランスとして会社に属さず、海外移住を果たすためには、「滞在ビザ」の問題をクリアしなければなりません。海外で働く会社員は、ビジネスビザやレジデンスカードによってビザ免除を受けていますし、その一切の手続きは会社側で行ってくれます。
一方でフリーランスは、ビジネスビザやレジデンスカードを取得することができませんので、基本は旅行者と同じように観光ビザを更新しながら現地に滞在することになります。「ビザの更新ができなくなったから、帰国することになった」というフリーランスの海外移住者も実際少なくはないようです。
自分で仕事を作らなければ、最悪収入ゼロ
会社員はどんなに仕事をさぼったり、目標に到達できなくとも、解雇されない限りは毎月決まった収入を得ることができます。その一方で、フリーランスは、どんなに仕事を探しても見つからないこともざらにありますし、焦って安請け合いをしてしまうと、時間と手間と収入がアンバランスとなり、トータルで収入が目減りしてしまうことになります。
また、フリーランスは自分で自分を管理しなければなりません。仕事をさぼってしまったり、病気で身体を壊して仕事ができない期間は、当然無給となります。
有給休暇もなければ退職金もありませんし、保険や年金も自分で加入しなければなりません。フリーランスになれば自由を手に入れることができるのは間違いありませんが、その一方でフリーランスにはフリーランスの社会が待っていることも覚えておいてください。
海外移住の目的を考える。フリーランスは「手段」でしかない
今回は海外移住先でフリーランスを選択するメリットとデメリットをご案内しましたが、まずは海外移住をする目的を再度確認してみてはいかがでしょうか。
そして、自分の理想の海外生活やライフプランを実現する上で、フリーランスと会社員のどちらがより助けになってくれるかを考えてみましょう。
フリーランスは海外生活を持続するための「手段」の1つでしかありません。海外移住当初は生活に慣れる意味でも、フリーランスにこだわらずに、安定した収入を得られる方を選んでみるのがおすすめです。