近年フリーランスの理解と発達により、旅行ライターを目指す若い方が多く見受けられるようになりました。そこで、最初の旅行ライターが目指す国として、大きな支持を集めているのが東南アジアの「ベトナム」です。今回は旅行ライターの海外移住先としてベトナムが人気の理由をご紹介します。
初めての旅行ライターの移住先として大切な3つの要素
旅行ライターになることを目標に、まずは海外移住国を決めることになりますが、ほとんどの方は、旅行ライターはもちろんのこと、海外に暮らすことさえ初めてという人ばかりでしょう。初めての海外移住の際、国を決める大事な要素が3つあります。その3つを網羅しているのが、今回紹介するベトナムと言えるでしょう。
夜道も歩けるベトナムの「治安の良さ」
東南アジアと言えば、漠然と治安が悪いイメージがありますね。確かに日本と比べると窃盗やひったくりといった軽犯罪は非常に多くあるのは事実となります。しかし、ベトナムのハノイやホーチミンといった都心は、その中でも非常に治安が良好で、銃の発砲件数は日本とおよそ同じ程度。ベトナムは重犯罪に対しては非常に重い罪を課せているので、必然的に犯罪率が高くないことが挙げられます。旅行ライターを目指す人のうち、女性ならばどうしても治安は不安材料ですが、ベトナムには日本人女性の一人暮らしも多くいます。
ベトナムのハノイとホーチミンには大きな「日本人町」がある
移住先の国を決めるさい、その国の在住日本人の規模は実は非常に大切となります。その都市に日本人が少ないということは、日系企業数も少ないため、現地での仕事探しが困難となります。また私生活にも影響は大きく、和食レストランや日本食品を販売するスーパーや輸入雑貨店もほとんどありません。基本的にどんなにその国が好きでも、普段の食事は日本食を選ぶこと多くなるのが普通。
一方でベトナムはハノイやホーチミンにはたくさんの日系企業をはじめ、日本人が暮らしています。ファミリーマートやミニストップ、セブンイレブンにイオンなども進出していますし、町の中心にある日本人町には和食レストランも並んでいます。海外に住む期間が長くなればなるほど、日本食が恋しくなってくるので、日本食品店やレストランが1店舗でも多くあるというのは、旅行ライターにとっても非常に重要な要素となります。
ベトナムと日本は物理的な「距離が近い」
旅行ライターになって初めての移住先が、日本の裏側にあるブラジル、もしくは時差で10時間以上離れている欧米というと、日本にいる両親もなかなか受け入れてくれないのではないでしょうか。ベトナムは東南アジアの中でも日本との距離が近く、フィリピンに次ぐ2番目の距離となります。飛行機の搭乗時間はおよそ6時間程度なので、ひと眠りで到着する気軽さが嬉しいです。距離が近ければ航空券も安いので、1年に1~2度帰国することも容易ですし、急な用事で日本に帰らなければならないときも、1日で帰国することができます。
旅行ライターの登竜門的存在のベトナム
ベトナムは旅行ライターにとっては、登竜門のような国となります。その理由は「旅行ライターとしての仕事が圧倒的に見つかりやすい」からです。旅行記事を含む当該国の海外ライターとしてのニーズは、単純に日本人旅行者数に比例します。日本人にとってニッチな観光都市や国は当然需要が低いので、海外現地ライターとして活躍する機会もそれほど多くはありません。一方で、ベトナムは新型コロナ以前の2019年は年間80万人の日本人が訪れる人気の国でした。これは同様に人気のシンガポールとほぼ同じ旅行者数となります。
もちろんシンガポールと比べれば国土が大きい分観光地も多いですし、物価も安いので、ビギナーの旅行ライターにとっては圧倒的に住みやすい国と言えます。
旅行ライターに大切な要素。親日度は世界トップクラスのベトナム
海外各国の「親日度」というのは、旅行ライターにとって意外と大切な要素となります。親日度とはご存知の通り、日本人のことに興味がある、あるいは好いている人数の大まかな割合となります。ベトナムはアジアの中では台湾やマレーシアと並び、親日度はおよそ80%。8割のベトナム人が「日本が好き」と回答してくれている調査結果があります。
親日度が高い国では、旅行ライターとしての活動や生活がとてもしやすいことがメリットとして挙げられます。比較的取材も許諾をとれやすいですし、こちらが日本人というだけで好意的に接してくれる人が多くいます。また、ベトナムは小学3年生から高校卒業までに、第一言語と第二言語(中学生から)を必修科目として選択しなければなりませんが、日本語はその第一言語として英語やドイツ語、フランス語と並んでピックアップされています。そのため、近年は日本語が話せる学生や若者も多くなり、取材の際に英語やベトナム語が要求されないことも多々あります。
日本が大きな傷跡をベトナムに残したことも忘れてはいけない
1940年代のいわゆる「アジア太平洋戦争」時、大日本帝国である日本が仏印進駐をしたことは忘れてはいけません。当時フランスの植民地であったベトナムは、日本の進駐によって植民地解放を期待しましたが、むしろフランスと結託して植民地支配を強め、大量の餓死者を出しました。いまでも当時を生きた年配のベトナム人の中には、日本人を嫌う方も少なくありません。
旅行ライターとしてその国で活動するならば、このように日本と当該国の歴史上の結びつきと影響もしっかりと学習しておく必要があります。
2010年代から観光地化が進んだ「これからの国」ベトナム
同じアジアでもタイやシンガポール、バリ島などは古くから日本人に人気の旅先であり、またしっかりと観光地化されているのが特徴です。しかし、ベトナムが旅先として知られるようになったのは1990年代となり、日本人が高い満足度を得られるようになったのは、2010年代と、わずか10年ほど前となります。ベトナムは社会主義として古くは外国人をあまり歓迎していませんでした。
しかし、市場開放を謳い1986年のドイモイ政策以降、積極的に外資を受け入れ発展。それと同時に旅行者誘致にも注力をはじめ、2021年現在も観光開発の途中となっています。その甲斐もあり、従来まではベトナムの観光地といえば「ハノイ」と「ホーチミン」の2都市のみでしたが、中部リゾート地のダナン、最大のビーチエリアのニャチャン、砂丘のムイネー、リゾートアイラインドのフーコック島なども旅行先として人気が上がってきました。旅行ライターにとっては「取材し甲斐のある観光地」が多々あり、まだガイドブックにも紹介されていない穴場の観光地を見つけ、自分の力で日本人旅行者を誘致できる魅力がベトナムにはあります。
ライバルも少ないベトナムで海外旅行ライターをはじめてみては
旅行ライターとして収入が少ない駆け出しのころは、ベトナムのような物価の安いアジア諸国に移住するのがおすすめです。ベトナムは近年若者やフリーランスの日本人も増えてきましたが、まだまだ大半が企業の辞令で出向する駐在員です。そのため旅行ライターとしてのライバルも少ないので、本業でライター職に従事している人は重宝され、仕事は比較的早く見つかるはずです。最初の移住先としてベトナムを選んでみてはいかがでしょうか。