トラベルライターが覚えおきたいカメラの撮影技術とパターン
トラベルライターが覚えおきたいカメラの撮影技術とパターン

一昔前までは、トラベルライターの仕事は記事を書くことがメインで、写真撮影はカメラマンの仕事というように、うまく草分けができていました。

しかし、昨今はインターネットの普及により旅行会社が単価の安いウェブ記事をライターに依頼することも多くなってきましたし、そういった案件では記事+写真で納品するのが一般的となってきました。

また、昨今はミラーレスやデジタル一眼、スマホといった性能高く使いやすいカメラが続々と登場し、またスペックも申し分ないため、素人でも簡単操作で綺麗な写真を撮ることができるようになったのも、ライターが写真撮影を任される要因の1つとなっています。

今回はトラベルライターとして覚えておきたい最低限のカメラ技術や撮影パターンをご紹介します。

撮影の際は構図を気にして。日の丸構図から卒業しよう

撮影の際は構図を気にして。日の丸構図から卒業しよう

写真撮影の基礎となる技術は構図を覚えることからはじめます。しかし、構図というのは非常に奥が深いので、トラベルライターは簡単なところからクリアしていくといいでしょう。

例えば写真上のこちらは女性をメインに撮影していますが、被写体が真ん中にある日の丸構図を採用しています。

日の丸構図はカメラ知識のない素人がよくやってしまう撮影方法で、ポートレート撮影としては良いのですが、周りの背景が分からなく、「どこで撮影しているの?」となってしまいがち。自撮りも日の丸構図が多いですよね。

一方でこちらは男性の被写体を右下に置き、背景となる滝を中央部から左側すべてにかけて映しています。

こうすることにより自然の雄大さを表現することができ、さらに男性が滝を見つめていることから、視線は男性から滝へと自然と移っていき、物語性が生まれます。

まずは物体を右下、あるいは左下において、背景を広く撮影するようにしてみてください。ちなみにトラベルライターの仕事柄、ポートレート撮影はほとんどありません。

暗い場所では必ず三脚を使う

暗い場所では必ず三脚を使う

撮影に慣れてくると、三脚は重くてあまり持ち運びたくないと思ってしまいがちです。

しかし、三脚があるとないとでは大きく違います。デジカメやスマホはカメラ内部に手振れ補正機能があるため、多少のブレは自動修正してくれますが、デジタル一眼レフの場合は、この手振れ補正がありません。

手振れ補正は基本的にレンズの方についているのですが、同機能が付いているレンズはLレンズなど高価格帯となります。しかし、三脚があれば手振れの問題はすべて解決されます。

暗がりの場所ではISOを上げてシャッタースピードを大きく落とさなければ明るく撮影することはできませんが、シャッタースピードを落とせばそれだけ手振れが発生します。

三脚があればISOとシャッタースピードを下げても手振れは一切起きませんので、美しい画質の夜景写真などを撮影することができます。

自分のカメラがISOでどのくらいの画質まで耐えられるのか確認する

自分のカメラがISOでどのくらいの画質まで耐えられるのか確認する

ミラーレスやデジタル一眼にはISOを自分で設定することができます。ISOは光の加減を増幅させることができる機能で、曇り空や暗い場所、夜景撮影時に主に必要量まで上げます。

ISOの設定は100、200、400、800、1600、3200、6400……と倍になっていき、設定を高くするほどシャッタースピードを速めることができ、手振れをなくすことができます。しかし、その一方で画質が悪くなり、白くなってしまう欠点もあります。

まず最初に確認してほしいのは、自分のカメラがISOをどのくらいまで上げても画質が衰えないかというもの。カメラの液晶で見る分には差はありませんので、写真をパソコンに落として大きな画面で見てください。

フルサイズではないデジタル一眼(APS-C)の場合は、おそらく6400を境に目に見えて画質が悪くなり、12800以上だとちょっとクライアントに提供はできないかな、というレベルになるかと思います。自身でマニュアル撮影する際は、ISOを3200以下の範囲で撮影するのが良いでしょう。

ウェブサイトに投稿する写真は基本的に「横写真」

ウェブサイトに投稿する写真は基本的に「横写真」

本媒体の場合は縦横両方使う場面がありますが、ウェブサイトに記事を投稿する場合、使う写真は原則「横向き」の写真となります。

縦で写真を撮るのもまた違った雰囲気になるので良いものですが、ウェブサイトで縦写真を投稿すると、マウスでスクロールする時間が多くなってしまい、写真サイズによっては画面一杯に写真が写ってしまうため、見栄えが確実に悪くなります。

特にスマホで撮影する場合は、縦に持って撮影してしまいがちなのでより注意が必要です。もし縦や正方形で撮影してしまった場合は、フリーソフトでリサイズができるので、横写真に修正することができます。また、最近はスマホのアプリでも修正が可能です。

スパは広角レンズが必要

スパは広角レンズが必要

旅行雑誌を手掛ける編集プロダクションに自分を売り込んだ際、編集長から「旅行ライターは広角レンズがないと仕事を回せないよ」と言われたことがあります。

広角レンズは画角を広く撮影することができるため、狭い部屋のマッサージルームや、後ろが壁で下がれないホテルの客室などで絶大な効果を発揮します。

例えば写真上はとあるマッサージルームですが、標準レンズで撮影しており、これ以上後ろは壁があるため下がれません。そこで同じ立ち位置でレンズを標準から広角へ変えてみると、

ご覧のように標準レンズでは映らなかった部分まで広い画角で撮影することができます。

スパやホテルといった部屋は解放感を重要視しているため、標準レンズで撮影した写真はちょっと狭い印象を覚えてしまいます。店舗側はそれを嫌がるので、否が応でも広角レンズが必要となるのです。

料理は単焦点レンズで立体的に撮影を

料理は単焦点レンズで立体的に撮影を

トラベルライターではレストラン取材も多くあるため、料理の写真撮影も必須事項となります。料理の撮影に当たっては、大きく分けて真上から撮影する方法と斜めから近づいて撮影する2タイプがあります。

前者(写真上)は「図鑑写真」などと呼ばれていて、料理をリストで紹介したりする際に使い、後者は料理の特徴やおいしさを伝える際に撮影します。

例えば「アジア名物グルメ特集」といった記事では図鑑写真が有効ですが、レストランや特定グルメの紹介記事を書く場合は、写真上のように近づいて撮影した写真を使うのが一般的です。

また、撮影するポイントとしては、単焦点レンズと呼ばれるズームができないタイプで撮るのがおすすめです。

こちらは自分で被写体まで近づく必要がありますが、標準レンズよりも綺麗に撮影できて、なおかつ背景にボケを作ることも容易にできることから「シンデレラレンズ」とも呼ばれています。

ただし、マクロレンズではないため、あまり近づきすぎるとピントが合わなかったり、シャッターがおりないので注意してください。

また、料理を撮影する場合は、お皿を含めた全体が入るように撮りがちですが、写真上のように上部を意図的に切り取るのも撮影技術の1つです。ただし、撮影する際は全体を撮って、後程パソコンで切り取ることもできます。

カメラレンズは高いので、仕事で必要なレンズのみを揃えよう

カメラレンズは高いので、仕事で必要なレンズのみを揃えよう

カメラのレンズは1つ5万円以上はしますし、広角レンズは10万円前後と高額です。トラベルライターは執筆が本業と言えど、最低限「広角」、「標準」、「単焦点」の3種類は必要です。

これに本体、三脚、予備バッテリーを用意すると、最低でも30万円前後はかかります。カメラやレンズのことをより深く知っていくと、「フルサイズ機が欲しい」、「もっといいレンズがほしい」と欲張ってしまいがちなので、まずは仕事上必要な最低限のカメラと周辺機器を用意するといいでしょう。

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