トラベルライターの目標の1つでもある「旅行ガイドブックの製作」ですが、初めて携わる場合は、ウェブライティングとは違う専門的な流れとなるので、編集者とのやり取りで困ってしまうかもしれません。
そこで、旅行ガイドブックとウェブライティングの記事の書き方や性質の違いをご紹介します。
旅行ガイドブックの製作はトラベルライターの2大目標の1つ
多くのトラベルライターは、「自著を出版すること」と「旅行ガイドブックの製作に携わること」の2つを大きな目標として日々活動しています。今回ご紹介する旅行ガイドブックの製作は、しっかりと自分に求められている仕事内容を把握し、編集者が求める品質で納品することが何よりも大事。
編集者から信頼を得ることができれば、次の仕事に繋がることでしょうし、場合によってはもう1つの目標である自著の出版の道も思わぬ形で開けるかもしれませんよ。
ウェブライティングとの決定的な違いは「記事の優先順位」
しかし、旅行ガイドブックの製作の依頼は年中あるわけではありません。一般的に旅行ガイドブックのデータ更新は2年1度となるので、記事・コンテンツをライターに外注するのもそのくらいのスパンとなります。
そのため、自著で稼ぐことができないうちは、基本的に日々の生活の糧はウェブライティングとなります。
ただし、ウェブライティングと旅行ガイドブックの製作を比較すると、記事に対する「優先順位」に大きな差があることが分かります。これを知らないと、思ったように記事の執筆がはかどらなく、最悪納期に間に合わないで編集者からの信用を失うことにもなりかねません。
ウェブライティングは記事が最重要でレイアウトはほぼ無し
ウェブ上でライティングをする場合、そのほとんどはフォーマットが決まっています。
- タイトル
- 要約文
- 見出し
- 写真
- テキスト
- (小)見出し
- 写真
- テキスト
上記が主な記事構成となります。それ以外に記事と写真の配置が異なる場合も、基本は投稿のフォーマットが決まっていますので、それほど難しくはありませんし、そもそも記事はメモ帳かWordファイルで記述して、依頼主側で投稿するといった例も珍しくありません。
ウェブライティングの場合、依頼主がトラベルライターに求めるのはあくまでも記事のボリュームや新鮮な情報、現地の写真となり、レイアウトをトラベルライターが意識する必要はほぼありません。
旅行ガイドブックでは台割に基づいて記事を制作する
ウェブライティングでは記事が何よりも優先順位が高く、文字数が多くなっても、サイト画面を縦にスクロールするだけなのでレイアウトは崩れませんし、困りません。
一方で旅行ガイドブックは紙という現物を伴う媒体となるので、文字数が膨らんでしまうと、当該ページに収まりきらないですね。
そこで、旅行ガイドブックの製作をする際は、必ず「台割」と呼ばれるものを編集側が作り、その台割に基づいてトラベルライターは記事を作成します。
旅行ガイドブックの製作に必要不可欠の台割の意義
台割は簡単に言えば本の設計図・骨組みのようなものとなります。ウェブサイトを作る際も、最初に大まかなレイアウトを決めるためにワイヤーフレームを作成しますが、本の場合は台割と呼びます。
台割にはページの見出しや写真・文章の配置まで細かく記述されています。台割をどこまで正確に作るかは編集者の性格によって異なりますが、文章の文字数も台割の時点できっちりと決めている場合も少なくありません。
旅行ガイドブックにおける記事作成の大まかな順序
では、旅行ガイドブックの製作のうち、トラベルライターが関与する工程を台割を含めてご紹介します。
1.台割から大まかに記事構成を考える
台割は鉛筆でざっくりと作られることも多いので、その場合は本番で変更の可能性があります。ただし、トラベルライターはそこまで気にする必要はないので、もし台割に大まかでも文字数が記述されていたら、それに従いながら記事構成を検討し、早速書き出してしまいましょう。
2.写真が流し込まれたレイアウトが送られてくる
例えば1ぺージの端にある200文字程度のコラムだけの依頼であれば、上記の台割しか送られてこないかもしれませんが、自分の文章ありきのページであれば、ページに写真が配置され、文章の細かな支持や文字数を記述されたレイアウトが送られてくるでしょう。
3.写真のキャプチャーや説明分、記事を本番執筆
写真の説明分や中身の記事もすべて文字数が決まっていますので、絶対にはみ出してはいけません。
ウェブライティングは文章と写真ありきのページ構成ですが、旅行ガイドブックの場合は、編集者が考えるレイアウトが最優先となり、文章も写真もそのレイアウトの中で工夫して配置されなければなりません。
「文字数は少しオーバーしてしまいますが、この文章は変えたくありません」といった融通の利かないトラベルライターに、仕事は回ってこないことは覚えておきましょう。
4.編集者と校正&再校のやりとりをして記事を完成させる
最初の記事を初稿、修正のやり取りを校正と呼び、2回目の校正を再校、3回目の校正を再々校と呼びます。
旅行ガイドブックの場合はしっかりとした編集者がいるので、基本的にやり取りは再校までで、「ライターさんに再々校はさせない」という編集者がほとんどです。
再校以降の修正は編集部の方で行い、トラベルライターは修正された文章を確認して、OKの返信をするだけで済みます。
文字数はどのくらいが許容範囲内?
ウェブライティングと旅行ガイドブックの記事の書き方における最も大きな違いは、文字数かもしれません。旅行ガイドブックでは文字数は予め決められていて、必ず守らなければなりません。
例えば「タイトルは30文字以内」と記載があれば、30文字を越えてはいけません。だからといって少なすぎるのも編集者の意向に反してしまいますので、25~30文字の間に収めるようにキャッチャーな文章を吟味しましょう。
「30文字前後」との記載があれば、27~33文字程度で収めるようにして、はみ出してもいいのは1割ほどと考えてください。ただし、30文字ぴったりに収めることができれば、それが理想となります。
編集者は記事の中身よりも納期を重視
記事の納期は依頼されてから一週間から10日前後となります。その後も校正のやり取りや記事の流し込み、最終チェック、印刷と工程はたくさん待っているため、記事の納期は絶対に守らなければなりません。
例えばいまの時点で書き上げた記事の品質が80%程度で、さらに数日かけて100%にしたいとライターならば考えるものですが、これはご法度。納期は記事の品質よりも優先されなければなりませんので、80%の状態でも提出する必要があります。
しかし、記事の品質に関してはそれほどの問題はありません。編集部に在籍している編集者は全員文章校正とリライトのプロフェッショナルですので、最初の書き起こしさえトラベルライターが終えていれば、あとはいくらでも体裁を整えることができます。
旅行ガイドブックの製作に携われば一人前。是非最初の仕事を成功させよう
旅行ガイドブックには編集者をはじめ、ライター、カメラマン、デザイナーなど十数人のスタッフが強力して製作に励みますが、大きく見れば、写真と文章、イラストの3つの構成となるので、トラベルライターにかかる責任の比重は自然と重くなります。
ウェブライティングばかりをこなしていると、いざ旅行ガイドブックの依頼が来たときは新鮮すぎて戸惑うこともあります。
しかし、編集者と連携して仕上げた一冊の本を目の当たりにしたときは、何とも言えない喜びを感じることができるはずです。