トラベルライター問わず、仕事をこなす上で複数の目標を持つことは、パフォーマンスとモチベーションを維持する上で重要です。トラベルライターとして活動するのであれば、当然目標の1つとなるのが「自著の出版」や「トラベルガイドブック(旅行本)」への寄稿です。
そこで、今回は旅行ガイドブックの原稿及び制作依頼の内容や、実際依頼を受けてから脱稿までの流れをご紹介します。
旅行ガイドブックの制作依頼はどんな仕事内容?
まず、依頼の発端は旅行ガイドブックを制作する出版社、もしくは出版社から制作の依頼を請け負っている編集プロダクションからの問い合わせとなります。トラベルライターとして制作に携わる場合、大きく分けて2つの仕事に大別することができます。
制作の仕事① スポット情報の収集
旅行ガイドブックをご覧いただくと、1つの地域に対して300程度のスポット情報をが詰め込まれています。このスポット情報とは、
- ホテル
- 飲食店(レストラン&カフェ)
- スパ
- 雑貨店(お土産店・スーパー)
- 博物館や寺院、教会といった観光スポット
などとなります。旅行ガイドブックにはこれらの観光スポットの概要が紹介されており、文末には住所や連絡先、営業時間、支払い方法(カードの可否)などが記載されていますよね。この情報を集めるのもトラベルライターの仕事の1つです。
場合によっては現地の出版社が引き受けてしまうこともあるのですが、出版社から「おたくでこれの情報も引き受けてくれる?」と依頼してくれるケースもあります。
これらのスポット記事の収集は、原則直接足を運んで「掲載許諾書」にサインを貰わなければなりませんし、最新の写真も必要となりますので、なかなか時間がかかります。
しかし、1件3000円だとしたら、300件こなすと90万円となり、かなりの報酬を得ることができるので、ライターとしてはかなりおいしい依頼となります。
制作の仕事② 原稿執筆の仕事
トラベルライターとしてはこちらがメイン業務となります。報酬だけならば上記のスポット情報の収集が高いのですが、トラベルライターという肩書を持つ以上、旅行ガイドブックへの記事の寄稿は欠かせませんよね。
原稿執筆の場合、流れとしては取材をしたのちに執筆することになりますが、自分で好きなように記事を書けばいいわけではなく、編集者からある程度の方向性を指示されますので、それに基づいて書かなければなりません。
編集者とは電話やメールで話す機会はありますし、一緒に現地取材をすることも少なくありませんので、しっかりと次に繋がるような人間関係を築いておいてください。
原稿執筆の仕事~図鑑の作成
旅行ガイドブックで原稿を執筆するにあたって、トラベルライターに依頼される記事は大きく分けて3つほどあるのですが、最初の1つが「図鑑」と呼ばれるページです。
例えば旅行ガイドブックの冒頭にはその国や都市の概要紹介がありますが、その中に名物料理やお土産を紹介するページは必ず存在します。
1ページに十数の料理やお土産品をずらりと並べて、そこに数十文字のキャプションを付けて紹介していくのが図鑑ページと呼ばれるものです。文字数が少ないので、端的に紹介しなければならなく、意外と熟考してしまうかも。
概要の紹介はしっかりと時間をかけ、ボギャブラリー豊かに
旅行ガイドブックの顔となる国情報、都市情報、現地のライフスタイル、観光の要所の説明、現地の楽しみ方の解説などの執筆は、文字量も多いですし、読者が必ず読むパートとなるので、気合を入れて書くようにしましょう。
単に文章を繋げるだけではなく、感性を豊かに、多様な表現、言い回し、比喩などを含めてオリジナルの文章を書くように心がけてください。
コラムはユニークな表現で。本のテイストを意識して
本の章末やページの端によく見かける「コラム」もトラベルライターの執筆範囲となります。
現地のちょっとしたお役立ち情報や雑学などを紹介するページとなり、文字の分量は200~400文字が一般的。特にかしこまった文体ではなく、どちらというと愛嬌のある文章が受けます。
ただし国語表現や文法は意識しなければならない他、旅行ガイドブックの全体のテイストとかけ離れた文章も修正されてしまいますのでご注意ください。
依頼されてから脱稿までの大まかな流れ
出版社や編集プロダクションから旅行ガイドブック制作の依頼が来たあとの大まかな流れは下記となります。
- メールでスケジュールの打ち合わせ
- 自分が執筆する範囲内の取材(このときに編集者やカメラマン一向と直接会う場合あり)
- 原稿の執筆
- 校正
- 確認
- 脱稿
- 製本されたガイドブックが自宅に送られてくる
- 入金
編集者と取材する際の流れ
ある程度中堅以上の出版社であれば、社員にカメラマンがいるのですが、小さな出版社や編集プロダクションの場合はカメラマンが在籍していなく、案件毎にフリーのカメラマンに依頼することになります。
当然経費削減の対象となるので、トラベルライターが写真撮影もできれば、それに越したことはありません。そのため、日ごろからカメラの腕を磨いておくと、原稿料と撮影取材費の両方を受け取ることができて、報酬は倍以上となります。
取材する大まかな流れとしては、スケジュールが決まったのち、カメラマンや通訳、コーディネーターの人たちと落ち合い、編集者主導の元、取材先に向かいます。
もしトラベルライターが海外在住の場合は、「コーディネートもしておいて」と言われる可能性も多いにあります。コーディネートの報酬は大きく差がありますが、相場としては1日5000円~2万円程度となります。
現地取材&コーディネートの流れ
コーディネートの仕事内容は、①取材期間中のスケジュールを組む、②取材先へのアポイントメント、の2つがメインとなります。
旅行ガイドブックの場合は役所や公安などへの撮影許可は必要ありませんので、基本はお店に直接連絡して取材の許可とアポイントを取るだけなので、それほど難しくありません。
ただし、海外ではアポをとっていても、現地にいったら担当者が不在であったり、アポをすっぽかされてしまう、なんてことも普通にありますので、その時に備えて予備のお店もピックアップしておくといいでしょう。
海外旅行のガイドブックを出版している編集部であれば、そういったトラブルも慣れているはずなので、厳しく叱れることはないはずです。
ただし、日本から来る編集者たちは帰国日も決まっているので、滞在中に撮影と取材自体は終わらせなければなりません。
取材先の担当者が不在の場合は、スタッフに撮影許可を貰っておいて、事後報告で担当者に報告したり、取材時は撮影だけで、インタビューは編集者たちが帰国してから独自で行うといった工夫をすることもできます。
執筆から脱稿までのポイント
1つの都市に対して3~6日ほどの取材期間を終えたあとは、編集者たちが帰国し、その数日後にどのような原稿を書いてほしいかの指示が回ってきます。
また、一緒に取材をしている最中にも編集者がどのようなテイストのガイドブックに仕上げたいのかを説明する機会があるはずですので、よく聞いておきましょう。
初回の原稿の執筆は1週間程度で終わらせて、その後赤文字による修正、いわゆる校正が入ります。旅行ガイドブックの場合はそれほど複雑な修正は要求されないので、校正は一度くらいで、あとは誤字脱字チェックのみでメールで済むことが普通です。
執筆から脱稿まではおよそ1か月程度と、おそらく想像以上に脱稿まではスピード感があります。トラベルライターにとって記事をしっかりと書くことはもちろんですが、それ以上に要求されるのが執筆するスピードであることを実感することでしょう。
トラベルライターとしてやりがいを実感。製本された本を読む瞬間
旅行をして文章を書き、それで生活をするというと、一昔前まではちょっと考えられなかったライフスタイルであり、ビジネスモデルです。
しかし、自分の文章が載った旅行ガイドブックが出版されたときは、ついつい他人に自慢したくなるほどの嬉しさがこみあげてくるはずです。
是非その時を楽しみに、トラベルライターを続けてみてください。きっと出版社からの問い合わせのメールもそう遠くない日にやってくることでしょう。