フィリピン版・国別運転道路事情

フィリピンと言えば車社会の国。道路事情は、響き渡るクラクションと渋滞のひどさに驚く人も多いんです。交通マナーの悪さは、もはやフィリピン名物!

「車は右側通行」といった点もありますが、他にも独自の交通マナーなど、かなり日本と違ってきます。市民の足となる交通機関や、驚く交通ルールについてご紹介します。

■フィリピンの公共交通機関

まずフィリピンで主に都市部で使われている公共交通機関をご紹介します。フィリピンで電車は首都マニラでしか通っておらず、また路線も非常に限られています。

そのため、市民の足は主に車となっており、その事によって渋滞が引き起っているのが現状。

▷電車

日本では国民の足として当たり前に存在する電車ですが、メトロマニラには、LRT・MRT・PNRという3種類の電車・路線しかありません。

渋滞が関係ないという事もあり、通勤・帰宅ラッシュとなる朝8時~10時頃と、夕方16時~20時頃東京と同じくらいの満員電車となります。

何もアナウンスなしにドアが閉まったり、かなりギュウギュウなのでスリの危険性もある為、外国人は特に乗車時は注意が必要です。

▷タクシー

東南アジアのタクシー料金は安い事で有名ですが、フィリピンでも初乗りは40ペソ(約84円)と日本と比べると激安!

道路を走っている白タクシーは外国人はぼったくられる可能性がある事と英語があまり通じない事もある為、外国人やローカルでも中流以上は配車アプリの「Grab」(https://www.grab.com/ph/) を利用する人が多数。

▷ジプニー

庶民の足としてフィリピン人が最も利用する交通手段が、どこでも止まるジプニー。米国占領時代に使い古されたジープを改良し、ペイントされたカラフルな車体がフィリピンの至る所で走っています。

“乗り合いバス“といった感覚の乗り物で、ジプニーの大きさにもよりますが、助手席2人+後ろ席18人=20人が基本の乗車人数。

乗りたい場所で手を挙げると、基本どこでも止まってくれます。運賃はリレー形式で「Bayad po (運賃です)」とタガログ語で言い、隣の人伝いに運転手に渡します。

降りたいときは「Para po (降ります) 」と運転手さんに伝える・もしくは叫べば、大体どこでも降ろしてくれます。

それぞれのジプニーは走る路線が決まっており、車体の横や助手席に”どの路線を走っているか”という事が書かれています。

その路線とフロントガラスに掲げられた終点を示すカードを確認して乗り込む為、最初は慣れている人と一緒じゃないと難しいかもしれません。初乗り料金は、地域・距離によって異なりますが、9ペソ (約19円)程。

どこでも停車してくれるのは便利なのですが、それにより後ろで渋滞が発生してしまうのが問題点でもあります。また、夜間は少々危ない事もある為、外国人女性の一人乗りはおすすめしません。

▷バイクタクシー

渋滞の多いメトロマニラ・セブシティでは脇道を通り抜けて渋滞に構わず、早く目的地に辿り着けるバイクタクシーが人気。

セブではタクシーを捕まえる感覚でバイクタクシーを捕まえますが、マニラでは前述の「Grab」の様にな配車アプリを使用します。

1番人気は「Angkas」(https://angkas.com/)。初乗り2kmで50ペソ (約105円)、セブの場合は金額は特に決まっていないので交渉次第、目安は徒歩で15~20分ぐらいの距離であれば20~40ペソ(約41~82円)です。

バス

フィリピンのバスというと、日本での高速バスのイメージで、郊外への小旅行にも便利です。

市内の大きなバスターミナルから出ていますが、事前に予約をするのではなく、バスターミナルに着いたら直接希望の目的地行きのバスに乗り込みます。

そして、目的地に向かっている最中にスタッフがバスの中を巡回し、運賃を回収していく仕組みとなっています。金額は20ペソ(約41円)からと安く、目的地により異なります。

満席にならないと出発しないタイプと、予定時刻になると出発するタイプがあります。

またセブシティ・メトロマニラ内では、市内バスも走っています。市内バスは日本のSuicaやPasmoの様なチャージ式のカードで支払い、内装も綺麗なので外国人にも乗りやすくて便利です。

トライシクル

最高で6人まで乗ることができます。近距離の移動に最適な、バイクの横に人が乗れる荷台をつけた乗り物がトライシクル。

有名なタイのトゥクトゥクの様なものです。ジプニーなどが走っていない大通り以外の道での短距離の移動に利用されています。

荷台に2人+運転手のバイク後ろに1人が基本ですが、荷台に更にもう1人、バイクの後ろにも更にもう1人乗っている光景も見かけます‥。地域によって価格は異なり、交渉制で100ペソ (約210円)~が多いです。

UV Express

UV Expressとはマニラで走っている10~14人乗りの乗り合いバンのこと。TOYOTA の「Tamaraw FX」という車種が多く使われていたことから、ローカルの人はUVのことを「FX」とも呼びます。

メトロマニラ内で200路線以上あると言われ、多くのエリアでジプニーと並んで重要な通勤手段になっています。

ジプニーと同じく乗り合いですが、エアコン付で窓が開いていないので、ジプニーの2大弱点「排気ガス」と「暑さ」を避けられます。そういう意味では、庶民にとっては、ジプニーのアップグレード版というイメージ。

ジプニーよりも長距離なことが多い事から乗り継ぎが少なく済み、行き先はフロントガラスに掲げられているカードで分かります。

初乗り運賃は15ペソ(約32円)で、乗り込んだ地点から目的地までの距離によって料金が変わります。

以上の様に、車・バイクばかりの国民の足。けれど現在ドゥテルテ政権が大型インフラ整備計画「Build Build Build(建てて・建てて・建てまくれ!)」を進めており、マニラ首都圏で2つの地下鉄路線を建設中となっています。

2025年の全線開通を計画しており、設計・建設には清水建設、フジタ、竹中土木といった日本の大手ゼネコンも関わっています。

また、乗車料金については首都マニラよりもセブの方が比較的安く設定されています。

■フィリピンの独自の交通ルールとは?

公共交通機関に加え、フィリピンの交通ルールは日本とはだいぶ違ってきます。

過去にスペインの植民地だった事もあり、フィリピン人は基本的にラテン系で明るく、穏やかな性格の方が多いです。

しかし、ひとたび運転となるとその穏やかさは消えてしまうのか、街中ではクラクションが響き渡り、交通ルールなんてあってないようなもの…。そのマナーは日本の常識とはかけ離れています。

▶車を入れてくれない

もし車線変更をしようものなら、絶対に入れさせまいとギリギリまで車間距離を詰めて入れてもらえません。遠慮してたら一生車線変更はできないのです。

▶車線が増える

2車線道路が3車線になったり、3車線が5車線になったり…渋滞が始まると瞬時にみんなこぞって路肩にはみ出すので、車線が増えるのは日常茶飯事。片側3車線の高速道路は渋滞で4~5車線道路になっています。

合流地点では突っ込んだもの勝ち

日本だと合流地点では左右一台ずつ行きますよね。でも、フィリピンでは”我が先に!”と行かなきゃ入れません。鼻先突っ込んだ者勝ちです。

お礼のサインはない

もし合流地点や車線変更時に譲ったとしても、その車に対してありがとうの意味で点滅させる”サンキューハザード”はありません。あれは日本人ならではの礼儀正しさからくるものなのかもしれませんね。

すぐクラクションを鳴らす

渋滞時はクラクションが鳴り響いていますが、いざフィリピン人が運転する車に乗ってみると、もはや癖の様にクラクションを鳴らしている事が分かります。少しでも前の車がブレーキを踏んだら、信号が青に鳴った途端に進まなかったら…日本人の感覚では「何故ここで⁈」という所で鳴らすのです。

到着時間は見えない

特に、都市部であるメトロマニラやセブシティでは、例えば日本だと15分で行ける距離に1時間以上掛かるなんてことはしばしば起こります。特に、電車と同じく通勤ラッシュとなる朝8時~10時頃と、夕方16時~20時頃は凄まじい渋滞が巻き起こり、一体いつ目的地に到着するのか見えません。歩ける距離であれば、確実に歩きの方が早いです。週末である金曜日と、月2回の給料日にあたる15日や月末がかぶった時は「Payday・Friday」と呼ばれ、帰宅ラッシュ時は更にもの凄い渋滞となります。

車のカラーコーディングがある

カラーコーディングとは、政府系機関が制定している、メトロ・マニラの中で適用されている交通規則の事。

車のナンバープレートの末尾の番号から、決められた曜日の7時~20時はメトロ・マニラの道路を走ってはいけない…という制度があるのです。

メトロ・マニラは渋滞がとてもひどく、それを緩和させるためのもの。違反した場合は1,500~4,000ペソ(約3,150~8,400円) という決して小さくない違反金額が掛かるため、注意が必要なのです。

▶いきなり運転させられる教習所のシステム

この様に日本とは異なる交通マナーの多いフィリピンですが、そもそも教習所のシステム自体が日本と異なります。

フィリピンでも自動車教習場はもちろん存在しますが、申し込めばいきなり「助手席に免許取得者が同行ならOK」の仮免許が発行され、最初から公道で運転させられます。

そう、命がけの講習です。そして5日間の実習を終えたら本試験。身体検査と筆記テスト・実技テストで合否が決定します。

実技は自分の車を持って会場へ行き、車がマニュアルならマニュアルの免許が、オートマならオートマの免許がもらえるシステム。フィリピンらしいとも言える免許取得方法から、交通事情がこうなっているのかもしれません…。

渋滞が激しく、クラクションの響き渡る時間も多いですが、その道が空いていて平和な時というのが日曜日。

フィリピン人はキリスト教徒が非常に多く、日曜日は教会に行って家族で過ごす‥というパターンの方々が多く、他の曜日に比べると渋滞は緩和されています。平日の場合は通勤ラッシュを避けた時間帯はそこまで混んでいません。


また、便利な渋滞情報を教えてくれるアプリ「WAZE」(https://www.waze.com/ja/apps) も必須。リアルタイムな渋滞情報を取得でき、最速ルートを案内してくれます。

驚くべき事は、この様な交通事情を抱えながらも、フィリピンの事故件数は人口10万人あたりに対して7.2件、日本は651.6件と、日本の方がフィリピンの約100倍も事故が多いのです‥!

信号や規則に頼らず、臨機応変な運転が上手いからかもしれません。けれど日本人にはこういった交通事情を理解して運転する事は難しいため、多くの外国人はドライバーを雇って自分では運転しません。

また、最近日本や欧米などで人気のシェアサイクル(レンタサイクル)もフィリピンにはまだありません。道路があまり整備されていないこともあり、そもそも自転車に乗っている人は非常に少ないです。

旅行者の方におすすめの移動方法1番は、ぼったくりの心配がなく、確実に目的地にたどり着ける配車アプリの「Grab」を使用する事。

もし長期で滞在の場合や郊外に行く場合は、ドライバー付きのレンタカーを借りてみてもいいかもしれません。人件費が安いので格安で雇うことも可能です。 (日本語対応 リョーアキレンタカー:https://ryoaki-rentacar.com/

初めは驚き、慣れるまでは難しい道路事情なのですが、一旦慣れてしまうと日常へと変わっていくもの。日本への帰国時に、道を譲ってくれる車を目にした時は「なんて優しい車なの‥!」と感動してしまうのです。

早く地下鉄が完成し、より便利になってくれる日が待ち遠しいこの頃です。

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