トラベルライターを目指そうと考えると、「旅してお金を稼げる」、「スーツを着る人生から卒業できる」、「自分の書いた記事が本になる」など、ついつい陽の当たる魅力的な部分にスポットが当てられがちです。

しかし、本当にトラベルライターになることを考えているならば、陽の当たらない裏方の部分も知っておくべきではありませんか。上司もいなければ何をするにも、どこへ行くにも自由なトラベルライターですが、決して楽なことばかりではありません。

そこで、ここではトラベルライターになってみなければ分からない「意外と大変なこと」をご紹介します。

取材は過酷?汗を流しながらの写真撮影は大変

取材は過酷?汗を流しながらの写真撮影は大変

トラベルライターの取材対象といえば自然観光地や博物館、寺院などの観光スポット、レストランやスパなどが主となります。お客がいないアイドルタイムに撮影する際は冷房もなく喚起の悪い蒸し暑い中で撮影に臨むことも普通にあります。

また、いずれもカメラで撮影するときは、角度や画角を変えて複数のレンズで撮影しますし、場合によっては三脚も必要となります。カメラ機材だけでも数キロの重量となりますし、それ以外にもパソコンや備品も持ち運ばなければならないため、遠方の取材は体力が必要です。

山岳地帯や高原地帯の場合は、ひたすら傾斜の急な坂道を上ることになります。女性はもちろん、男性にとっても一眼レフや三脚、パソコンを背負ってのトレッキングは大変です。

残業も多い。夜の取材も決して少なくない

残業も多い。夜の取材も決して少なくない

レストランに取材を申し込んだら、「夜の方が綺麗だから、21時くらいに来てくれ」と言われることもざらですし、21時に行ったところ、「店長休みだから明日また来てくれ」と取材ができないこともあります。

夜景鑑賞スポットやナイトショーにナイトマーケットなど、夜のエンターテイメントも観光地にはたくさんあります。自由業は定時がありませんので残業という言葉は似合わないかもしれませんが、自分がスケジュールを決めるばかりではないことは覚えておくといいでしょう。

場合によってはその場で数時間待ちぼうけを食うこともありますので、パソコンを持参して仕事をしながら待つのも時間の使い方として大切です。

粗利は100%。でも意外と経費がかかる

粗利は100%。でも意外と経費がかかる

記事の報酬は無論のこと100%粗利ですが、取材にかかる経費は意外と馬鹿になりません。自分の知識で書けるものや、ストックの写真や商用写真で賄えるものであればいいのですが、ガイドブックや大手の旅行サイトの記事の場合は、新鮮な情報が売りとなるため、その都度取材に足を運ぶ必要があります。

一部を除き、報酬には取材にかかる経費が含まれているため、別途申請できないことがほとんどなのは、トラベルライターとしては大変なこと。そのため、取材で遠方の観光地に行く場合は、一泊5000円以下の安宿を手配するのが普通。特別ホテル側から招待されない限り、4つ星や5つ星の高級ホテルに泊まることはかないません。

ノートパソコンは買い替え頻度が高い

高価なノートパソコンですが、残念ながら買い替えの頻度は普通の人よりも高いです。外出する際は必ず持ち歩きますし、リュックに収納していても歩く度に振動や負荷がかかります。

何かにぶつかった衝撃で壊れることもありますし、海辺の取材時に潮風に当たって動作しなくなることも経験するかもしれません。カフェでお手洗いに立ったのを見計らって盗難に遭うことも……。

トラベルライターにとってノートパソコンは大切な商売道具ですが、エンジニアやデザイナーのような高スペックなパソコンは必要ありません。10万円以内のパソコンを使いまわすようにするとともに、失って困るようなデータはすべてクラウドと外部HDDに保存するようにしましょう。

アジア南米は移動も大変。長距離バスや寝台列車の過酷旅となることも

アジア南米は移動も大変。長距離バスや寝台列車の過酷旅となることも

日本人旅行者の多い旅先として、タイやベトナム、マレーシアにインドネシアといった東南アジアが挙げられます。また、ブラジル、メキシコ、ペルーなども魅力的な観光地があるので、若い方に支持されています。

トラベルライターになると、これらの都市を取材で回るのことになりますが、発展途上国は日本と異なりインフラが十分に整備されていないため、地方へ行く場合は困難を強いられることもあります。

飛行機で行くことができても、取材目的の場合は経費を節約するために陸路で移動することもあるでしょう。その場合のとるべき手段として長距離バスと寝台列車がありますが、いずれも6時間~12時間の長旅となることが大半なので、長時間のバスに慣れていない日本人にとってはかなり過酷な旅となります。

顧客や仕事データの管理にもお金と時間と手間がかかる

トラベルライターになると、常時5~10社程度の顧客から仕事を請け負うことになります。過去の取引情報(顧客情報・記事・写真)も合わせると、管理しなければならないデータは膨大となります。

パソコンには有料のセキュリティソフトを入れなければなりませんし、クラウドにデータを保存できるよう、Drop BoxやGoogle Driveの有料プランにも申し込みます。

さらにバックアップ用に外付けのHDDやUSBも用意する必要がありますし、場合によってはPhotoshopや動画編集ソフトの導入も検討する必要があります。

観光地を旅行しながら取材をして、カフェでコーヒーを飲みながら筆をしたためる。そんな毎日を想像しがちですが、その一方で顧客情報の整理や写真ストックの確認など、旅行ライターならではの雑務も多くこなさなければなりません。

休日返上。雑務は週末に整理することも

平日は顧客から依頼された記事を書くことに集中して、データ整理やお店取材といったそれだけでは報酬が伴わない作業に関しては、休日を返上して仕事をするトラベルライターも多いです。

自由業として自宅作業が多い旅行ライターにとっては、仕事とプライベートの境界線が薄いため、ついつい仕事を優先してしまう傾向にあるようです。

「仕事に対するストレスはないけど、勤務時間はサラリーマンの頃よりも多くなってる気がする」、「仕事をしていないと不安だから、つい休日でもパソコンを立ち上げてしまう」といった声も多くあります。

納期が重なることがよくある

納期が重なることがよくある

トラベルライターとして絶対に死守しなければならないルールが「納期」となります。出版社にとって納期の遅れはまずありえないため、トラベルライターが納期を延ばすことはできません。

一般的にガイドブックは2~4か月程度の期間をかけて集中的に製作します。出版社、編集プロダクション、デザイン会社、印刷会社などが絡み合ってスケジュールを決めるため、どんな理由があろうとも納期は必ず守る必要があります。

また、ガイドブックは春発刊と秋発刊が多いため、依頼時期や納期が重なるのが常。納期が近くなれば徹夜で執筆することもあるでしょう。しっかりとスケジューリングをして、納期から逆算して余裕を持って取材・執筆に向かう必要があります。

大変だけどやりがいが必ず上回る。それがトラベルライターという職業

トラベルライターは決して楽な仕事ではありません。しかし、旅好きの人にとっては、どんなに辛いことがあっても、必ずやりがいが上回ることは言うまでもありません。日本では旅行ライターという需要はまだまだ生まれたばかり。本業として取り組むことができれば、成果は必ずやりがいと共にやってきます。

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