ライターの大きな目標の1つである本の出版。しかし、普通にWEB記事をこなしているだけでは、いつまでも出版依頼はきません。
フリーで活動するライターの中には、出版社や編集プロダクションに何もツテやコネがない人も多くいます。そこで、ここでは自分の本の出版を希望するにあたり、出版依頼が来るまでに行うべき「キャリアの積み方と仕事のこなし方」を解説します。
出版は必ず「企画出版」を目指すこと
出版と言えばライターが目標とする大きな通過点であり、ゴールの1種でもあります。昨今はkindleのような電子書籍で誰もが気軽に自著を出すことができるようになりましたが、やはりライターになったからには紙面媒体は憧れです。
そのライターが目指す紙面媒体の出版物には、大きく分けて「企画出版」と「協同出版」があります。協同出版は自費出版となり、数十万円~100万円ほど自己負担しなければならないのでおすすめはできません。
出版社は書店と棚契約を結んでいるため、自費出版であっても必ず棚に陳列してもらうことは可能ですが、結局元がとれるほど売れることはまずありませんので、一般的に自己負担ゼロ円の企画出版を狙うのがライターのセオリーとなります。
自分の本を出版する前に紙面媒体の依頼をこなす
しかし、どんなにWEBライティングをこなし、業界の大手企業から案件を獲得していたとしても、出版社や編集プロダクションと何かしらのツテがないうちは、企画出版の依頼がくることはまずありません。
そのため、ライターが自分の本を出版したい場合、まずは紙面媒体の依頼を積極的に受注する必要があります。
出版社・編集プロダクションに直接売り込みをかける
紙面媒体の出版を事業としているのは、主に「出版社」と「編集プロダクション」となります。自分が本を出したい業界の出版物の巻末には、出版社と編集プロダクションの記載があるので、ネットで連絡先を調べて、メールで問い合わせをするのがいいでしょう。
昔は直接事務所まで足を運んで飛び込みで売り込みをかけるのも普通でしたが、昨今は履歴書や企画書もすべてEメールで送付する形で構いません。
ちなみに履歴書をただ送りつけるよりも、自分のアイデアや自分が書けることなどを詰めこんだ企画書も併せて送付するのが返信率を高めるポイントとなります。紙面媒体は斜陽産業とも呼ばれるようになり、どこの出版社も新しいネタを探しあぐねています。よほど多忙な時期でもない限り、飛び込みであっても企画書は歓迎してくれるはずです。
文庫・新書サイズの「寄稿」は依頼が発生しやすい
ライターとして活動していると、しばしば「寄稿」の依頼を受注することがあります。有名な作家の自著の巻末コラムに寄稿をしたり、ビジネス書へ情報提供やコンテンツの一部の執筆をするのが主な依頼内容となります。執筆するボリューム自体は原稿用紙換算で数枚と少ないですが、自分の文章が活字出版されるだけでも最初は喜ばしいことのはずです。
ガイドブックのコラム制作
旅行ライターであれば、トラベルガイドブックの制作に携わるのも自著出版への重要な過程の1つです。旅行ライターが携わることができるガイドブックのコンテンツは、主に「現地コラム」と「商品概要」です。
ガイドブックには多かれ少なかれ現地情報をコラム調で紹介したコンテンツがあります。1つのコラムは200~400文字程度と少ないですが、文章はある程度ラフでもかまいませんし、校正も1度で済むため本業の邪魔にもなりません。
商品概要はご当地名物やお土産等を紹介する要約文です。1つの商品を30~50文字前後で紹介しなければなりませんが、執筆する商品が数十となる場合は報酬もある程度期待できます。
ライターが自分の本を出版するためのキャリアの積み方
ライターが自分の本を出版するためには、上記のように大小問わず紙面媒体の仕事を日々受注できる環境づくりが大切です。
毎月決まった記事数とボリュームの依頼があるWEB記事と異なり、紙面媒体は不定期の依頼ですし、出版社と関係を築いていないうちに連載を持たせてくれることは稀です。
単発依頼の報酬は1万5000円~7万円前後が平均となりますが、取材経費込みとなりますし、2~3度の校正が入るので、時間報酬で換算するとそれほど割のいい額ではありません。
しかし、このような少額案件を引き受けていると、1年後2年後には連載を任せられたり、見開きで重要なテキストを依頼されるようになります。
また、編集者は職場を転々としたり、編集プロダクションを起業する人も多いため、「あなたと仕事をしたい」と思えるような誠実かつ真摯な対応をとっていれば、自ずとコンスタントに仕事が回ってくるものです。
ライターが自分の本を出版するためにできる日々の仕事のこなし方
WEB記事を本業としているライターが初めて紙面媒体の依頼を受けると、まず面食らうのが自分の執筆した記事に携わる人たちの多さです。編集者を中心に、校正者・校閲者が絡み、法関連が関わる場合は弁護士が関与することもあります。
そのため、編集者にとってもライター選びは重要な業務となり、紙面媒体への実績が何もないライターには頼みづらいのが本音です。
まだ一度もやり取りをしたことがない出版社や編集プロダクションから依頼を受けた場合、まずは自分の文章サンプルを提出することになりますが、このときに「独特の文章なので今回の記事にはマッチしないと考えました」とやんわりと断られる場合があります(どの編集者も似たような断り方をします)。これは自分の文章力が基準に達していなかったことが原因となるので、日ごろのWEB記事の作成にあたっても、最低限の国語的表現力と文法は見直すようにするといいでしょう。
自分の本を出版するために準備をしておくこと
出版社や編集プロダクションに自分を売り込んだり、執筆の依頼がくるのを待っている間は下記の準備をしておくのがおすすめです。
ポートフォリオを常に最新にする
フリーライターは自身のポートフォリオが職務経歴書代わりとなります。ポートフォリオにはこれまでの実績を記載しますが、ただ単にこれまで請け負った記事の概要を記載するのではなく、出版社が好みそうな業界の実績を整理して箇条書きするといいでしょう。
例えば、WEB記事を請け負うために提出するポートフォリオと、出版社や編集プロダクションに提出するポートフォリオは別に作成するのもおすすめです。
企画・アイデアは常に書き留めておく
上記でも触れましたが、編集者の多くは企画の持ち込み自体は歓迎してくれます。仮に企画が通らなくとも、自分の売り込みに成功すれば、「このライターはセンスのいいアイデアを提供してくれるな」と感じて、一度付き合い程度に小さな依頼をくれるかもしれません。そのため、自分で書けるアイデアは忘れないように、常にメモしておくのがおすすめです。
自分の本を出版したいライターは業界を選ぶのが近道
今回はフリーライターが自分の本を出版したい場合にやるべきことをご紹介しました。しかし、金融や保険・法律・建築など、業界によっては有資格者や専門家でなければ自著が難しい業種もあります。
そのため、フリーライターであっても本の出版が比較的容易な業界に専門を変更するのも場合によってはおすすめです。自分がライターとしてどのようなキャリアを進み、どのように生計を立てるのが理想なのかを今一度見直してみてはいかがでしょうか。