旅行ライターの仕事の“肝”となる『取材』。しかし、まだ慣れないうちは取材に対してどんな準備をすればいいのか、また円滑な取材の流れというのも分かりませんね。
そこで、今回は取材の準備や当日の方法、ちょっとした技術などを詳しくご紹介します。なかなかネットには載っていない情報なので、旅行ライターは要チェックです。
旅行ライターの取材は大きく分けて2つある
旅行ライターの取材は、大きく分けて「撮影取材」と「インタビュー取材」の2つがあります。自分がどちらを優先して仕事を引き受けるかで割合は変わってきますが、最初の内は撮影取材がメインとなります。ここでは両者の準備や当日の雰囲気、ギャラなどもすべてご紹介します。
旅行ライターで最も多い撮影取材の概要
旅行ライターで最も多い撮影取材ですが、これはスポット取材と言うときもあります。
ツアーに参加して観光地を回ったり、旅行者が行くようなレストラン、カフェ、お土産店、スパ、博物館、美術館などあらゆる観光施設を撮影取材します。旅行ガイドブックを開くと、数百のお店や観光地が紹介されていますが、これらの施設の撮影及び取材許可を撮り、取材に臨みます。
撮影取材の準備
撮影取材をする場合は、前もってスケジュールを組み立てることが必要となります。単発の取材であればまだしも、ガイドブックの制作に関する撮影取材の場合は、1日に数件回らないと納期に間に合いませんので、前もって電話やメールで取材の申し込みをします。
準備するものは掲載予定のガイドブックのサンプルがまず第一。もしウェブサイト上の掲載であれば、パソコンの画面を見せれば問題ありません。その他には質問用紙にメモ帳やパソコン。撮影機材はカメラ、レンズ、予備バッテリー、三脚など。
撮影の方法や技術。カメラの基礎知識は学習しておこう
撮影取材は最初にアポを取った担当者と会います。その後取材許諾書にサインを貰い、商品や料理、お店の内外観の撮影をします。お土産や料理を撮影する際は、被写体の背景をぼかすようにF値を低めにするのがポイント。
また、それ以外ではズームレンズでズームで撮影しても、背景がぼけてくれます。もう少し本格的に臨みたいのであれば、レフ版と白い箱を持っていくのがおすすめ。いずれも撮影機材として通販で2千円前後で購入することができます。
レフ版は光の反射を操り、白い箱はお土産や料理紹介のページで被写体だけをフォトショップで切り抜いて並べるような場合に使います。フォトショップで綺麗に切り抜くことができるのが特徴です。
撮影取材はギャラ事情と、取材の注意点
撮影取材はガイドブックとウェブサイトの掲載のどちらかでギャラ事情が大きく変わります。ガイドブックや出版社からの依頼の場合、仮に1件3000円だとしたら、ウェブサイトのギャラは1500円程度といったところ。
また、注意してほしいのは、取材先に断られる場合です。例えば写真なしでも掲載許可がとれればいいのか、それとも別のお店に差し替えるのかは、前もってクライアントに聞いておくのがいいでしょう。
基本的に差し替える場合は、似たような性質のお店を自分で探すことになります。また、クライアントによっては「人の顔が映っていはいけない」というルールがあるところも普通です。
その場合はフォトショップでモザイクをかけて対応できますが、町の風景写真など人通りが多い写真はモザイクをかけるのも大変な作業となります。
旅行ライターの実力が問われるインタビュー取材の概要
インタビュー取材は、主に旅行サイトやビジネス系の出版社から依頼が来ます。旅行サイトの場合は、ホテルの支配人や日本人ゲストリレーションズ、旅行会社、お店のオーナーなどがインタビュー対象。
ビジネス系では海外現地で働く日本人の業務内容や生活に焦点を当てたインタビュー取材となります。取材の頻度はそれほど多くはありませんが、既存の取引先からお願いされた場合は、自分の腕を買われての依頼だということを認識して、入念に準備をして臨むようにしましょう。
インタビュー取材の準備
インタビュー取材は準備が出来栄えの8割を決めると言われてます。これは営業の商談でも同じですね。準備は主に質問表の作成です。コツは箇条書きにしたチェックリストと、会話形式のスクリプトを作ること。
箇条書きは必ず質問しなければならないことを書きだし、スクリプトは会話の流れを自分なりに作るために作成します。また、会話のやりとりを録音するレコーダーもあると安心します。
会話を録音するときは、事前に相手に許可をとることも忘れないでください。また、最近はビジネスサイトを中心に、サイトの記事中に動画を埋め込む案件もあります。
その場合はカメラでインタビューの模様を撮影しなければなりませんので、撮影機材も必要です。ちなみに動画撮影はiPhoneのようなハイスペックのスマホでも問題ありません。
取材当日のインタビューの技術
当日は取材の前に施設の内部をしっかりと見ておきましょう。ホテルであればグランドフロアや入居しているお店の質、客層やスタッフの身なりなど。会社であれば、事前に会社ホームページで事業を確認し、話に出てきそうな専門用語もなるべく押さえておくようにしてください。
インタビューは基本的に「相手にどれだけ気持ちよく話をさせるか」です。特別な技術は必要ありませんが、質問がぶつ切りにならないように、話に流れを作ってあげることが非常に重要となります。
インタビュー取材のギャラは高いが、実は割に合わないことも
インタビュー取材のギャラは3万~8万円ほどが相場となり、10万円を超える案件は滅多にない印象です。ただし、アポが取りにくい大手や話題の企業の社長といった案件の場合は、15~20万円ほどにギャラはアップすることもあります。
ただし、旅行ライターとして駆け出しのうちにくる案件は3万円を切ることも普通にあります。撮影前の準備に当日の撮影は半日程度要し、その後記事の作成と考えると最低でも3日は時間を必要とします。
ベテランの旅行ライターとなると日給で2万円以上稼ぐので、インタビュー取材で準備から納品までに丸3日かかるとしたら、最低でも6万円はギャラとしてもらわないと割に合わなくなります。
旅行ライターにとって、最も案件が多く、大変なのが「ホテル取材」
今回は撮影取材とインタビュー取材の2つに分けてご紹介しましたが、旅行ライターに最も多い取材先は「ホテル」となります。旅行ライターが取材するホテルというのは、往々にして4つ星から5つ星の高級ホテルが多く、1人くらいは日本マーケティング担当の日本人が在籍しているものです。
そのため、英語力などは特に必要ありませんが、高級ホテルの支配人やマーケティング担当者は、世界中から取材を常日頃受けているので、こちらが準備不足の場合、「少しくらいはうちのホテルのこと調べておいてよ」、「そんな程度の情報はホームページを見てくれれば分かるよ」と足蹴にされることもあります。叱咤を受けないように、しっかりと準備をして臨んでください。
取材は旅行ライターにとって楽しみの1つ。積極的に依頼を引き受けよう
取材をしていないと、本当に1日中カフェや自宅でパソコンと睨めっこする日が数日、数週間と続きます。精神的にも疲弊してくるので、外に出られる取材案件は気分転換としても引き受けておきたいところです。
また、取材経費で観光できたり、取材先のレストランで食事を無料提供してもらうこともありますし、スパでは無料でマッサージを受けられることもざらにあります。ホテルでは時間帯によってはビュッフェに招待してくれることもあれば、格安で宿泊することも可能です。是非旅行ライターとしての醍醐味を存分に満喫してください。