トラベルライターとして仕事をする場合は、出版社や旅行サイトとの法律やルールに関するやり取りも発生します。
また、海外現地の法律も必要最低限知っておく必要があるでしょう。法律に違反すれば強制退去や罰金、最悪刑務所送りとなることもありますし、法律違反ではないけれど、トラベルライターとして取材をするに当たり、守るべき事項というものもあります。
そこで、今回は出版社や取材先、海外現地滞在先で注意してほしいことをまとめてみます。
出版社や旅行サイトの原稿執筆でありがちの法律・ルール
出版社や旅行系のWEBサイトに向けて原稿を執筆する際、必ず注意しなければならないことがあります。特に出版系は一度印刷して出版されてしまうと修正がきかないため、最悪損害賠償を請求される事態に発展することもあるかもしれません。
肖像権の範疇をクライアントと確認する
とりわけ出版社が非常にセンシティブに考えている問題の1つが「写真」です。ページに使う写真はサイトや他人からの盗用でないことはもちろん、そこに映っている人々に対して写真掲載の許可がとれているか、というのが重要。
前者は著作権、後者は肖像権の範疇となります。写真に偶然写っていた人が、出版社に対して肖像権の侵害(個人の尊厳の侵害)として裁判する例もあります。
ここで厄介なのは、個人の尊厳は憲法13条で保証されているものではあるものの、その範囲は明確に定義はされていないということです。
そのため、クライアントによっては「風景の一部としてみなせるようなら、人の顔が映っていても問題ない」とするところもあれば、「少しでも顔が見える場合は、必ずモザイクをかけてください」と厳格に規定しているところもあります。
著作権の問題もクリアにしよう
トラベルライターとして覚えておきたい著作権の認識は、写真と原稿に関してとなります。一般的に写真を提供する場合はⒸ+名前などとクレジットを付けますが、著作権をクライアントに譲渡することは、自分の作品であることをアピールすることはできませんので、クレジットも外さなければなりません。
もちろん提供した記事は自分の運営するブログであっても使うことは許されません。肌感覚でいえば、著作権の譲渡は出版社よりもWEB業界で多く見られます。WEBの世界にはコピー写真や記事が多く出回っているので、クライアントは著作権の譲渡をトラベルライターに求めるのが一般的です。
ちなみに契約書やメールのやり取りにおいて、この著作権の譲渡の内容が見当たらない場合もありますが、この場合は著作権は原則自分にあると思って構いません。もしあとからクライアント側が、自分が提供した写真を別サイトに使ったり、販売したりした場合は、正当な主張として撤回や手数料を求めることができます。
海外の変わった法律に注意が必要
海外には日本ではちょっと考えられない変わった法律もあります。特に社会主義国や東南アジア圏によく見られます。その多くは仕事上関わりはないものですが、一部で関係してくる場合もあるため、念のため現地の変わった法律は事前に知っておくといいでしょう。
例えば、東南アジアのベトナムでは、「夜22時以降は外国人男性とベトナム人女性が同室にいてはいけない」という法律があります。売春防止のためですが、これはもちろんトラベルライターにも適用されるため、例えば夜遅くのベトナム女性に対する取材はすることができなくなります。
日本では小さな法律違反は知らなかったで済まされたり、警察に見つかっても注意で済むことも多いですし、初犯は基本的に刑務所には行きませんね。しかし、海外では初犯であっても容赦なく刑務所におくられることもありますし、自分では小さなルール違反であっても、当該国では重い罪として罰せられることも多々あります。
社会主義国への取材は要注意
キューバ、北朝鮮、中国、ベトナムといった社会主義国は、国家転覆罪(内乱罪)がしばしば外国人にも適用されます。これは世界どこの国でもある法律で、もちろんのこと日本でも最高死刑の重い罪に罰せられます。
しかし、民主主義国家であるほとんどの国では、この法律が適用されることは滅多にありません。なぜなら言論の自由、表現の自由が保障されているからです。
社会主義国は一党独裁であり、政府が最も恐れているのは内部によるクーデターのため、国家転覆を計画するだけではなく、Facebookに政府の悪口を言うだけでも罰せられることもあります。
もちろんこれは当該国に滞在している場合は外国人にも適用される法律となります。ほんのちょっとの書き込みにより警察に捕まり、数年もしくは数十年刑務所に投獄されることもあります。
取材をする場合の暗黙のルール
国内及び海外現地でレストランやホテルに対して取材をする場合は、幾つか守るべきルールがあります。これらは法律とは関係ないですが、取材先とより良好な関係を築くために必要なことなので、きちんと守った上で取材に臨んでください。
取材に要する時間を相手に伝え、アイドルタイムに行く
取材をするに当たって、まずは相手担当者に取材に要するおおよその時間を伝える必要があります。担当者も暇ではありませんし、取材にどのくらいの時間がかかるのか分からなければ、簡単に許可することはできません。
また、ホテルであれば客室を撮影する必要があるのかどうかも確認してください。レストランであれば、お客がいない14時から17時の間に約束するといいかもしれませんが、これも先方判断に任せた方が無難です。
料理の提供に関するルール
料理の提供に関してはレストラン側にとっては非常にセンシティブな問題となります。レストラン側から取材依頼を出してきたのであれば、料理は必ず無償提供されますが、こちら側から申し込む場合は、基本的に料理は有償と思ってください。
もしクライアント側から料理の経費が落ちないということであれば、レストラン側にはアポイントの際に、「料理は無償で提供していただけるかどうか」、「無償であれば料理の撮影も行い、アピールすることができる」旨を伝え、それとなく有償の場合は料理の取材はできないことを伝えるといいでしょう。
この流れを無視してしまうと、取材が終わったあとに料理の代金を巡ってトラブルが発生してしまうかもしれません。
ホテルではどこを撮影するかもしっかりと伝える
ホテルを取材する場合は、基本的に撮影の前にホテル内のカフェやロビー、事務所などでその日の流れを担当者と確認します。その際に、どこを写真撮影するのかをリストアップして正確に伝えてください。
ホテルはブランドを非常に重要視しているので、撮影前には必ず部屋のデコレ―ジョンや準備を行います。撮影許可が下りていない場所を勝手に撮影すると、怒られてしまうかもしれません。
契約書は必ずすべての文言に目を通すように
クライアントとの取引を開始するに当たり、必ず契約書を交わすことになります。場合によっては十数ページにも及ぶ長い文となるかもしれませんが、いずれも「知らなかった」では済まされないことばかりです。
また個人で依頼を請け負うトラベルライターには守ってくれる人がいません。万が一トラブルが発生した際は、全責任を自分で負わなければなりませんので、細心の注意をもってして契約書に署名するようにしてください。