近年は海外移住者の増加に伴い、現地でライターとして収入を得る人も多くなってきました。特別な資格は不要でパソコン1台あれば場所を選ばず仕事ができるライターは男性にも女性にも人気です。
しかし、海外在住ライターの中には「たくさん記事を書いても単価が上がらない」、「5年前と記事単価が同じ」という人も少なくありません。
そこで、ここでは海外ライターとしてキャリア13年の筆者が、海外で働くフリーライターに向けて、記事単価を上げるコツを具体的に紹介します。
コロナ後の海外在住者数の状況
2020年より始まった新型コロナも2023年になると大分落ち着きを取り戻し、努めてコロナ以前の生活に戻りつつあります。コロナの前年までは毎年海外移住者は増加基調にあり、ピークは2019年で約140万人となります。
一方でコロナ以降は帰国者が増えていますが、それでも全体の1割未満にとどまり、ほとんどの人は海外に留まっている様子がうかがえます。海外の多くの国は日本よりも経済復興のスピードが速いため、日本よりも経済活動が盛んな海外に拠り所を見つける人は今後も増えることが予想されます。
海外在住ライターの増加に伴う記事単価を予想
以前は海外在住者の中でライター活動をしている人は駐在員妻くらいでしたので、旅行会社や出版社が質の高い海外記事を求めるときは、決まって海外現地支店のスタッフ、もしくは現地日系出版社などに依頼していました。
しかし、昨今はフリーで働く海外ライターが増えており、企業としても単価の安いフリーライターに依頼するのが普通になってきました。
一方で依頼者の中には「記事単価が安いからライターに依頼している」と考える人も少なくありません。記事単価を上げてしまうと費用対効果を疑問視して、予算の捻出が困難になるケースもあります。そのため、今後は「ライター間で収入格差が大きくなる」展開が予想されます。具体的には、質が低く、文字数の少ないブログのような記事を求める企業と、SEOリテラシーがあり、質の高い記事を求める企業に二極化され、後者の依頼は記事単価が高くなります。フリーで働く海外在住ライターは、後者の依頼企業と契約することで記事単価を上げることができるでしょう。
海外在住ライターの業務委託契約におけるメリットとデメリット
海外在住ライターが企業から記事の作成依頼を受けるときは、業務委託契約となります。業務委託契約は企業から見ると、「労働法に縛られないため都度依頼ができる」メリットがあります。一方で海外在住ライターにとっても「労働時間や場所を強制されない自由」があります。
ただし、業務委託は最初に交わす契約が非常に重要となり、自分に不利な契約をしてしまった場合、次の更新まで拘束されることになります。また、業務委託は契約期間中は最初に定めた報酬となるため、契約開始後に「想像以上に記事の難易度が高い」、「想定していた数倍の時間がかかる」、「経費が必要な記事を多く依頼される」といった場合でも、単価上げの交渉は現実的にうまくいきません。
このような不測の事態に備えるために、業務委託契約を開始する前に、テスト(試用期間)を1~2カ月設けてもらい、実際に提示された報酬で引き受けられるかどうかを確かめてみるのがおすすめです。依頼企業としても契約前にライターの実力が分かるので、お試し期間は歓迎してくれるはずです。
海外在住ライターは契約方法を工夫して単価交渉を容易にする
一度契約を交わしてしまうと、記事単価の報酬交渉はなかなか捗らない旨を上記で紹介しましたが、契約を工夫することで交渉を比較的容易にする方法があります。
アウトソーシングに慣れている企業は、業務委託契約を交わす際に「基本契約」と「個別契約」に契約書を分けることがあります。
基本契約はルールや規定、コンプライアンスといった不変の項目を列挙し、個別契約は変則的な項目を記載します。個別契約は基本契約よりも優先されるのが一般的で、依頼の度に契約を交わすか、3か月程度の短い期間で更新されるのが普通です。記事単価や文字単価といった報酬項目を基本契約でなく個別契約で結ぶことで、比較的短いスパンで単価交渉の機会を得ることができます。
海外在住ライターの文字単価を上げるコツは「専業」になる
海外在住ライターが文字単価を上げるポイントの1つが「海外在住の専業ライター」になることです。上述したように、近年はフリーライターも増えてはいますが、それでも全体を見ると、まだまだ海外在住ライターの多くは駐在員妻が占めます。そのため、専業ライターには副業ライターと比較して幾つかの優位性を持つことができます。
海外在住ライターは、まず最初に現地の日系出版社・編集プロダクションに挨拶に行くのが通例ですが、大抵は「専業ライターの人とは初めてお会いする」と言われます。
専業ライターのメリットは大きく分けて以下が考えられます。
- 帰国予定がないため依頼しやすい
- プロのため記事の品質や納期を遵守してくれる
- 全国に出張して記事を書くことができる
特に3.に関しては多くの依頼企業が求めることでもあります、駐在員妻や本業の傍らに記事を書いている副業ライターは、出張が難しいため遠方の写真撮影や取材依頼ができません。これは依頼企業にとっては大きな悩みの種となるので、経費を出せばどこでも飛んでくれる専業ライターは非常に重宝すべき存在とみなされます。
海外在住ライターは「SNS」を使って単価を上げる
上記で解説した方法を用いても、文字単価1円から2円に上げることはできても、1円から4円に上げることはまず不可能です。記事単価・文字単価の相場を大きく上回る報酬を求めるよりも、別の業務を引き受ける方が収入は上がりやすいと考えてください。
海外在住ライターが記事作成と並行して請け負うおすすめの業務は「SNS」です。自分がInstagramやFacebookを運用して、数千人以上のフォロワーがあれば、「御社に書いた記事を自分のSNSで紹介します」と提案できます。
もしくは、依頼企業の運営するSNSを自分が管理・更新代行する提案も有効です。依頼企業側にSNSマーケティングのリテラシーを持つ従業員が不在なのであれば、恐らく上記両方を請け負うことも可能でしょう。依頼企業としてはWebマーケティングに活路を見出したいため、記事単価を上げるよりも有益と考え予算取りに走ってくれるはずです。
海外在住ライターは「専門性」を高めて単価を上げる
海外在住ライターに依頼する企業は「旅行会社・出版社・市場調査会社・IT企業」が主です。IT企業は観光情報サイトや現地ツアー等の予約サイトを運営しており、いずれもSEO対策によるWEB集客が運営の根幹となるため、海外の現地コンテンツは欠かせません。
一方で単にフリーライターを掲げるよりは、「旅行ライター・トラベルライター」など専門性をアピールした方が企業としては依頼しやすくなります。また、自分のポートフォリオに「フランスの観光・生活・経済について深い専門性があります」と記述しておくのも良いでしょう。記事単価だけで判断すれば、オールラウンダーよりもスペシャリストの方が高くなる傾向にあります。
まとめ:海外在住ライターは国内ライターよりも記事単価を上げやすい
海外の専業ライターは国内ライターと比較すると、それほど多くはありません。そのため、依頼企業も仕事ができる現地ライターをなるべく手放したくないと考えるため、ライターの立場からすると単価交渉に臨みやすいと言えます。
ただし、闇雲に「金額を上げてください」といっても難しいので、その時は今回紹介した提案を基に交渉してみると良いでしょう。