海外移住では必ずしも全員が公私ともに幸福な生活をおくっているわけではありません。中には心身病んで日本に帰国を余儀なくされる人も決して少なくありません。そこで、今回は海外移住で失敗するケースをご紹介します。失敗する原因を予め知ることによって、解決策を持って移住に臨んでください。
海外移住で心療内科を受診する人は実は多い
海外に移住・仕事をしていると、自分では気が付かないところで心身が疲弊する人が多くいます。移住当初は何もかもが新鮮ですが、それが3か月、半年もすると、その国の嫌なところや、日本の習慣と大きく異なる点が嫌でも目についてしまいます。
また、仕事に関しても、うまく軌道に乗ることができればいいのですが、そうでない場合は、やはり日本でのビジネス経験とのギャップを感じてしまい、日々ストレスが蓄積してしまうことになります。
日本人が多く暮らす海外都市には、日本人が勤務している国際病院が必ず1つはあるものですが、医師に聞くと、「メンタルをやられて鬱や自律神経失調症、狭心症の一歩手前まで来ている日本人は非常に多い。そんな人にはいったん仕事を辞めて療養するか、一時帰国をすることをおすすめしている」と言います。
海外移住の失敗例「仕事内容がまるで違う」
海外移住の失敗例として主に男性に注意してほしいのが、仕事内容のギャップです。中小企業に属する場合、どんなに仕事経験が浅い人でも、日本人は支店長か副支店長など、責任ある立場に就きます。日本と変わらない残業を強いられるだけではなく、現地人とも良好な人間関係を築かなくてはなりません。
実はこれが非常に難しいところ。日本人とは違い感情的になる人が多いため、朝出勤したら、従業員同士が罵声を浴びせ合って喧嘩していることもしばしば。30分程度は余裕で遅刻してくる人もいれば、「仕事が終わったから」と定時前に帰社する従業員だっています。そういった従業員をうまくコントロールしつつ、関係を築くのは本当に困難を伴います。
大手企業に就職すると待っている「接待」の日々
一方で、大手企業に就職できたとしても、受難の日々が待ち構えています。大手企業で働く場合、避けては通れないのが「接待」です。取引先はもちろん、日本の本社から現地入りする役員クラスの上司に対しても、毎夜接待をしなければなりません。
仕事自体はそれほど難しくはありませんし、福利厚生も悪くはないのですが、毎日帰宅するのが21~24時という職場も珍しくなく、「思っていた生活と違う」と海外移住を諦めて日本に帰国する人も実際にいます。
海外移住の失敗例「現地人に対してストレスが溜まる」
日本は成熟した先進国であり、そこに暮らす人々はほぼ全員が義務教育を受けて、一般的な常識や道徳を心得ています。一昔前に話題となった「民度」という言葉を使うならば、日本人は非常に民度が高い人種といえます。
海外現地にいけば、アジアや欧米、南米問わず、現地人の振る舞いに苛立ちやフラストレーションを覚えることがしばしばあります。
アジア人の失礼な態度に辟易
アジア圏では韓国、中国、タイ、マレーシアなどが海外移住を希望する日本人に人気の国となります。
しかし、ご覧の国に長く住んでいると、「いつも親切にしてくれる市場のおばちゃんが、実はぼったくってたことが分かった」、「隣の家の人から、頻繁にお金を貸してくれとせがまれる」、「スーパーに行くと、いつも横入りされるし、レジの人は注意もしない」一見すると小さな問題に思えますが、山のように問題が増えてくると、いつか爆発して「こんな国にいられない!」飛び出すこともあるでしょう。
念願の欧米移住も失敗に終わるパターン
欧米の多くは確かに日本と同じような常識・道徳観を携えている人が多いですが、それでも念願だった欧米移住生活を諦めて日本に帰国する人もいます。欧米圏への海外移住の場合、主に現地での生活が苦しくなる原因が「料理」にあります。
欧米ではパスタやパンが主食となるため、和食は日本料理店に行くしかありませんが、一食約2000円と高額です。欧米食に頻繁に使われるチーズやバター、オリーブオイルなども、毎日食べ続けるとうんざりしてくることもあるかもしれません。
また、欧米で懸念される人種差別は、長く滞在していれば1度や2度は経験することになりますが、よほど大きな被害を被らない限りは、海外移住を諦める直接の原因にはならないでしょう。
海外移住の失敗例「子供の教育」問題
子供がいるご家庭が海外移住を希望する場合は、必ず当該国の学校事情を日本にいるうちから調べておいてください。海外移住を果たし、仕事も生活も順風満帆であっても、子供の学校事情によって帰国を迫られる家庭も多くあります。
海外現地では、子供の通う学校は「私立学校」か「インターナショナルスクール」、「日本人学校」のいずれかとなります(世界共通)。その内、私立学校とインターナショナルスクールは英語が校内言語となりますので、家庭でも父母いずれかが英語で会話をするのが望ましいです。
また、インターナショナルスクールは学費の工面も大変です。物価の安い東南アジア圏であっても、年間で80~150万円程かかります。「長男はインターだけど、末っ子はお金がないから日本語学校」というわけにはいきませんので、予めどちらの学校に入れるか計画を立てる必要があります。
ちなみに、日本人学校は一般的に義務教育となる中等部までとなり、高校は2021年時点でバンコク(タイ)、シンガポール、上海、イギリス(ウェクサス・サセックス)、レザン(スイス)のみとなります。
中学卒業までに英語がネイティブレベルに達しているのであれば、インターナショナルスクールや私立学校に編入することができますが、一般的には日本への帰国を選択します。
独身フリーランスにおける海外移住の失敗例
上記で解説した問題は、独身のフリーランスであればすべて解決するように思えます。しかし、独身のフリーランスであっても海外移住に失敗するケースはしばしば見受けられます。
海外在住のフリーランスにありがちな失敗は「必要最低限の仕事しない」ことがまず挙げられます。アジア圏であれば物価が安いため、家賃含めても10万円あれば十分生活することができます。
そのため、週に2~3日程度仕事をすれば生活に十分な収入を得られるため、徐々に仕事を怠けてしまい、気が付いたらクライアントも離れていった、なんてことはよくある話です。
また、フリーランスのほとんどは現地で法人設立をしていないため、観光ビザを更新して滞在しています。そのため、何回か観光ビザを更新していると、なぜか次回のビザの更新ができなくなった、といった事態に陥ることもあります。
その多くは一度国外に出国して出戻りをすることによって解決しますが、法律が変わり、それでも入国できない場合は、第三国に移住先を変更するか、日本に帰国するかの選択となります。
海外移住をする前に具体的な将来設計を。失敗回避の策を練ろう
今回は海外移住の失敗する例をご紹介しましたが、国は違えど日本に帰国を余儀なくされる主な原因は世界共通で似通っていることが分かります。
そのため、上記の失敗例を踏まえて、移住する国を吟味し、5年、10年住んだときの将来設計も日本にいるうちから具体的に計画することを強くおすすめします。それが海外移住を失敗しない最大限のリスクヘッジとなるでしょう。