海外移住の計画を日々練っていると、「銀行口座はどうすればいいのか？」という素朴な疑問に当たります。日本の口座は解約しなければならないのか、また、移住先の国で新しく銀行口座を作ることはできるのかどうか。
お金にまつわることなので、非常にセンシティブな問題となる一方、詳しく解説している情報サイトはあまりありません。そこで、今回は海外移住者に向けて銀行口座に関する情報を詳しくお伝えいたします。
海外移住者（非居住者）でも日本の銀行は利用できる
まず最初にふと疑問に思うのが、海外移住をして日本に住んでいない人が日本の銀行口座を利用し続けたり、新たに開設したりするのは、規約の違反になるのではないか、というものですね。
すべての銀行に当てはまるわけではありませんが、大手の銀行やインターネットバンクは、基本的に新規の銀行口座を作ることもできますし、海外に移住したあとも引き続き利用することができます。
ただし制限のあるサービスも多い！
海外移住者は日本の銀行口座を引き続き持ち続けることができるほか、お金の振り込みや送金、積み立てに関しても問題ありません。しかし、それ以外のサービスは、ほとんどが利用規約として制限されることになることも覚えておいてください。
例えば、昨今は多くの銀行で癌保険や証券取引サービスを提供していますが、これのサービスは原則日本国内の居住者に限定されています。銀行では一般的に6か月以上海外に居住している人を「非居住者」扱いとして、上記のサービスの利用を制限しています。仮にばれずに申し込むことができたとしても、支払いを受けるときにバレてしまうと、利益を享受することができなくなる可能性があります。
海外移住をする前に、日本の銀行口座を新規開設するべき理由
海外移住をする前は新規で銀行口座を作り、クレジットカード機能が付随しているキャッシュカードを複数枚作っておきましょう。海外移住をすると、日本国内で新規のクレジットカードの作成が困難となることが主な理由ですが、他にも海外現地でフリーランスとして活動する場合、報酬の受け取りは日本の口座となるからです。
また、株や仮想通貨取引をしたい場合も、日本の銀行口座をアカウントに紐づけることになりますので、海外移住を理由に口座を解約する理由はまったくありません。
インターネットバンクは最低1つは口座開設をしておこう
銀行支店を持たないインターネットバンクも昨今は普及してきました。有名どころでいえば、楽天銀行や住信SBI銀行、ジャパンネット銀行ですね。いずれも大手ネットバンクですので安心できます。
また、インターネットバンクのメリットは第一にスマホアプリが非常に操作性がよく、簡単に振込ができるという点にあります。さらに、振込手数料が安い、あるいは規定回数が無料といったサービスもあります。フリーランスで仕事の幅を広げていけば、報酬を受け取るだけではなく、支払うことも多くなってきます。そんなときにネットバンクを利用すれば、振込手数料を大きく節約することができます。
海外移住先で銀行口座の開設はできる？
海外移住後は、現地で収入を得ることも想定して、地元の銀行口座を開設したいところです。ただし、基本的にアジア欧米とわず、外国人の銀行口座の開設は敷居が非常に高いことが挙げられます。
まず、当該国にしっかりと居住して住所を持っていることを証明する書類や、日本の残高証明書、移住先国の運転免許証や現地での収入証明なども要求する国もあります。欧米ではイギリスやスイス、アジアではベトナムやラオスなどは比較的銀行口座の開設が難しいとされています。また、ヨーロッパでは銀行口座の維持費として毎月1～3ユーロほどかかることも覚えておきましょう。
面接に合格しないと口座を開設できない銀行もある！
海外現地に支店を置く大手外資系インターナショナルバンクの場合、銀行口座の開設にあたって銀行担当者と面接をして合格する必要があります。これは銀行や当該国に不測の事態が発生した際に、銀行が取る行動に対して同意しなければならないという規約があるのですが、その規約は現地語もしくは英語で理解する必要があります。そのため、銀行担当者が英語でその規約を読み上げますので、もし理解度が低いと判断されたら、面接に不合格とみなされ、口座を開設することができません。
海外現地で口座を開設する最短の道は「会社でドル口座を作る」
海外移住をして、現地で口座を開設したいと考えても、個人ではどうしても開設できる銀行が見つからない、といった事態も想定できます。その場合は、口座を代行して開設してくれる業者に依頼するか、もしくは現地の会社に勤務してドル口座を作る道が考えられます。
これはアジア圏で主に言えることですが、銀行には現地通貨で預金する口座と、ドル建てで預金できる口座に区別され、ドル建ては現地で働く外国人、もしくは特定の条件をクリアした現地人のみが開設できる口座となります。
ドル建ての口座のメリット＆デメリット
移住する国や銀行によっては、何の条件もなしに外国人というだけでドル建ての口座を作ることもできるかもしれません。現地通貨かドル建ての口座のどちらを開設するかは、メリットデメリットを把握したのち吟味してください。
昨今アジアはどの国も外資参入が目覚ましく、毎年のように著しい成長を誇っています。そのため、銀行もインフレに合わせて金利を上げてきており、日本の超低金利とは異なり、年利5～8%という国も多くあります。そのため、数百万円単位でお金を預けることができるのであれば、現地通貨の口座で定期預金契約を刷れば、金利だけでもつつましく生活できる利子を得ることができます。
しかし、ドル建て口座は高金利の恩恵を受けることができなく金利1%以下が普通です。そのため、実際、アジア在住でドル建て口座を利用するのは、一定期間後に日本に帰国する予定のある駐在員がほとんどとなります。
新興国の地場銀行はリスクもあることを覚えておく
新興国（発展途上国）の地場銀行は、上記のように高金利の恩恵を受けることができるメリットはありますが、「銀行倒産」や「預金閉鎖」のリスクがあることも覚えておかなければなりません。
銀行の倒産は現実的な可能性が最もあるリスクとなり、国が保証してくれるのはせいぜい50万円以下となります。そのため、数百万円を預けるのは倒産リスクがあると考えることができるので、複数の銀行に預金したり、海外現地の銀行に預ける金額は必要最低限で、残りの資産はすべて日本の銀行に残しておく、といった立ち回りも考えることができます。
日本の銀行からの引き落とし手数料は高い
ただし、日本の銀行から海外現地のATMでお金を引き落とす場合、引き落とし手数料のほか、為替手数料もかかりますし、1度に引き落とせる金額は数万円程度となります。そのため、現地の銀行口座を一つは持っておくと、便利となります。
海外移住者は大事な資産を維持する方法を考えよう
日本に住んでいると、銀行口座や預金している資産に関してはあまり気に留めることはありませんが、海外では必ずしも銀行が資金を守ってくれるとは限りません。銀行預金もリスクヘッジを考えて開設の有無を検討するようにしましょう。