トラベルライターとして活動していくにあたっては、単に与えられた仕事をこなしていけばいいというだけではありません。
トラベルライターはフリーランス。いわば個人事業となるため、キャリアアップの階段は自分で作り、上って行かなければなりません。会社勤務のサラリーマンのように、評価のマニュアルのようなものは存在しないのです。
では、トラベルライターにとってのキャリアアップとは、どのような過程を経る必要があるのでしょうか。もちろん個人によって目指すところが異なれば過程もさまざまですが、それでもトラベルライターである限り、共通するところも多くあります。
今回はトラベルライターのキャリアの一般的な積み重ね方をご紹介します。
キャリア① ウェブライティングで最初の実績を作る
一昔前まではライターのキャリアを積む最もな方法は編集プロダクションに企画を持ち込んで認められることでした。仮に企画が通らなくとも、既存の仕事を回してもらったりと雑用のような案件をこなすのが普通でした。
しかし、現在はパソコン一台でなんだってできてしまう時代となりましたし、出版業界自体が継続的な不景気に陥っているため、上記のようなステップアップは風化してしまったようです。
ライティングを募集している企業に応募。ジャンルにこだわらないで
「自分はトラベルライターだから、旅行記事しか書かない」というのは、職場で「私は営業だからコピーの依頼やお茶くみはお受けしません」というのと同じです。
まずは働いて実績を作るとともに、生活費を稼がなければならないため、好きなジャンルだけを書くわけにはいきません。また、あらゆるジャンルを書いて実績を作ることができれば、万が一トラベルライターでお金を稼ぐのが難しいと判断したときにもつぶしがききます。
キャリア② 旅行記事を中心に単価を高く設定する
ジャンルにこだわらずに半年ほど書き続けることができれば、その過程で何社か旅行会社や観光サイトからの記事依頼も引き受けることができているでしょう。
旅行記事に慣れてきたら、そのジャンルのみを強みとして自己PRし、なおかつ記事単価を少し上げてみると自身の専門性の向上に繋がります。
結局のところトラベルライターには特段役職やステータスがあるわけではないので、自分のキャリアアップ=記事単価の底上げが1つの指標となることを覚えておいてください。
キャリア③ ポートフォリオを作る
1つ2つでも名の知れた旅行サイトや大手のサイトに記事を提供することができるようになったら、自身の実績をリスト化したポートフォリオを作成するといいでしょう。
サラリーマンが転職をする際は履歴書と職務経歴書を提出しますが、トラベルライターの場合は実績を記載したポートフォリオを提出するのが一般的です。
ポートフォリオは特に書式は決まっていませんので、ワードで箇条書きにして多少の装飾を入れるだけでも可。
ただし、顧客によっては簡単な概略もほしいといってくるところも少なくないので、実績を紹介する前に自分の簡単な職務経歴を200~300文字程度で文章可すると良いでしょう。
また、実績を書くときはウェブ媒体と紙媒体で分けて書くと分かりやすいです。作ったポートフォリオはいつでも書き換えられるようにワードで保存しておくとともに、顧客に提出する際はPDFに落としてからメールに添付するようにしましょう。
キャリア④ トラベルガイドブック含む海外情報系の本に記事を寄稿
トラベルガイドブックの案件は、出版社や編集プロダクションから依頼のメールがくるのが一般的。例えば観光サイトに旅行記事を提供し、記事末にプロフィールが書いてあれば、それを辿って業界の担当者が連絡をとってきてくれます。
ガイドブックの依頼は観光スポットの調査や写真撮影、コラム記事の執筆など仕事の種類はさまざまです。記事を書く場合は編集者とやりとりすることになりますので、必要最低限の一般的な校正記号は覚えておくとスムーズなやり取りができます。
たったの1冊で、しかも300文字程度の小さなコラム1つだけの依頼であったとしても、ポートフォリオには「ガイドブック〇〇寄稿(出版年)」と堂々と書くことができますので、大きなキャリアアップに繋がることは間違いありません。
もしその出版社が複数種のガイドブックや海外/国内情報誌を扱っているのであれば、別の編集者から依頼が来ることも珍しくありません。もし末永くお付き合いしたいと思える顧客と出会えたらならば、一度担当者と直接会って名刺交換するのも大切な自己PRです。
キャリア⑤ 雑誌の単発のコラム記事の依頼が来る
編集プロダクションや出版社とある程度でリレーションがとれてきたら、不定期に雑誌のコラム記事の案件がやってきます。1ページもしくは見開きくらいの量となりますが、原稿料も悪くないので、積極的に引き受けるといいでしょう。
ただし、あくまでも不定期の依頼なので、ウェブ媒体での執筆が収入の軸であることにかわりはありません。
キャリア⑥ 自著を出版する
自著の出版は基本的に出版社が全額負担の企画出版がおすすめです。ある程度ガイドブック製作の仕事に携わることができると、編集長からお声がけがあります。
自著は巡り合わせも必要ですが、例えば著名作家の本の巻末にコラムを載せたり、海外在住者の一人として現地の生活やビジネス情報を書き記すオムニバス本であれば、1年に1度か2度は依頼の話が回ってくることでしょう。
そういった依頼のメールを確認すると、自分が着実にキャリアを積み重ねていることを実感することができます。
自著が売れて印税で生活できるまでの道のり
キャリア⑥では自著の出版を挙げましたが、自分の名前が世に知られていないうちは、自著を出したところ販売部数はたかが知れています。
また、印税契約を結んだとしても、自分に入ってくる金額は雀の涙ほどですし、基本的には最初に受け取ることができる原稿料がすべてと言うことができます。
そのため、自著で出版することができたとしても、印税で生活できるようになるのはまだまだ先の話。印税で生活ができるようになるためには、自分の名前が売れるようにならなければなりません。
そのためには、これまで培ってきた出版社や編集プロダクションの人脈を活かして、企画を持ち込んで採用される必要があります。
自分の実績や文章力はもちろんですが、それ以上に出版業界のトレンドや編集者を唸らせる企画アイデア、タイミングなどが総合的に絡み合ってはじめて自分の書きたい本を書くことができ、活字印刷されます。
もちろん売れるかどうかはまた別問題。一冊売れれば2弾3弾と話が大きくなるので、今度はネタのストックの量が重要視されます。印税生活の道のりは非常に険しいものであることは覚悟しておきましょう。
トラベルライターとして10年後にあるべき自分の姿をイメージしよう
トラベルライターはデスクワークのみで成立する仕事ではありません。観光地に足を運び、人やお店といったスポットを取材してカメラで写真におさめ、現地の空気を肌で感じる必要があります。
トラベルライターになれば会社に束縛されず、「自由旅行でお金を稼ぐことができる」のは真実です。しかし、その生活を果たして10年後、20年後も続けることができるかどうかは自問自答しなければなりません。
旅行記事を書くだけではなく、自分で収益性のあるブログやホームページを運営したり、出版社との繋がりを活かして編集のような裏方の仕事を回してもらったり、自分なりのステップアッププランをイメージしながら、キャリアを積み重ねていけるようになるといいでしょう。