トラベルライターも時代の変遷とともに、仕事内容は徐々に変化していることを日々実感します。ここでは、ウェブサイト上に書く旅行記事の書き方をご紹介します。
ウェブ上の記事はSEOと呼ばれる検索順位の上位表示を目的とした対策を講じる必要があるので、雑誌や書籍に書く場合と記事の構成が異なります。
近年のトラベルライターの収入はウェブ記事が大半を占める
もちろん有名な作家であれば話は変わりますが、一般的なトラベルライターが書籍や雑誌などの記事に執筆する機会は、年にそう何度もありません。そのため、トラベルライターの月の収入の大半はウェブサイトへの記事の投稿となります。
依頼主は旅行会社、観光サイト、市場調査会社、現地生活情報サイトなど多岐にわたるので、常に5~10社程度の依頼主を抱えているのが理想となります。
トラベルライターが知るべき旅行記事とSEOの関係
依頼主がウェブ記事を求める場合、その多くはSEOを目的としています。SEOはGoogleやヤフーでキーワード検索をしたさいに、自分のサイトの記事が検索上位に表示される対策を指します。
具体的には1ページ目(1~10位)を目指しているのですが、検索順位が上位表示されて多くの人に読まれれば、自然とドメイン評価が高くなるので、サイト全体が発展します。
そのため、トラベルライターが旅行記事を書くときは、単に面白い記事、オリジナリティある記事を書くだけではなく、検索で上位表示されるような記事の書き方を実践しなければなりません。
もしSEOがうまくいき、検索上位に自分の記事が表示されれば、当然依頼主は喜びますので単価のアップや追加案件の依頼、契約の継続といったメリットを受けることができます。
また、最近は「自分の書いた記事のクリック数によって報酬が決まる」というインセンティブを取り入れている依頼主も多くなってきました。
この場合は依頼主のサイトの検索ボリュームや、自分の書く国・都市の需要がそもそもどの程度あるかによって大きく報酬が変動するので、一概におすすめはしませんが、一度自分の記事の需要を確かめてみるのは有意義かもしれません。
トラベルライターのSEO記事作成。まずはテーマとキーワードを決める
トラベルライターが旅行記事を作成するさいは、まずは記事のテーマを決めることになります。例えば「ベトナムの通貨に関して」が記事テーマの場合、キーワードは「ベトナム」と「通貨」になりますが、そもそも論として、このキーワードはどのくらいの検索ボリュームがあるのかを調べる必要があります。
調べる方法は幾つかありますが、無料でできるのがGoogleが提供しているキーワードプランナーを利用する方法です。キーワードを打ち込むだけで、月間の予想クリック数が表示されます。
しかし、「通貨」というキーワードはクリック数がほとんどないことがわかった場合、キーワードを追加もしくは変更しなければなりません。旅行会社からの依頼の場合、当然読者層は旅行者となります。
旅行者がベトナム+通貨と検索窓に打ち込む場合は、どんな情報が欲しいのでしょうか。
- ベトナムが初めてなので、現地にどんな通貨が流通しているのか知りたい
- ベトナム現地で米ドルが使えるのか知りたい
- ベトナムで日本の通貨が使えるのが知りたい
- ベトナムの通貨を知って、もし必要なら現地での両替場所を知りたい
などが挙げられます。これらを鑑みて記事タイトルを決めると、
- ベトナム旅行者必見の通貨情報。現地両替事情も紹介
- ベトナム通貨事情。現地で米ドルや円は使える?
- ベトナムの通貨は「ドン」。流通している紙幣や買い物の注意点を紹介
といった記事タイトルが候補として挙げられます。このように、単純にキーワードだけをなぞるのではなく、そのキーワードの裏側に隠された読者の知りたい情報をタイトルに盛り込んであげるのが重要なポイントとなります。このような潜在読者を意識した記事作りというのは、書籍や雑誌にはない考え方となります。
旅行記事の文章は見出しで構成。ポイントと注意点
トラベルライターの腕の見せ所となるコンテンツ(記事の内容)ですが、文章の構成で重要なのが「見出し」です。見出しは見出し(h2タグ)と小見出し(h3タグ)を使用します。
また、見出しの次に写真、その次に文章、そして見出し……、のように順番もある程度テンプレ化しています。添付する写真にはaltタグといって、その写真の内容を20文字程度で示す文をつけてください。
これはGoogleは写真の内容までは把握していないので、それを伝えるための文章となります。
また、トラベルライターが旅行記事を書くポイントとしては「テーマがぶれないようにする」ことも大事。
例えば「フランス・パリのおすすめホテルを紹介」という記事を作成するのであれば、フランスのパリ市内のおすすめホテルを紹介することに集中しなければなりません。
よくやってしまいがちなのが、文字数や全体の情報量を増やすために、パリから行ける近隣エリアのホテル情報を入れたり、ホテルから行ける観光スポット情報を詳しく紹介したりすること。
このように記事タイトルと内容で話題がずれてしまうと、テーマがぼやけて専門性が薄れてしまいます。これも検索順位を落とすありがちな失敗例として覚えておいてください。
SEO記事の基本。1つの記事に1つのテーマ
SEO記事は「1つの記事に1つのテーマ」であることが大切です。上述したように、書きたいことをすべて書いていると、テーマがぼやけてしまい、最終的に検索順位を落としてしまいます。
例えばキーワードの検索ボリュームをキーワードプランナーで調査したところ、「ニューヨーク+レストラン」と「ニューヨーク+ホテル」がクリック数が高いとします。
そのため、「ニューヨーク旅行者におすすめしたいレストラン&ホテルはコレ」のように、2つのテーマを1つの記事に盛り込んでしまうことはやってしまいがち。
しかし、SEO記事の原則は1つの記事に1つのテーマなので、「ニューヨーク旅行者に絶対に行ってほしいレストランはコレ」、「初めてのニューヨークは立地で選ぶ!おすすめホテルを紹介」のように、記事を分けて作成するようにしましょう。
写真画像の注意点。トラベルライターは撮影写真を再度確認を
トラベルライターがウェブ上に写真を添付する場合は、その写真の「肖像権」と「著作権」を確認しましょう。肖像権は写真に写り込んでいる人が削除を求めて裁判を起こしたときに問題となります。
例えば、トラベルライターが撮影した写真に、偶然「お忍びで不倫旅行をしていたカップル」が映り込んでしまい、彼らが不利益を被ってしまうと、裁判に発展することがあるかもしれません。
依頼主は「トラベルライターが使う写真は法律上問題ない」ことを前提にしているので、問題が発生した際は責任の所在がトラベルライターにいくこともあるかもしれません。
この肖像権に関しては年々厳しくなっている印象なので、町並みや店内写真に写り込んでしまった人に関しては、せめて日本人だけは顔にモザイクをつけるのが得策と言えます。
もう1つの著作権ですが、こちらは写真の持ち主です。自分が撮影した写真を依頼主の記事制作に使う場合、その写真は原則として、自分のブログ含むあらゆるメディアに使いまわすことはできません。
また、ホテルやレストラン、スパといった写真イメージを大切にする業態へ取材する際、場合によっては先方から「この写真を使ってくれ」と商用写真を指定されることもあります。
この場合は写真の著作権は先方にあるため、通常は写真のキャプチャーにクレジット「Ⓒ+企業(店)名」を入れるのが普通となります。お客によっては写真の中に入れてくれというところもあるので、その場合は加工する必要があります。
SEOは奥が深い。時間があるときは自己学習を
Googleは実に200以上の要素をロボットが機械的に点数化して、記事の検索順位を決めていると公言しています。
しかし、年々記事の内容の濃さが検索順位に大きく影響するようになっているので、今後はこれまで以上に旅行専門家であるトラベルライターの記事が重宝される見込みです。時間があるときは取材だけではなく、SEOに関する学習も怠らないようにしましょう。