トラベルライターとしての1つの大きな目標となるのが「自著の出版」です。旅行サイトやガイドブックに自分の書いたコラムや紹介文が掲載されるのは、なんど読み上げても嬉しいものがありますが、自著が出版されるとなると、それとはまた異なる形容しがたい大きな達成感を味わうことができるでしょう。

昨今はネット上で販売する電子出版や、必要部数だけ刷ってくれるオンデマンド出版なども普通になってきましたので、自費出版であっても比較的低料金で自著を世に送り出すことができるようになりました。

そこで、今回はトラベルライターならば知っておいてほしい出版の種類や知識をご紹介します。

出版社を通す2種類の出版方法

自分の書いた作品を出版する方法としては、大きく分けて紙媒体とweb媒体に分けることができます。まず紹介する前者は、出版社と契約して自著を出版する方法です。

トラベルライターの1つのゴール。「商業出版(企画出版)」

商業出版とは、出版社が出版に関するすべての費用を支払う出版方法で、一般の書店で買える本の大部分は、この商業出版となります。トラベルライターが商業出版をするためには、

1.出版社もしくは編集プロダクションに企画を持ち込み合格する
2.出版社もしくは編集プロダクションから依頼を受ける

上記いずれかとなります。無論ハードルは高いですが、担当編集者や校正者とのやり取り、帯を誰に依頼するかを考えるなど、本を作るに当たる一通りの流れに加わることができるので、喜びと達成感は何ものにも代え難いものがあります。

商業出版の費用事情

商業出版の費用はすべて出版社持ちとなります。トラベルライターが支払うことはありません。また、出版社からは契約時に決めた原稿料を受け取ることができますし、それと同時に印税契約もすることになりますので、0.6~10%程の印税を毎年受け取ることができるのが普通です。ただし、場合によっては印税を見越した額を原稿料に上乗せする代わりに、印税を受け取らない契約方法もあります。

おすすめできるかどうかは自分次第。「共同(協力)出版」

出版社を通して自著を出版する最後の方法として挙げられるのが、「共同出版」です。協力出版とも言います。こちらは初版にかかる費用は筆者が負担し、出版社はマーケティングを担当する出版方法です。出版業界としては、仮に本が売れなくとも困らない方法となるため、中には事業の柱としている出版社もあります。

また、必ず覚えておきたいのが、「出版社によって販路(流通先)が異なる」という点です。共同出版したからといって、どこの書店でも自分の本を買えるわけではなく、出版社が契約した書店に限ります。書店には棚割りがあり、出版社は書店と独自に交渉して、「この棚は自分の出版社の本を置く」という契約をします。そのため、出版社が契約していない書店に並ぶことはありません(取り寄せは可能)。

共同(協力)出版の費用事情

共同(協力)出版にかかる費用は、初回の発行部数やページ数、写真の有無、カラー印刷の有無、校正校閲にどれだけ手間がかかるかによって大きく上下しますが、一般的には100~300万円ほどかかります。基本は出版社は赤字を被らないシステムのため、商業出版と比較すると、筆者に金銭的負担がのしかかる出版方法といえます。「自分でお金を出しても製本したい」、「自分の作品を誰かに読んでもらいたい」という強い願望をお持ちのトラベルライターは、選択肢に入れるのもいいでしょう。

ネットで売れた分だけ印刷できる「オンデマンド出版」

オンデマンド出版は聞きなれない方もいるかもしれませんが、ネットで自著を販売して、売れた分だけ印刷・製本・配送をする、いわゆる受注生産となります。書店に並ばないのが残念ですが、「自著を他人に読んでもらう」、「自分の書いた作品でお金を稼げる」という目標は達成することができます。また、ネット上で注目されれば、次回から出版社から商業出版の依頼が来ることもあるでしょう。商業出版の布石としても利用価値はあります。

費用も安い!在庫リスクゼロ

オンデマンド出版は受注生産が基本となるため、在庫を抱える心配がありません。上記で紹介した共同(協力)出版の場合、初版で通常3000部程度を刷ることになりますが、売れ残った場合は出版社が破棄するか、返却してもらい自分で販売することになります。一方でオンデマンド出版は在庫リスクがゼロというのが魅力。自費出版の一部なので印税という概念はありませんが、本が売れた場合は印刷代と手数料を差し引いた、おおよそ販売価格の1~2割程度の売上金を受け取ることができます。

kindleをはじめとした電子出版は昨今のブームに

昨今はkindleや楽天kobo、iBooksといった個人がインターネット上で自著を出版する、「電子出版」が注目されています。購入希望者はダウンロードすればいいだけなので、印刷や製本をする必要も配送することもありません。値段も数十円から設定できるので、コンテンツやページ数を鑑みて販売価格を決められるのも大きな利点です。また、いずれもアマゾンや楽天、グーグルといった大手企業がサービスを提供しているため、倒産する心配もまずありません。ただし、自著を販売するにあたり編集者がつくわけではないので、自分で誤字脱字や文章校正をする必要があります。また、無名の著者の本に通常販売価格を出す読者は少ないため、100ページで100~300円程度が販売価格の相場。受け取れるロイヤリティは45~70%と提供サイトによって差があるので、どこのサービスを利用するかはしっかりと吟味してください。

電子出版にかかる費用はゼロ円

この電子出版にかかる費用は基本的に無料となります。あくまでもネット上で完結する売買システムのため、本を製本することはありません。そのため在庫リスクもなければ、出版費用もありません。ただし、自著を販売するにあたり表紙が必要となるので、自分で作成することができない場合は、デザイナーに依頼することになります。

トラベルライターとしておすすめの出版方法

トラベルライターとして自著を出すのであれば、旅行記や旅行コラムなど、旅の経験がテーマとなるはずです。このような旅行本というのは、小説やビジネス書と比較するとニッチなジャンルとなるため、有名作家であってもベストセラー(10万部)に到達するのは非常に困難を強いられます。

上記で紹介した共同(協力)出版はいかんせん多額のお金がかかる上、読者が購入できる書店も限られています。紙媒体として正式に出版したい場合は、まずはトラベルライターとしてのキャリアを積み重ね、出版社に企画書を持ち込んでみるのが最善の選択と言えるでしょう。

電子出版は絶好の腕試しの場

自分の体験を本にして売りたい、という欲求がこみ上げるならば、電子出版は腕試しの場として最適です。仮に売れなくともリスクはありませんし、良質な本であれば、長期間にわたって売れ続けることができます。最初から月何万円も稼ぐのは難しいですが、1年に数冊出版することができれば、少額の印税も山となり、ロイヤリティのみで生計を立てられる日も来るかもしれません。

出版する場合は契約書の内容にしっかりと目を通して

何かしらの形で自著を出版する場合は、必ず契約書をしっかりと読みこみ、同意してからサインをしてください。特に紙媒体で出版社と正式に契約を交わす場合は、分厚い契約書を受け取ることになりますが、そこには原稿料、発行部数、販売期間、在庫リスク、印税、著作権、重版後の対応などが細かく記載されています。必ずすべて目を通すようにしてください。

最新情報をチェックしよう!