旅行ライターはほぼ全員がフリーランス。いわゆる自由業となります。企業から仕事を請け負う際は、所定の業務委託契約を交わすこととなりますが、業務委託契約に関する法知識や対策を知らないと、トラブルになることはもちろん、最悪賠償請求問題に発展することもあります。
そこで、今回は旅行ライターが必ず知っておきたい業務委託契約における注意事項と、知っておくべき知識と対策をご紹介します。
旅行ライターは全員がフリーランス
旅行ライターになりたい場合、よく言われるのが「自分の名刺を作ったら、その日から旅行ライター」というもの。仕事の幅を利かせるため、旅行ライター、トラベルライターという肩書よりは、『フリーライター』とした方が何かと便利です。
その旅行ライターですが、言い換えれば全員がフリーランスとなります。フリーランスのうち、開業届を出していれば、その人は個人事業主となります。
会社に属さない旅行ライターが企業から記事の依頼を請け負うとなると、それは業務委託となるので、企業側との間で『業務委託契約』を締結する必要があります。
旅行ライターは必ず知っておこう。フリーランスと社員の大きな違い
旅行ライターは必ず知っておくべきことの1つが、「旅行ライターはフリーランスであり、会社と雇用関係のある社員ではない」ということ。
これが何を意味するのかというと、会社と雇用関係のある社員の場合は、会社との契約・規約の上位に労働法が適用されます。つまり、会社には独自の社内規約がありますが、それよりも労働法が優位にあるということです。
例えば会社側が過剰労働を社員に強要した場合は、労働法に違反しますので、社員は会社側に慰謝料や未払いの残業代などを請求することができます。このように、社員は非常に手厚い法律によって会社から守られていると言うことができます。
一方で旅行ライターはフリーランスとして企業と業務委託契約を締結するのですが、フリーランスは当該会社の労働者ではないため、上記の労働法が実は適用されません。そのため、依頼時に交わされる業務委託契約がすべてとなります。
旅行ライターが確認するべき業務委託契約の内容
しかし、フリーランスになりたてのころは、業務委託契約も書類のどこを注視すればいいのか分かりませんよね。
ただ、業務委託契約書のほとんどはA4で1~3枚程度と短いので、特定の項目だけ注視すれば問題はありません。下記には最低これだけは確認してほしい事項をご紹介します。
旅行ライターが確認するべき業務委託契約内容①:有期か無期限か
例えばクラウドワークスやココナラのようなフリーランスの仕事探しサイトで見つけた仕事は有期が多い印象です。有期契約は一週間程度から長くて1年契約が普通で、契約更新時は別途契約書を交わすか、自動更新となります。
一方で長期契約の場合は期限を定めない無期限の業務委託契約もあります。有期と無期限でトラブルに遭った際の対処方法が変わってくるので、まずはこちらを確認しましょう。
旅行ライターが確認するべき業務委託契約内容②:勤務地や納期と報酬に関して
業務委託契約を結ぶ人は、旅行ライター含めてフリーランスで活動しているので、基本的に依頼主の事務所に出向する必要はありません。
なぜなら、業務委託契約はあくまでも成果物の納品によって報酬を受け取ることができる契約なので、勤務地の定めは普通ありません。
しかし、国内旅行ライターの場合は、編集部で仕事をしなければならない、など勤務地が定められている場合がときおりあります。また、「納期に遅れたら報酬は支払わない」など納期と報酬の関連性も確認しておきましょう。
業務委託にありがちなトラブル①:依頼主の事務所で働く場合は、残業代を申請できるかも
業務委託の場合でも、依頼主との契約内容によっては、普通の社員のように依頼主の事務所で働かなければならないことがあります。この場合、よく見受けられるのが、「勤務日や勤務時間も指定されている」ことです。
「業務委託契約なのに、社員と同じ扱い」である場合、労働法が適用されて、フリーランスであっても労働者とみなされ、残業代の請求や有給休暇の取得をすることができます。
業務委託にありがちなトラブル②:有期契約の場合は辞められない可能性が高い。
旅行ライターが有期契約を依頼主と交わしたあと、「仕事量と報酬が割に合わない」、「依頼主の要求がかなり厳しい」ことによって、こちらから契約を中止したい場合もあるでしょう。
しかし、基本的に有期契約の場合は契約の中断は双方の合意がない限り認められなく、報酬を支払ってもらえなかったり、最悪損害賠償を請求されることもあります。基本的に一度引き受けた業務委託契約はどんなことがあっても全うするようにしましょう。
業務委託にありがちなトラブル③:業務終了後に競合他社への取引を禁止する
業務委託契約によるトラブルでありがちなケースがこちら。旅行ライターとしてA社と取引をして、一連の業務を終えたのち、A社の競合であるB社からの依頼を引き受けた際、A社から「業務委託契約書に“業務委託終了後2年間は競合他社からの依頼は引き受けない”と明記しています」と言われることがあります。確かに契約書を見ると、その一文が書かれています。
しかし、これはA社の契約違反となるので、旅行ライターは競合他社であっても仕事を請け負うことができます。基本的に企業は契約終了後の相手の就業先を束縛することはできません。
これは憲法の「職業選択の自由」に違反します。ただし、業務終了後に改めてA社から旅行ライターに向けて「競業避止義務規定」という契約書を交わすよう指示されることがあります。
こちらに署名してしまうと、競合他社から依頼を請け負うと、A社は損失を被ったとして旅行ライターに損害賠償請求をすることができます。
対策としては、すでにA社とは契約を終えているので、相手の顔色をうかがって競業避止義務規定にサインをする必要はありません。競業避止義務規定を求められても拒否するのが最善の策となります。
著作権の有無と販売の可否を業務委託契約書で確認する
旅行ライターにとって、記事と同じくらい大切なのが旅行先の写真。企業側と業務委託を締結する際、写真の著作権はほとんどのケースで依頼主に譲渡する形となります。これは業務委託契約書にしっかりと記載されています。
譲渡した写真は、例え自分のブログであっても使用することはできませんので、もし著作権を譲渡したくない場合は、その旨を交渉する必要があります。
また、昨今は肖像権の侵害を理由に出版社やWEBサイトの運営会社が訴訟を起こされる事案もあります。そのため、業務委託契約には「肖像権等が理由で損害を被った場合は、旅行ライターが責任を被る」ことも記載されています。
これが法的に可能かどうかはさておき、大きなトラブルの元となり得るので、使用する写真に人の顔が映り込んでいる場合は、モザイクをかけたり、トリミングをするなどして対策を講じるといいでしょう。
旅行ライターとして末永く活動するならば、最低限の法的知識は学習しておくべき
旅行ライター及びフリーランスとして長く仕事を続けるにあたって、大切なのは「依頼主と平等の契約を交わす」ことです。そのためには、最低限の法律知識は学習しておくことが肝要。
業務委託契約書をたくさん交わしていると、内容をしっかりと読まずにサインしてしまうこともあります。しかし、契約書は場合によっては諸刃の剣となり得るので、必ず要所は確認するようにして、自分でリスクヘッジを考えてください。