旅行ライターやブロガーの中で、個人事業主として依頼を受注している方は、旅行や取材にかかる費用はしっかりと経費計上していますか。今回は個人事業主として活動する方に向けて、実際の経費事情をご紹介します。
旅行ライターやブロガーにとって経費は非常に重要
旅行ライターやブロガーは、常に自分の足で国内外の数多くの観光地へ足を運ばなければなりませんので、都度かかる経費はかなりのものです。
基本的に経費は依頼主に請求しますが、仕事の多くは交通費や宿泊費、取材に伴う費用は報酬込となることが多いので、「ここ数年、経費を申請したことはない」といったフリーランスも少なくはないはずです。
一方、開業届を出して個人事業主として仕事を受ける旅行ライターやブロガーは、経費の他に年額65万円の控除を受けることができるので、これだけでも最初のうちは助かります。
また、最初の名刺や印鑑作成や取引先への接待費や移動費はすべて開業費として控除してもらうことができます(10万円以下)。案件が多くなれば、それだけ節税効果も大きくなるので、経費申請による節税は必須と言えるでしょう。
個人事業主とフリーランス。どちらがおすすめ
個人事業主とフリーランスの違いは、開業届を出しているかどうかです。いずれも経費計上はすることができるので、フリーランスでも税金をしっかりと納めている方は、移動費などの経費はあらかた計上することができます。
ただし、上述したように、開業届を出していれば、最低でも10万、最高で65万円の控除を受けることができます。
開業届を出すと、確定申告が白色から青色に代わり、複式簿記を日々つけなければならない手間はありますが、最近は簡単入力式のソフトも出ているので、それを使えば初心者でも簡単に帳簿をつけることができます。
また、個人事業主とフリーランスはどちらがおすすめなのか、という問いですが、毎月数万円程度しか稼げないうちはフリーランスでも構いません。しかし、10万、20万円と収入が増えていくようであれば、しっかりと納税をして、その分経費計上をして節税対策をするのがおすすめ。
また、現実ではフリーランスと個人事業主は開業届の有無で使い分けられますが、実際問題として、収入が発生するのであれば、開業届は出さなければなりません。
開業届を出さない人が多いのは、開業届を出さなくとも経費を計上できることと、開業届を出さないことによる罰則がないからです。
「自分は最初から少しでも税金を納めて正攻法で旅行ライターをはじめたい」と言うのであれば、最初から開業届を出して個人事業主として活動するのがいいでしょう。
ちなみに、旅行ライターや旅ブロガーが開業届を出すメリットは一見するとあまり感じられないようですが、「個人事業主だとクレジットカードが作れる」というのは大きな魅力です。フリーランスは社会的信用度がありませんので、クレジットカードはなかなか作ることができないのが現状です。
旅行ライター必須のパソコンも経費で買える
旅行ライター及び旅ブロガーにとって、最も大切なパートナーとなるパソコン。旅行ライターであれば、自宅用のデスクトップと、出先用のノートパソコンと最低2台は持っているものです。パソコンは安くても7~10万円。スペックが高いものだと20万円することもざらですね。
このパソコンは実は業務用として経費で計上することができます。ただし、一度に計上できるのは10万円以下のため、例えば15万円のパソコンを買った場合は、初年度に7万円、次年度に8万円と2年に分けて経費計上をします。
個人事業主ではないフリーランスの場合は20万円までが分割で可能で、個人事業主は30万円までが可能となります。これは「少額減価償却資産の特例」という税制に当たり、大分前から実施されていて、その都度期限が設けられていますが、毎年期限が延長されて2021年時点でも2022年まで延長発表がありました。
また、上記少額減価償却資産の特例は開業届を出している個人事業主のみが適用されますが、白色申告のフリーランスには「一括償却資産」という制度があります。
これは20万円以下の固定資産を3年(36か月)にわたって経費計上する仕組みです。30万円までいける少額減価償却資産の特例よりは金額は少ないですが、いずれも個人で働く旅行ライターやブロガーにとっては非常に使い勝手のいい優遇措置となるので、是非積極的に活用してください。
旅行ライターや旅ブロガーに認められる経費項目をすべてご紹介!
旅行ライターや旅ブロガーは、1年に何度も取材に足を運びますし、取材以外でもプライベートの旅行をする際は、半分は仕事も兼ねて行くものです。
プライベートで泊まった旅館が素敵だったので、女将さんに取材をさせてもらった、なんてことも頻繁にあります。そのような場合、「宿泊費や食費は経費で落ちないのかな?」とふと考えますね。
プライベートも兼ねた旅行では50%を経費計上しよう
上記のようなプライベートとライター業務の双方を兼ねた旅行の場合は、およそ支出した費用の半分を経費として計上することができます。
例えばお土産を買う場合、「取引先へのお土産代」とすれば経費で計上できますが、自分が消費する分としては経費はもちろんできません。このようにプライベートと仕事の2つの費用を区別した金額を計算することを、按分計算と言います。
一方で、取材や依頼主から受注した仕事のためであれば、100%経費として認められます。これは移動費や宿泊費、食費まですべて計上することができます。
ただし、例えば食費に関しては「食後のケーキはプライベートに入る」、「仕事終以外で観光を楽しんだ分の費用は経費として認められない」ことも懸念されたりと、境界線が曖昧な点も考慮しなければなりません。
あまりにあらゆる経費を100%で計上してしまうと、税務署から問題提起されることがあります。その際に業務における支出であることを証明することができなければ、危うい立場に立たされることもあることは覚えておきましょう。
ただし、領収書やレシートだけでは、税務署職員ですら業務範囲内かプライベートかは判断がつきませんので、按分を使い分けて経費計上するのが賢い節税対策と言えそうです。
家賃や光熱費も按分が可能
ちなみに家賃や光熱費も按分が可能となります。個人事業主といっても、旅行ライターや旅ブロガーのほとんどは自宅を作業場にしています。そのため、全床面積の中の作業場の割合分を按分計算して、経費計上することができます。
ただし、気を付けてほしいのは按分計算して一部を経費にあてると、多くの場合で税務署の職員が検査に訪れます。
検査では自分の作業場の割合を確かめたり、経費計上しているパソコンや冷蔵庫などを本当に作業場で使っているかを確認します。意外としっかりと検査に入られるので、虚偽申告するとばれてしまうので注意してください。
取材が多い旅行ライターや個人事業主は、必ず経費計上をしよう
取材が多い旅行ライターは、移動費と宿泊費だけでもかなりの費用がかかります。最初のうちは報酬も少ないですし収入も安定しないので、できるだけ多くの領収書を上げて赤字計上するのも1つの手。ただし、上述したように按分計算を怠ると、税務署は必ず問い合わせてくるので不正は改めましょう。