イギリスは日本と同様に右ハンドル左側通行の国です。世界的に見れば運転マナーは悪くないとも言われていますが、実際にイギリスで運転すると独自のルールや馴染みのないシステムに戸惑うことも多いというのが正直なところです。
今回は、イギリス在住者・滞在者向けにイギリスの運転事情をご紹介していきます。
覚えておきたいイギリスの交通ルール
▷速度表記
イギリス独自の交通ルールはいくつもありますが、まず日本と大きく異なるのは速度表記の違いです。イギリスではマイル(mile)が使用されており、街中は30マイル(約48キロ)、国道などの片道1車線道路では60マイル(96キロ)、高速道路などの片道2車線以上の道路では70マイル(112キロ)とされています。
日本と比べるとかなる速いスピードで走行することになります。一般道を100キロ近いスピードで走ることになりますので、慣れるまでには少し時間が掛かるかもしれません。
▷ラウンドアバウト
イギリスでの運転で戸惑うのがラウンドアバウト(環状交差点)です。特に複数車線の大きなラウンドアバウトは少し厄介ですので、必ず正しい車線を走行しましょう。
ラウンドアバウトには信号機が付いている場合とそうでない場合がありますが、いずれにせよ右側から来る車が優先となります。ラウンドアバウト侵入時に右側から車が来ていない場合には、一時停止はせずにスムーズに侵入しましょう。
むやみに止まってしまうと後続車から追突される危険があります。慣れない運転手にとっては事故発生率の高い場所ですので、くれぐれも注意して運転しましょう。
▷信号機
イギリスの信号機は縦型になっていて、赤信号から青信号に代わる際には一旦赤と黄色信号が同時に点滅して青になることを知らせてくれます。ローカルのイギリス人の中には赤と黄色信号でフライング気味に発進する人もいるのですが、これも場合によっては違反の対象となりますので気をつけましょう。
また、青信号が矢印になっている信号も多いので、自分の進行方向が必ず青信号であることを確認する必要があります。
▷横断歩道
イギリスでは横断歩道でなくても歩行者が道を無理やり横断してくることがありますので注意しましょう。
大きく分けて横断歩道には二種類があり、黒白のポールに黄色の球体が点滅しているものと、白い点線に歩行者用手押し信号付きの信号があります。歩行者が横断しようとしている場合には、必ず一時停止してください。後者の信号が点滅時、歩行者がいなければ停止する必要はありません。
気になるイギリス人の運転マナー
イギリス人の運転はマナーが良いと言えるでしょうか。筆者の個人的感想になりますが、マナーは良いとは言い難いです。走行時速が日本に比べて速いということもありますが、法定速度に対して遅めに走っている車はよく煽られ、追い越されます。
片道1車線の道路で無理やり追い越そうとしている車を見るとハラハラさせられます。中でも特に私が気になるのは、ウィンカー(方向指示器)の使用についてです。
特に国道や高速道路走行中によくあるのですが、右側から左側に車線変更する場合に、ウィンカーを使用せずに車線変更してくる車が多いのです。イギリス人曰く、「右側車線はあくまで追い越し用なのでずっと走行し続けることはなく、必ず左側車線に戻る。
そのため左側を走行している車はそれを理解しているはずだ。だからウィンカーは必要ない。」というのです。これはイギリス人同士の暗黙の了解なのでしょうが、ウィンカーを使用しなくてもいいというルールはありません。
イギリスで運転するには、このようなローカルの癖のようなものもあるということを理解しなくてはいけないようです。(ちなみにイギリスでは追い越し車線を走行し続けることは違反とされています。)車線変更時は必ずウィンカーを使用しましょう。
イギリスならではの交通違反
イギリスの免許も日本と同様に点数方式になっています。しかしながら、日本の減点方式に対して加点式になっています。
減点数は3年間保管され、12ポイント溜まってしまうと免許停止になります。悪質な違反が認められた場合には、その記録が4年から11年間残ってしまうものもあります。
イギリスならではの違反をいくつかご紹介します。
- 走行中の飲食禁止(メイク、CDの変更も含む)→£100罰金または9ポイント
- 歩行者に水溜りの水をかける→£100-5,000罰金
- 怒りに任せてクラクションを鳴らす→£30
- ドライブスルーで携帯電話を利用して支払う→£1,000罰金または6ポイント
(※携帯電話で支払う場合には、ハンドブレーキを引き、エンジンを切ること) - 喫煙(18歳以下の未成年が同乗している場合)→喫煙者、ドライバーが異なる場合にはそれぞれに£50
(※2015年10月より改正されました。)
いかがでしょうか。特に2、3番目の違反については紳士淑女の国ならではですね。イギリスでは運転中における携帯電話の使用については特に厳しくなっており、エンジンが付いた状態で携帯電話使用が確認されると罰金£200-1,000と6ポイントの両方が科せられます。
これらの厳しい違反に対して、飲酒運転については日本よりも緩くなっています。
イギリス人には欠かせないパブ(パブリックハウス)には車を運転してくる人もおり、一杯(1パイント)までなら大丈夫などと言われることもありますが、あくまでも体の大きなイギリス人に限ってのこと。
アルコール検査に引っかかると£2,500以下の罰金、免許停止、3ヶ月の禁固刑などが科せられます。飲酒運転は断固としてお勧めしません。
悪天候にはご用心
イギリスは悪天候になることが多く、特に冬場は日が暮れるのも早いので注意して運転する必要があります。
▷ヘッドライト
イギリスでは夜間でなくても薄暗くなってきたり、天候が悪かったりする場合にはヘッドライトを使用します。周りの車に合わせて早めにヘッドライトを使用しましょう。
また、霧が出ているときには「Fog lamp(霧ランプ)」の使用もお勧めです。これはブレーキランプよりも明るく、後続車からの追突を防ぎます。
▷雪・凍結
イギリスでは驚くことにスタッドレスタイヤ、チェーンの使用が禁止されています。その理由は、道路の表面を傷つけるから。筆者も驚いてしまったのですが、イギリスでは雪が降ったら車は運転できないと思った方が良いです。
主要道路に限っては、砂利と砂が撒かれるので減速して走行することは可能ですが、危険を冒すのは禁物と言えるでしょう。また、冬場に凍結などが原因でアスファルトに現れるくぼみ(Pothole)はとても危険で、イギリスでは深刻な問題となっています。
誤ってこのくぼみを走行することで車の故障や大きな事故の原因になることもありますので、発見した場合には避けてくれぐれも注意して走行するようにしましょう。
Potholeは政府専門機関に修理の依頼をすることが望ましいとされています。(https://www.gov.uk/government/publications/roads-managed-by-highways-england)
イギリスで車を借りるには
▷レンタカー
おすすめ検索サイト:VroomVroomVroom – Compare car rental
こちらはオーストラリア発祥のレンタカー総合サイトです。借りる場所や期間などから最寄りのレンタカー会社を検索すると、複数の会社を一気に比較できるので、効率よくベストな条件の車を検索することができます。
例えば、Herzの車を借りることになっても、こちらのサイトまたはアプリから予約を完了させることができるので、一つ一つの会社を自ら比較するよりも断然効率的です。
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一般的にレンタカーを借りる際に必要なものは、1.運転免許証(イギリスで運転が許可されるもの)2.顔写真付きの身分証明証(主にパスポート)、3.クレジットカードが必要です。
運転免許証については、次章「運転に必要な各種手続き」をご参照ください。また、利用者が25歳以上でないと車を借りられない、または別途金額が掛かる場合があります。詳しくは利用会社の規約をご参照ください。
▷カーシェア
イギリスでは交通渋滞の緩和、環境への配慮からカーシェアを推奨しています。利用者にとっても、環境に優しいというのはもちろんのこと、車検や保険料など面倒な手続きや無駄な経費を削減することができるのでその需要は高まっています。カーシェアには大きく分けて二種類のタイプがあります。
タイプ1.企業が所有する車をレンタサイクルの要領で借りるタイプ。
タイプ2.個人が所有している車を一時的に借りるタイプ。
おすすめアプリ1:Zipcar(タイプ1.)
イギリスではロンドンを中心に広く浸透しています。3,000以上のスタンドがロンドン、またはヒースロー空港に設置されているので、必要な場所から車を借りることができます。
ロンドン以外では、ブリストル(Bristol)、ケンブリッジ(Cambridge)、オックスフォード(Oxford)にスタンドがあります。利用に際して事前登録が必要で、プランが3つBasic(月額無料)/Smart(£6/月)/Plus(£15/月)に分かれています。
利用に際して、月額料金の他に利用料金(£3/時間~)を支払うのですが、月額料金を高く払っている方が1回の利用料金を抑えることができます。利用料金には保険料・24時間ロードサービス・ガソリン・Congestion Charge(混雑料金)が含まれますので大変お得です。
Basic(無料)プランはロンドンでの利用者に限って選択できます。長期滞在を予定している駐在員の方や学生さんは、こちらを検討してみてもいいかもしれません。(※登録には免許証が必要です。)
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おすすめアプリ2:Turo(タイプ2.)
こちらは個人所有車を一時的にレンタルするというタイプのサービスです。言うならば、Airbnbの車バージョンというところでしょうか。現在、アメリカ、カナダ、イギリスで展開しているサービスです。
こちらのサービスの利点は、車の所有者が所定の場所まで車を持ってきてくれるという“Convenient delivery options”です。これは全ての車所有者が提供しているサービスではありませんが、場合によってはホテルや駅まで迎えに来てもらえます。
こちらのサービスは事前に利用者登録し、アプリをダウンロードします。アプリから車を検索し、事前予約をしておけば現地ですぐに利用できます。そのため1.に比べると短期滞在者にも利用しやすく、レンタカーに比べてお値段も抑えられます。(※登録には免許証が必要です。)
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近年ではカーシェアに続いて、個人所有車の空席と利用者を繋ぐカープーリング(いわゆる相乗り、ライドシェアともいう)サービスも定着してきています。
こちらを利用する際には自ら運転する必要はありませんが、場合によってはUberなどよりもコストを抑えられることもあるので、検討してみてもいいかもしれません。
運転に必要な各種手続き
▷免許証を取得
イギリスで車を運転するための方法は大きく3種類あります。
まず、1.日本で取得した国際免許証を使用して運転するという方法。(有効期限に関わらず、入国から最長1年間)
次に、2.日本の免許証+翻訳証明で運転する方法。(こちらも入国から1年まで有効となり、滞在が居住者か非居住者かによっても取り扱いが異なります。)
そして、3.英国運転免許証を取得する方法。(入国から1年以上が経過する場合には、こちらの手続きが必要です。)
3.英国運転免許証を取得する方法についてご紹介します。
その1.日本の免許を書き換える方法
日本で有効な運転免許証を持っており、英国在住5年以内の人は英国運転免許庁にて書き換えが可能です。
- 手順1.「自動車運転免許証抜粋証明書」を日本大使館で取得する。
- 手順2.DVLA(Driving & Vehicle Licensing Agency)またはDVA(Driving & Vehicle Agency)に必要書類を送付し、英国運転免許証への切り替えを申請する。
(※2020年7月現在、コロナウィルスの影響により在英国日本大使館は完全予約制となっており、在留証明・居住証明・署名証明・警察証明の申請を除いて来館できません。
その他の書類申請については全て郵便対応となります。詳しくは在英国日本大使館HP https://www.uk.emb-japan.go.jp/itpr_ja/Appointment.htmlをご確認ください。)
その2.現地で免許を取得する方法
- 手順1.仮免許(Provisional Driving License)取得
- 手順2.実技講習(Practical Driving Lessons)を受ける
- 手順3.筆記テスト(Theory Test)を受ける
- 手順4.本試験(Driving Test)を受ける
上記の手順を踏んで免許を取得することになりますが、イギリスでは日本の教習所のような形で訓練を受けることができませんので、筆記テストなどは自主的に勉強する必要があります。
また、2017年以降テスト形式が変更となり合格の難易度が上がっているそうです。現地で免許取得を考えている方は、長期戦になることを覚悟なさってください。
▷車検(MOT)
イギリスでは自動車税の支払いが義務化されており、この金額はCO2排出量から設定されています。支払いは半年または1年から選択でき、郵便局やDVLA(Driving & Vehicle Licensing Agency)から支払うことができます。
こちらが支払われていない状態で運転することは違反行為となり、£80-1,000の罰金を科せられますので注意が必要です。
▷自動車保険
イギリスの保険は、「自動車総合保険(Comprehensive)」、「対人・対物賠償及び火災盗難(Third Party, Fire & Theft)」、「対人・対物賠償(Third Party Only)」と大きく分けて3つあり、対人対物保険が強制加入となります。
2011年の法改正により、全ての車に対して保険の加入が必要となりました。普段使用せずに保管してある場合や故障車に対してはSORN (Statutory Off Road Notification)という手続きをする必要があります。
イギリスの保険は、日本のように車に対して掛けるのではなく、車と運転者の両方に掛けられますので、他人の車を運転することはできません。例えば、同一の車を夫婦で使用する場合には、二人分の保険料を支払わなくてはいけないことになります。
保険会社によっても料金は様々ですが、中には夫婦割引などを設けている会社もありますので、プランを比較して適切なものを選びましょう。こちらのサイトから車のナンバープレートを入力し、保険の加入状況を調べることができます。(http://www.askmid.com/)
事故や故障が起きたら
▷ロードサービス
代表的保険会社ですと、「RAC」、「AA」、「Saga」などがあり、個人的には「AA」を利用しています。実はちょうど先日お世話になったところなのですが、オペレーターの対応もよく実際に修理してくれたスタッフもとても親切でした。
故障した車を修理に持っていこうとしたところバッテリーが上がって動かなくなってしまいサービスを依頼しました。バッテリーをジャンプスタートしてくれればいいと思ったのですが、事情を説明すると親切にも不具合を確認し、パーツの交換が必要だと分かるとすぐにパーツを手配してくれて交換までしてくれました。
加入しているプランに修理代は含まれるので、パーツの代金だけでいいとのことでなんともラッキー。想像以上の対応に感激しました。
▷事故の対応
事故が起きたらまずはお互いの安全を確保し、お互いの連絡先と保険会社を控えます。イギリスでは大事故や人身事故でない限り警察への届けは必要なく、保険会社にいち早く連絡します。
大きな事故の場合には、「999」にダイヤルします。これが総合緊急番号となっており、「警察(Police)」、「救急車(Ambulance)」、「消防(Fire)」の必要なサービスを依頼します。近くに目撃者がいる場合には、証人になってもらうとよいでしょう。
まとめ
いかがでしたか。イギリスでの運転は、日本と似ているようで違いもたくさんあります。初めて運転する方はルールをしっかり理解した上で、無理のないように安全運転を心がけましょう。
イギリス国内には美しい遺跡や大自然を満喫できる場所がたくさんあります。お出かけの際には、是非とも郊外まで足を運んでみてはいかがでしょうか。どうぞ快適なドライブをお楽しみください。