トラベルライターになることを考えた場合、日本国内在住のライターとして活動するか、もしくは海外在住ライターとして仕事を請け負うかを決めることからはじめます。
日本国内在住ライターの場合は、主に国内案件をこなすこととなります。もし海外案件を欲しい場合は、出版社や編集プロダクションと長く付き合い、海外在住ライターよりもいい仕事ができると証明及び信頼を勝ち取る必要があります。
もし海外各国を渡り歩きながら記事を書く生活をしたいのであれば、最初から海外在住ライターとして現地に移住するのがいいでしょう。そこで、ここでは海外在住ライターとして活躍するための移住先の選び方をご紹介します。
第一印象や自分の好きな国という理由で決めるのは危険
滞在国を決めるさいは、トラベルライターの仕事をする上で有利となる国を選ぶようにするのが大切。単に「最初に行った海外で印象に残っている」、「自分の好きな国」という理由で決めてしまうと、現地でトラベルライターとして活動しようにも全く仕事がなかったりと問題続きの滞在となる可能性があります。
日系企業数及び日本人旅行者数を調べよう
まず調べておきたいデータの1つが「日系企業数」です。現地に進出している日系企業が多ければ多いほど国同士の国交が盛んに行われている証拠なので、日本人が滞在する際はビザやレジデンスカードの面で優遇されることがあります。
日系企業数は当該国の日本の商工会議所や帝国データバンクのホームページから調べることができます。欧米では200~500以上、アジアでは1000以上の企業数が進出している国は非常に有望です。
一方、併せて確認しておきたいのが日本人旅行者数。こちらはトラベルライターとして活動を続けるにあたって、非常に重要なデータとなります。
日本人旅行者数が多い国であれば、それだけ旅行会社やトラベルガイドブックを出版する出版社、編集プロダクションからの依頼も比例して増えます。逆にニッチな国や都市に暮らしてしまうと、いつまで経っても仕事の依頼が来ない、なんてこともあります。
例えばアジアの中でもラオスやミャンマーといった国はタイやシンガポールと比べて日本人旅行者数は数分1程度しかありませんので、それだけ旅行記事案件も少ないです。
ただし、このようなニッチな国・都市の場合は現地に在住の日本人も少ないため、もし案件が来たら総どりすることができる可能性もあります。
実際そのような考えのもと現地でビジネスをしている日本人は少なくなく、旅行記事の作成の他、現地のアテンド、市場調査、翻訳、ツアーの催行などを掛け持ちして個人で会社を運営している人もいます。
ネットでライターの求人の有無を探す
まずは日本にいるうちから、ネットで現地のライター職としての仕事があるかを探してみるのも重要なポイントです。
日系企業が多く進出している国・都市であれば、現地の企業が自社HPの記事投稿の仕事を求めていることもあるでしょうし、当然その中には旅行会社も顧客として期待することができます。
現地の旅行会社から仕事を引き受ける場合は、ツアーに参加して写真撮影や旅程の紹介をしたり、自社HPのブログ投稿、提携しているレストランやスパの紹介記事などが主な仕事となります。
また、日本人が現地に多く暮らしている都市であれば、現地在住者向けにフリーペーパーを発刊している会社もありますので、そういったところにも売り込みをかけるのも効果的です。
ライバルは駐在員奥様であることを認識しよう
トラベルライターとして記事の執筆を本業としている海外在住者は実はそれほど多くはありません。
例えば年間80万人の日本人観光客が訪れ、現地に2000社以上の日系企業が進出し、2万人以上の日本人が暮らしているベトナムであっても、「ライターが本業です」という人は5人といません。
つまり、トラベルライターのライバルは同業者ではなく、同じ地域に住む駐在員奥様ということになります。駐在員奥様は美味しいグルメ処を知っていますし、生活に余裕があるため高級レストランやホテルに泊まってレポートしたりすることができるので、旅行会社としても重宝しています。
その代わり、遠出をすることができないので、「どこの地域にも取材に行きます」というトラベルライターの機動力をいかに活かせるかが肝となることは覚えておくといいでしょう。
リゾート地及びリゾートアイランドへの移住はリスクが高い
フィリピンのセブ島、マレーシアのボルネオ島、ベトナムのダナン、インドネシアのバリ島……、これらは日本人に高い支持を持つ人気のリゾート地及びリゾートアイランドとなります。
「南国バカンスのこの地に住むのが夢だった」と安易にこれらの都市へ移住してしまうと、大きなトラブルを抱えることになるかもしれません。
トラベルライターとして仕事が軌道に乗るまでは、多くの人は現地の一般企業に就職したり、フリーランスで日本企業から旅行以外の仕事を引き受けながら生計を立てるのが普通です。
しかし、上記のようなリゾート地の場合は、現地で日本人が求められる職というのは、旅行業か日本語講師のどちらかとなります。いずれも生活するには給料が安いですし、倍率も多いためなかなか就職することができないのが現状にあります。
一方で都市部であれば旅行業の他、営業職や事務職、工場長といったさまざまな職種が求人にあるので、最悪選ばなければ職に就くことができます。
軽く考えてはいけない「食文化」
海外滞在先を決める重要な要素として「食事」で決めるのは実はおすすめの方法。憧れのバリ島に住んでみたはいいけれど、「インドネシア料理がクセがありすぎて食べられなかった」と帰国を余儀なくされる人もいるほど。
毎日の食事は食堂や屋台で食べることになるので、旅行者が行くようなレストランで食べられる洗練された料理は出てきません。東南アジアの料理は保存をきかせるために多量の油で料理をする傾向にあるので、それが嫌だ、という人もいます。
もちろん現地では日本食料理店もありますが、値段は高く、物価安のアジアであっても一食800円以上覚悟しなければなりません。毎日日本食を食べるわけにもいきませんので、現地食に慣れなければそこに住むことはかなり困難であることは肝に銘じておくといいでしょう。
ビザが取りやすい国に滞在する
外国人が海外で暮らす場合は、滞在許可証となるビザの取得が必要となります。旅行では数日から十数日の短期間のため、日本人は多くの国でビザが免除されますが、1か月以上滞在する場合は、基本的にほとんどの国で何かしらの滞在ビザを取得しなければなりません。
ビザの種類は観光ビザやビジネスビザ、配偶者ビザなどがあり、国によって種類、期間、取得方法は異なります。調べるときは現地の大使館・総領事館のホームページだけではなく、現地在住者のブログなどにも情報が記載していることがあります。
新規ビザの取得方法はもちろん、更新方法も併せて調べておくといいでしょう。自分でビザの取得・更新が難しい場合は、現地の代行業者に依頼するのも1つの手。
実際多くの人は3か月程度の観光ビザを更新して現地に滞在していますが、更新する際は一度国外に出国しなければならないなど、その国独自のルール・法律があることに注意が必要です。
仕事が軌道に乗ったら世界を回れる
トラベルライターとしてその国に半年ほど滞在して仕事をこなしていると、写真のストックも1万枚以上溜まってきているはずです。写真さえあればあとは自分の経験で書くことができるので、通常の観光記事の作成に都度取材をする必要はありません。
つまり、滞在国・都市を移すことができるようになりますので、憧れの「世界を渡り歩きながら収入を得る」トラベルライターの醍醐味を体験することができるようになります。出鼻をくじかれないように、最初の滞在国はしっかりと吟味して決めてください。