皆さんはイギリスを訪れたことがありますか?イギリスで有名な観光都市といえば、伝統と世界最先端の文化が共存する街、首都のロンドンです。
その一方で、地方都市には豊かな自然が溢れ、優雅でのんびりとした良さがあります。この国は数多くの映画や小説の舞台にもなっており、一度は足を運んでみたいと思う方も多いのではないでしょうか。
そんなイギリスですが、治安はいかがでしょう?
2017年の犯罪発生率(警察における認知件数を10万人当たりに換算した件数)を英国(イングランド及びウェールズ)と日本で比較すると、殺人が1.6倍、強盗が87倍、侵入盗が11倍となっており、英国における犯罪発生率は日本よりも高いことが分かります。
また、ロンドン市に限っても、2017年の犯罪発生率(同)を東京と比較した場合、殺人が3倍、強盗が128倍、侵入盗が20倍となっているほか、2018年に入っても、ギャング間の抗争に端を発した事件が相次ぎ、また、6月10日現在で、既に74件の殺人が発生していると発表されており(東京の2017年の殺人発生件数は1年で99件)、国を挙げてギャング・バイオレンス対策が講じられている状況にあります。
<上記、外務省ホームページより抜粋>
このように、日本と比べると自信をもって安全な国であるとは言い難いのが現状です。イギリスに限ったことではありませんが、海外を訪れるということは刺激的でプラスも多い反面、危険な目に合う可能性もあるということも十分理解しなくてはいけません。
私は、空港で地上勤務をしておりますが、イギリスで働き始めてからパスポートの盗難にあったというお客様の多さに大変驚きました。一つのトラブルにより、海外でのせっかくの思い出が台無しになってしまいます。
安全で快適な旅を楽しむためにも、渡航前には十分危険への対処法や危険回避について準備をしておきましょう!
旅行者の主な被害例
では、実際に旅行者がどんな犯罪に巻き込まれているのか見ていきましょう。
(1)盗難(スリ・置き引き)
ロンドン中心部など、人が密集する観光地や人混みでは、このような盗難被害が相次いでいます。これは単独犯だけでなく、複数人でのグループ的な犯行も行われています。
故意に体に触れて気を引いたかと思えば、別の者がカバンから財布を抜き取るといった手法で巧みにスリを行う。基本ではありますが、人混みではカバンは前向きに持ち、中身が見えるようなタイプのカバンを利用するのはなるべく避けましょう。
(2)スクーターギャング(路上強盗、ひったくり)
2016年頃からスクーターを利用したひったくり被害、その名も「スクーターギャング」による被害が急増しています。携帯電話や財布、パソコンや腕時計など日頃から私たちが身に着けている小物を狙っており、日中であっても構わずに犯行が行われます。
皆さんは、観光地で写真を撮ることに夢中になってしまうことはありませんか?買い物後に財布を手に持ったまま店を出たりはしていませんか?
観光中は少し浮かれた気持ちになりがちですが、油断は禁物です。貴重品は常に肌身離さず、カバンはしっかり抱えて持ちましょう。
(3)デートドラッグ(性犯罪)
これは特に女性の旅行者が気を付けたい被害です。旅行者の女性などを狙って、「一杯おごるよ。」などと言葉巧みに誘い出し、飲み物に睡眠薬などを入れて連れ去る。
そこから盗難事件に発展したり、最悪の場合には性的暴行が発生したりしています。旅先では、開放的な気持ちになりがちですが、知らない人と飲みに行くなどの行動には想像もできないような危険が待っていることも…。
イギリス人は紳士的な人が多いのは事実です。しかしながら私の経験上、イギリス人は比較的シャイな人が多い印象です。なかなか初対面でデートに誘うような大胆な行動をする人は多くありませんので、そんなお誘いにはくれぐれもご注意を。
(4)空き巣、強盗
これは旅行者というよりは在住者に向けた注意ですが、家を留守にする際は留守であることを知らせない工夫をしましょう。イギリスの多くの家では、様々な防犯対策が取られています。
光や音が鳴るような防犯装置を設置するのがいいでしょう。家の門はしっかりと施錠すること。そして窓から貴重品などが見えないように配置に気を付けることは日頃から注意しておきましょう。
長期で家を空ける場合には、家族や隣人にハウスシッターを頼むのも得策です。
おすすめ安全対策
では実際にこのような軽犯罪にはどのような対策をすればいいのでしょうか。
―ホテルから出る前に気を付けたいこと
外出前に荷物を仕舞う。残念ながら、ホテルの部屋からモノが盗まれてしまうケースもあります。特に貴重品などは必ず金庫、またはスーツケースに仕舞ってしっかりと鍵をかけることをお勧めします。
出かける際は、荷物はなるべく最小限に抑え、派手な服装は避けましょう。特に冬場は特にシックな服装を選ぶのが良いでしょう。派手な色の服は観光客であることのアピールになってしまいます。
―路上にて気を付けたいこと
現金は最小限に。クレジットカードを活用しましょう。イギリスは、カード社会ですので少額でもカード払いが可能です。そのため現金を多く持ち歩く必要はありません。カバンはしっかりと閉まるタイプのものを使用しましょう。
ポシェットタイプのカバンは紐の部分を切られることがあるので、コートの下に背負うのをお勧めします。路上でしつこく話し掛けてくる人は無視するのがいいでしょう。
夜間は一人で歩かないこと。ロンドンのような賑やかな街であっても、一本路地を入ると真っ暗なんていうこともります。夜間の移動はタクシーを利用する方が安全です。
―ATM、カードリーダー利用の際に気を付けたいこと
これらの機械を利用する際は、背後に注意。暗証番号を押す際には、手元を隠す習慣を付けましょう。私は海外に暮らしているうちにこれを学びました。
ATMなどは暗証番号のスキミング被害もあり、変な機械が取り付けられているなんていう場合も…。ATMを利用する際は、なるべく大手銀行や大通りに面した場所に設置されているものを利用しましょう。
イギリス人直伝、日本人が海外で変えるべき3つの意識習慣
これは元警察関係者のイギリス人から助言されたことです。彼は日本を何度も訪れたことがあり、日本の治安の良さを理解しているからこそ、私たち日本人が持つ当たり前の感覚には少し不安要素があると言っていました。
―「盗まれない当たり前」を「盗まれるかもしれない当たり前」に変えよ
日本では、カフェやフードコートなどで席を確保するために荷物を置きっぱなしにすることがありますが、海外ではもちろん御法度の行動です。公共のパブリックスペースでは、常に誰かが狙っているかもしれないという意識を持ちましょう。
私はカフェなどで、「トイレに行きたいので、私の荷物を見ていてくれませんか?」と言われることがありますが、「あ、なるほど。日本では無言でトイレに行くのが普通だな。」と気づかされました。
日本人は自分たちが普段どれだけ平和な環境にいるか全く気づいていないと言われることがありますが、その通りかもしれませんね。
―「このくらいなら大丈夫」は、誰にとっての「このくらい?」
日本ではガラスが割られるなんて日常では滅多にない光景ですね。残念ながらイギリスでは珍しいことではありません。(※もちろん地区や地域にもよります。)
普段皆さんは買い物をはしごする際に、車内の買い物袋を隠して車を離れていますか?イギリスでは、車の外から見えるところにモノを置いておくのは御法度です。それはたとえ少額の硬貨や野菜の入った買い物袋であっても同様です。
私たち日本人は、「£2くらいなら大丈夫」、「どうせ中身は野菜だし」こんな気持ちになりませんか?強盗犯にとっては、「たとえ£2であっても」なのです。
警察に寄せられる被害相談には、盗られたものの被害額よりも車のガラス修理代の方が高くつく、そんなこともよくある話だそうです。
―「ロックしているから大丈夫」を「ロックしていても盗られる」と考えよ
彼が日本を訪れた際に驚いたことの一つに、「駐輪場」があったと言います。日本では自転車に簡易的な鍵をして放置しておける。そんな光景は何とも衝撃的だったとか。イギリスでは、「バイク(自転車)はロックしても盗まれる。
可能な限り、頑丈な駐輪スペースにしっかり固定して保管する、もしくは家の中に入れるように。」これが基本です。盗難自転車が返ってくることは奇跡に近いのだそう…。
これは自転車に限った話ではなく、「鍵をかけたから大丈夫。」ではなく、「果たして完全な対策がなされているだろうか。」と疑いを持つことは大切なことかもしれません。
パスポートを紛失したら
実際にパスポートの盗難にあったという人に多数会ったことがあるので、紛失や盗難にあった際の対処法や手続き等についてまとめていきます。まずは慌てずに、落ち着いて対処していきましょう。
可能な手続きは2つあります。まず、帰国が迫っていてパスポートが早急に必要な場合には、「帰国のための渡航書」という仮の渡航書類を作成します。長期滞在や帰国までに時間の余裕がある場合には「パスポート再発行」となります。
基本的に帰国が1週間以内に迫っていて、既に飛行機を予約している状態であれば、「帰国のための渡航書」を発行することになります。
盗難にあったら、近くの警察署で「盗難証明証」を発行してもらう必要があります。しかしながら、ロンドン中心部などの警察署では発行してもらえないこともあります。
まずは、ロンドンにある「在英国日本国大使館」に連絡をして指示を仰ぎましょう。(※連絡先については、下記参照。)
【必要書類】
- 紛失一般旅券等届出書
- 写真(2枚)※パスポート既定サイズのもの
- 警察等からの盗難届出証明書 ※紛失の場合は不要。警察署での発行ができない場合には、オンラインでの申請となります。この場合は、リファレンス番号を控えておきましょう。
- 戸籍謄本または本籍が記載された住民票の写し ※旅券のコピー、免許証は不可
- 手数料
- *法定代理人の同意書 ※申請者が未成年の場合のみ
「パスポート再発行」は上記に加えて - 一般旅券発行申請書
「帰国のための渡航書」は上記に加えて - 渡航書発給申請書
- 帰国便が確認できるEチケット控え
上記が、それぞれ必要となります。パスポート再発行の場合には、申請受理日の5日後(土日・大使館の休館日を除く)となります。渡航書においては、即日発効となりますが、審査に数時間掛かります。
あくまでも帰国に際しての渡航許可書となりますので、日本へ直行便で帰る場合、または経由地に入国しないで日本へ帰国することが条件となります。いずれにせよ、申請者本人が大使館に足を運ぶ必要がありますので、紛失後には大使館に相談することをお勧めします。
【英国大使館(Embassy of Japan in the UK) 情報】
TEL: 020-7465-6500(大使館代表)、020-7465-6565(領事班、24時間自動案内)
FAX: 020-7491-9348(大使館代表)、020-7491-9328(領事班代表)
住所: 101-104, Piccadilly, London, W1J 7JT, U.K. (最寄り駅Green Park 駅またはHyde Park Corner 駅)
受付時間(領事班): 月~金曜 09:30~16:30
休館日: 土~日曜、英国の祝祭日と一部の日本の祝祭日
快適な旅行を楽しむためには、マイナス面にも目を向けておきましょう
イギリスの軽犯罪が多いという背景には、国の政策が関係しているそうです。イギリス(イングランド、及びウェールズ)では2010年から警察数を大幅に減らし、それに掛かるコストを削減するという政策がとられてきました。
要するに警察は、本当に必要な場所を選んで出動しなくてはいけません。そのため、軽犯罪は後回しにされてしまうというのが現状です。これは、警察関係者にとって本当に心苦しいのだとか…。
旅行に出かける際は、その国の魅力やプラスの部分にばかり目を向けてしまいがちですが、危険への対処法や国の情勢などは絶対に知っておく必要があります。
どんな地域が危険なのか?国内の情勢はどうか?暴動やデモなどは起きていないのかなど、訪れる国で何が起きているか事前に調べておくことが危険回避の第一歩と言えるでしょう。
渡航前には外務省の「たびレジ」登録をお勧めします。留学やワーキングホリデー、駐在など長期の滞在になる方は、在留届を提出しましょう。ここに登録しておくと、出発前の安全情報や現地の最新情報を手に入れることができます。
また、万が一現地で事件や事故に巻き込まれた際に日本の家族へ連絡が入るようになっています。同じく在留届を提出すると、現地の大使館から様々な最新情報を入手することができます。
<外務省ホームページより引用>
現地で本当に危険な事件や事故に巻き込まれてしまったら、迷わず警察へ連絡しましょう。ちなみに、イギリスで警察を呼ぶ際には「999」(警察または消防)または 「112」、緊急でない場合には「121」にダイヤルを。
今回はたくさんのマイナス面をご紹介しましたが、イギリスの全てが危険に満ち溢れているというわけではありません。私もイギリスに暮らしていて危険な目にあったことはありませんし、人々は基本的に親切な人が多いです。
国内の至る所に歴史や文化が溢れ、魅力的な国であることは間違いありません。皆さんの貴重な旅を充実したものにするためにも、事前準備をしっかりと済ませ、安全安心のひと時をお過ごしください。