一昔前までは、フリーライターとして活動するには出版社や編集者の勤務経験やコネが必要でしたが、昨今は旅行ライターを中心に未経験でこの業界に飛び込む人が増加中です。そこで、今回は未経験のフリーライターが旅行ライターで生活をする秘訣・方法をご紹介します。
フリーランスのライターはコネが必要だった時代もある
そもそも、ここまでITが発達していない2000年代初めまでは、フリーランスでライターとして働くためには、出版社や編集プロダクションへの勤務経験がなければ務まりませんでした。
出版・編集業界で最低でも数年間スキルと知識を養い、その間にコネを作っておくことが必要となり、フリーライターに転身したら、過去に付き合いのあった取引先や勤務先から仕事案件を引き受ける、という流れが常でした。
現在でも出版社や編集プロダクションに自分を売り込むときには、「もともとこの業界にいたの?」とほぼ100%の確率で質問されますし、まったくの未経験で旅行ライターになった、というと、皆さん驚かれます。
2010年代以降は未経験者でも旅行ライターに就職できる時代が到来
2010年代以降になると、IT化が進み、旅行・観光及びそれ以外の業界もごぞっと旅行記事をネットにアップするようになり、旅行ライターの需要が急激に増加しました。
出版業界未経験の人でも、旅行ライターとして活躍する機会が増え、ブロガーやインスタグラマー、海外在住者は特に重宝される存在となりました。また、パソコン1つで生活をするノマドワーカーが増えたのも2010年以降となります。
コネなし未経験の旅行ライターが用意するもの
まったくのコネがない未経験者が旅行ライターの業界でやっていくためには、まず最低限必要なものがあります。どれか1つでも欠けてしまっては成功への道から遠ざかってしまうので、必ずすべて準備するようにしましょう。
一眼レフorミラーレスのカメラ&広角レンズ
もちろん旅行ライターと名乗るからには、スマホで写真撮影をするわけにはいきません。近年はスマホのカメラスペックも高機能になってきましたが、センサーサイズが小さいので、どうしても解像度は高くありません。
また、一眼レフもしくはミラーレスは必須ですが、レンズに関しても10~12mmの広角レンズは最低でも必要となります。広角レンズは屋内施設を撮影するために使用し、料理などの写真は単焦点かマクロレンズで撮影するので、こちらも行く行くは揃えなければなりません。
職務経歴書&ポートフォリオ
履歴書と職務経歴書は兼用しても問題ありません。過去の実績というよりは、自分がどのような社会人人生とキャリアを築いて今に至るのかを記述するようにしましょう。
企業としてはフリーランス(会社を持たない個人)に依頼するのは相応のリスクがあると考えるので、自分を信頼してもらうための手段として、職務経歴書を作り込みましょう。
ポートフォリオは旅行ライターとしての実績部分となります。ただし、場合によっては職務経歴書は不要でポートフォリオのみ企業に提出することも多いため、最初の冒頭に簡単な職務経歴を400文字以内に挿入してみるのもおすすめです。
パソコンでインストールするべきソフト・アカウント
パソコン一台で旅行ライターを始めることができるので、初期費用は安く済みますが、全くの無料というわけにはいきません。
- チャットワーク※タスク管理ツール
- DropBox※クラウドにデータを保存
- Zoom※ビデオ会議ツール
- サーバー&ドメイン代※自身のホームページ維持費
- Facebookアカウント
最低でも上記は必ず準備しておいてください。チャットツールはチャットワークとスラックを好む企業が日本には多く、チャットワークは7グループまでしか登録できなく、それ以降は有料となります。DropBoxはGoogleDriveでもかまいませんが、こちらも無料で保存できる容量はすぐにオーバーしてしまうため、年間契約が必要となります。
未経験者はネットを駆使して自分を売り込む。旅行ライターとしての基盤を築く
未経験者が旅行ライターとして最短で成功=ライター一本で生活するためには、最初の数か月間は「案件を受注するのではなく、自分を売り込むために時間を使う」ことが大切です。
とはいえ、飛び込み訪問をする必要はなく、すべてネット上で終えることができるのでご安心ください。
旅行ライターを求める企業のリストを作成
未経験の旅行ライターは、まずは自分の記事をどのような業界が求めているのかを知る必要があります。Excelでかまいませんので、旅行ライターの記事を募集している企業リストを作成するといいでしょう。リストにするのは企業名と担当者名、問合せアドレスのみでかまいません。
あとは自分を売り込む定型文を作って一斉送信するだけ。飛び込み系の問い合わせメールであっても、編集プロダクションであれば無碍にすることはありません。
すぐに案件は来ないかもしれませんが、旅行関連の編プロであれば、こちらが送ったポートフォリオは保管しておいてくれて、必要なときに連絡をしてくれることでしょう。
記事単価(報酬)を決める際の注意事項
未経験の旅行ライターの中には「自分は経験が少ないから、安く請け負う」という人もいます。もちろん、最初のうちはポートフォリオを埋めるために、相場よりも安い報酬に設定した方がいいかもしれません。
しかし、あまり安請け合いしてしまうと、結局自分の首を絞めることになることも覚えておいてください。
サラリーマン時代であれば、業務量が少なくとも、多くとも給料は一定ですが、フリーの旅行ライターは、自分でこなせる仕事量には限界があるため、少ない報酬でたくさんの量の旅行記事を請け負ってしまうと、収入が目減りしてしまうこともよくあります(高額な案件を請け負う時間がなくなるため)。
最初の内は記事単価を安く設定するのも有効ですが、ある程度仕事が増えてきたら、受注できる金額ではなく、自分が求める単価に切り上げていくのも旅行ライターとして生活基盤を築く重要な要素となります。
行動範囲(執筆範囲)を広げる
旅行記事だけに特化しようとすると、実は需要は思ったほど伸びません。贔屓にしている依頼主から2~5社ほど毎月安定して案件を受注することができても、月の報酬は20万円そこそこで限界が来てしまいます。
そのため、さらに収入を安定・増加させるためには、旅行業界を深堀するよりも、取引する業界の範囲を広げる方が効率良く、可能性も高いといえます。
例えば海外在住者であれば、現地の市場調査の記事(レポート)を請け負ったり、政治経済の記事執筆も引き受けたりするのは非常に有効です。
未経験旅行ライターが誤解しがちな記事品質の考え方
行動範囲に関しても、「私はタイに特化したライターです」というよりは、「タイとシンガポールをメインに、マレーシアやインドネシアなど東南アジア圏の記事全般を書くことができます」とアピールした方が、出版社や編集プロダクションとしても案件を回しやすいことが言えます。
記事の品質は相手の要望を満たすことだけを意識
「行動範囲を広げたら、専門性が薄れて、記事の品質が低くなる」、「相手の期待以上の品質の記事を書いて、満足してもらう」という考えもありますが、実は、これは未経験の旅行ライターが勘違いをしている代表的な例となります。
旅行ライターが最も大事なことは、「相手が求める品質をぎりぎりクリアする記事の執筆」です。記事というのは、読み直す度に修正項目があり、校正のキリがありません。1本の記事に時間をかければ、それだけ時間給で報酬が目減りしてしまいます。
依頼主が要望する記事をどれだけ短時間で納品するかが旅行ライターとして大成するか否かの分かれ道だと考えることができます。依頼主にとっては「納期>品質」であることを旅行ライターも覚えておかなければ、独りよがりの仕事スタイルになってしまいます。
未経験の旅行ライターでも1年未満で生活の安定化を図れる時代に
フリーのライターと言えば、常に案件に飢えていて、収入はサラリーマンよりも低いというイメージもあるかもしれませんが、それは90年代の昔の話。いまはパソコンを駆使して、うまく効率よく立ち回ることができるならば、1年待たずして旅行ライターとして生活の安定化を図ることができます。
旅行ライターに転身することを考えている未経験者は怖がることはありません。サラリーマンの平均月収ほど稼ぐまでは、そう時間はかからないことでしょう。