フリーライターとなり旅行記事を請け負うようになったら、依頼主との間で交わす契約(書)についても注意を払わなければなりません。契約内容によって収入はプラスにもマイナスにもなり、時には報酬を支払ってくれない、なんてトラブルもあります。ここでは旅行記事を契約する際の注意事項をご紹介します。
旅行記事問わず、記事依頼全般に共通することがほとんどなので、中堅のライターも是非再認してください。
ライターが記事を執筆する前に取り交わす契約とは
フリーライターが個人や企業といった依頼主から旅行記事の執筆を請け負う際は、業務委託契約書や記事執筆にあたっての条件などを書面にて署名する必要があります。
クラウドワークスやランサーズといったアウトソーシングのマッチングサイト経由であれば、一旦報酬はサイト上でプールされるので、支払い自体は安心できます。
旅行記事を執筆する前に書面上で取り交わす契約とは、主に「記事の書き方」、「報酬&納期」、「著作権」となります。
ライターの記事は請負契約となる
まず、契約をする前提として覚えておきたいのは、フリーライターが依頼主から記事の執筆を請け負うのは、「請負契約」に該当します。請負契約の場合は、「旅行記事の執筆及び完成後の納品」までが契約となりますので、納期に間に合わなく、「半分書けたので報酬は半分で構いません」というわけにはいきません。完成品の納品ができなければ、当然依頼主から一切の報酬は支払われません。
また、請負契約の場合は、記事の品質と結果(SEOで順位が上がらないなど)を理由に、依頼主が報酬を支払わないことは違法になります。ただし、契約書の書面に「所定回数の記事の修正」の記述があれば、ライターはそれに従わなければなりません。
記事の修正の有無は絶対に注意して
依頼主によっては、自分の理想の記事内容をとことん追求する担当者もいて、記事を納品後にも何度も繰り返し修正を要求してくることもあります。
ライターにとって記事の修正は非生産性がかさむだけなので、極力ゼロにしたいところです。旅行記事を契約する際は、記事の修正は「最低でも2回まで」、「事実と異なる情報は修正、それ以外は1回まで」、「誤字脱字のみ修正」、「納品後の編集権限は御社に譲渡するため、御社編集者にて修正願います」などと、自分の中での許容範囲を決めて契約するといいでしょう。
ただし、WEB記事の場合は依頼主側に編集者がいないことが多く、納品された記事をそのまま公開するなど、完成形を求めてくることが多いです。そのため、記事の修正を断ると、契約を反故される可能性もあるので注意してください。
ライターの著作権は記事も写真も譲渡が基本
依頼主に納品した旅行記事の著作権は、記事と写真ともに譲渡するのが基本となります。いったん譲渡してしまうと、その記事を依頼主側で勝手に修正・編集することもできますし、添付した写真を再利用したり、第三者に転売することも可能となります。
また、写真には自分が撮影したことの証明として「Ⓒ~」とクレジットを挿入することもできますが、譲渡してしまうとこちらも許されません。
一度譲渡した記事や写真は、自分のブログであっても使うことはできません。
譲渡した写真にまつわるありがちなトラブル
ライターにとって、記事と写真はセットで納品するのが現状の常ですが、旅行記事の場合は、記事に合致する現地の写真を取材・撮影しなければなりません。しかし、記事に適用できる写真がない場合は、商用利用可能の素材サイトの写真を挿入するケースも決して珍しくなく、ほとんどのライターは年会費を払って写真素材サイトに登録しています。
しかし、ライターが挿入した素材サイトの写真を、誤って依頼主が転売をしたり、自社のクレジットを挿れてしまうことがあります。特に転売してしまうと、素材サイトとの間で賠償問題に発展する可能性もありますので、記事の契約時に素材サイトの写真の利用の可否を明記することと、記事毎に「ライター撮影写真のみを使用」などと記述することによって、上記の問題を避けることができます。
ライターが知っておくべき源泉徴収税を避ける方法
依頼主の中には、源泉徴収の10%を報酬から差し引くことを条件にしているところも多くあります。源泉徴収を差し引かれない方法は幾つかありますが、いずれも依頼主に協力してもらう必要があります。
最も簡単な方法は、「WEBのコーティング」、「著作物に当たらない」、「データの提供」といった形で毎回請求書を送ると、依頼主は源泉を徴収する必要がなくなります。ただし、依頼主の税理士によっては、それを許さないとする会社も多いので、その場合は諦めて源泉を払ってください。
納品した自分の記事が訴えられる場合
フリーライターであれば、誰もが不安になる「著作権の侵害」。例えばコピペしてしまった記事を納品して、元々の著者が納品先の企業を訴えた場合など。
基本的に自分の記事の著作権はすでに依頼主に譲渡しているので、元々の著者と納品先企業が法廷で争うことになり、ライターはその後依頼主から損害賠償を請求されることになります。ただし、イラストやロゴのような象徴的・視認性の高い作品であればまだしも、実際問題、自分の書いた記事で法的に賠償しなければならないケースはほとんどありません。
というのも、賠償請求ということは損失を被ったことで初めて請求されるものとなり、文章をコピペされたからといって、著者に損害が発生するとは考えにくいものがあります。
ただし、コピペが依頼主に発覚して、それが原因でSEOが著しく下がってしまった、といった場合には依頼主から直接賠償請求が来るかもしれません。しかし、これも自分の記事が原因でSEOが下がった証拠を依頼主が証明することはできませんので、実際、依頼主が法的に損害賠償をライターに請求することはほぼ不可能となります。もちろん依頼主はそれを知っていても、示談金を払ってもらいたいために、損害賠償を請求してくることでしょう。
コピペしたライター本人に責はありますが、トラブルが起きた際にそなえて、賠償請求絡みの法律は一通り確認しておくようにしましょう。
ライターと出版社の印税契約の注意点
出版社を通して自著を出版することになったライターは、必ず印税契約書を締結することになります。書面には、初回原稿料、印税が発生する条件、契約期間などが記載されています。
旅行ライターが依頼を受ける自著というのは、その多くは旅行情報やビジネス情報となり、いずれも数万部単位で売れるジャンルではありません。
そのため、ほとんどの書籍は初回原稿料がすべてで、印税は1年に1回、数千円から1万円程度と考えてください。場合によっては、「印税を放棄する代わりに原稿料を上乗せ」といった条件を出版社側に交渉するのも1つの方法です。出版社側が当条件を呑むか否かは、その書籍にどれだけの将来性を期待しているかに依るでしょう。
ライターの記事契約。自分の身は自分で守ろう
個人事業主であるフリーライターは、誰も守ってくれる人がいません。業務委託契約では労働法が適用されないので、法律を知らないで契約書を交わしてしまうと、契約に縛られて低単価で手間のかかる記事を何か月にもわたり書き続けなければならない、なんてことも実際あります。
依頼主となる企業は、契約に関しては非常にしたたかな面があります。フリーライターは自分の身を守るためにも、条件が不利になるような契約はしないようにするとともに、基礎的な法律は学んでおくのがいいでしょう。