2020年から猛威を振るう新型コロナウイルス。世界各国でワクチン接種が進む中、感染者の急増を受けて都市封鎖といった規制を敷く国・都市も多くあります。そんな中で海外情報を記事に起こすライターは、どのような制限を要求され、どのように仕事を続けて生計を立てるのでしょうか。
知っておくべき非常事態宣言。コロナだけではない
今回のコロナ禍を契機に、「非常事態宣言」、「都市封鎖(ロックダウン)」という政府が敷く、いわゆる戒厳令を肌で実感することになりました。ご存知の通り、日本は世界の戒厳令と比較すると非常に緩やかで、非常事態宣言が出されても外出は自由です。しかし、海外では、このような宣言下では、その都市の住民はほとんどの自由が奪われます。当然仕事も同様で、政府自治体の一声で、仕事ができないだけではなく、家からも一歩も出ることができない日々が続くこともあります。
コロナが落ち着いたあとも、当面は上記のような戒厳令は発動しやすい状況にあることは間違いありませんし、コロナが仮に収束したとしても、新たな新型ウイルスの蔓延によって、再びコロナ禍の恐怖が再来することも考えられます。そのため、海外と日本を往復する方や、海外に生活の拠点を置く旅行ライターは、非常事態宣言下の状況の中での立ち回り方を覚えておく必要があります。
海外渡航先のコロナ禍での戒厳令の内容を知っておく
戒厳令がどの程度の強制力を持つかは、その国によって大きくレベルが異なります。そのため、今後は海外に渡航する前に、渡航先の国がこれまでどのようなコロナ対策及び戒厳令を発令していたのかを調べておくのがいいでしょう。
例えばベトナムや中国のような社会主義国は、政府自治体が国民を管理することができます。強制的に居住エリアを隔離したり、ワクチンを半ば強制に打たせることもできます。都市封鎖も容易のため、翌日には都市間の移動ができなくなり、海外旅行ライターは取材に行けなくなることもあるでしょう。また、出入国を制限されると、最悪日本に帰国すらできなくなりますので、そういった点も踏まえて、十分なリスクヘッジを日本にいるうちから考えておくといいでしょう。
コロナ以降の必須の対策。海外旅行ライターは、予め商用ビザの申請をしておく
コロナ禍で海外旅行ライターが現在進行形で不安材料として挙げられるのが「ビザの有効期限です」。数日間の滞在であれば、日本のパスポートならばノービザで入国することができますが、旅行ライターの多くは、仕事案件とは別に写真素材も大量に集めるため、数週間~数か月単位で海外現地に滞在するのが普通です。しかし、コロナの渦中では日本や第三国に出国する飛行機がなくなったり、都市封鎖により出国できない海外旅行ライターが世界で数多くいるのが現状にあります。このような事態では、当該国の政府がビザが切れた外国人に対して滞在期限の延長措置を実施してくれるため、不法入国には当たりませんが、制限が解除されたと同時に数週間の猶予の中で出国を迫られることになります。
このような状況を回避するため、コロナ禍もしくは以後に海外に滞在するライターは、例え一週間程度でも、事前に観光もしくは商用ビザをしっかりと取得するようにしましょう。ビザは現地の大使館や領事館でも申請をすることができますが、自分が赴く都市に大使館があるとも限りませんので、日本で済ませるに越したことはありません。
海外旅行ライターは、現地入国条件は常に最新の情報を取得する
コロナ以前は、海外に行く場合に、その国の入国条件はそれほど気に留めていなかった人がほとんどでしょう。中東や西アジアのような紛争地域にでも行かない限り、日本人のパスポートがあれば数週間はビザが免除されますし、入国条件もほぼありませんでした。しかし、コロナを皮切りに、ほとんどの国で外国人に置ける入国条件が大きく変わっています。日本を感染者増として指定した国は、日本人の入国に対して一層の難問を強いることでしょうし、その他PCRの陰性証明書やワクチン接種済の通称ワクチンパスポートの有無なども入国条件に加味されることは間違いありません。
日本と深い友好関係にあり、特に経済的に結びつきが強いアジア、及びヨーロッパの一部の国では、入国条件はそれほど厳しくはならない見込みですが、それも状況次第で変わってくるので、海外渡航する前は各種証明書は取得しておくのが無難でしょう。
海外旅行ライターは複数業界で収益確保へ
海外を拠点に活動する旅行ライターは、これまでのように、日本の旅行会社や観光サイトから受注する旅行記事のみで生計を立てることは難しくなることが予想されます。コロナ禍により旅行業界全体が規模を小さくしており、これはライターに依頼する記事単価にも影響を及ぼすでしょう。また、日本の旅行者数が戻ってきても、自分が居住している国の感染者数が減らなければ、日本人は一向にやってきませんし、戒厳令によって取材できるお店が閉店してしまっていることも考えられます。
そのため、今後は旅行記事だけではなく、現地のビジネス情報や政治情報を発信したり、市場調査を請け負ったりと、旅行業とは関係ない業界から仕事を引っ張ってくるのが理想です。これまで多くの海外旅行ライターは、旅行と関係のある旅行者向けのレストランやホテル、お土産店などを取材対象や営業対象にしていましたが、コロナのように業界全体がしぼんでしまう可能性が出てきた以上、複数の業界で収益を確保するようにしてください。
海外旅行ライターのコロナ以降の生活のポイント
海外旅行ライターは、海外現地に滞在するさいのビザは観光目的が普通です。ただし、本当は旅行ライターであっても括りはジャーナリストビザであり、これはフリーランスが取得するのはかなり困難です。観光ビザの場合は、現地で収入を作ることができませんので、取引先から断られることもしばしばあります。もし現地の企業と取引をする場合は、最低でも商用ビザを取得するのがおすすめです。
また、コロナ禍で都市封鎖や社会隔離といった締め付けを積極的に実施していた都市に取材で訪れる場合は、拠点をゲストハウスやホテルではなく、レジデンスやマンションに移すことを強くおすすめします。海外滞在中にコロナ陽性者が居住エリア内にて発見され、社会隔離がはじまってしまうと、スーパーなど食材や日用品の買い物もままならなくなってしまいます。現地の調味料などが自治体から配給されても日本人は使うことができませんので、ひもじい思いをするはめになってしまうかもしれません。一方で、レジデンスや日本人駐在員が多く暮らすようなマンションは、敷地内に複数のコンビニやミニスーパーが営業しているものなので、社会隔離に遭っても買い物に困ることがありません。これらの物件は日割りで借りることができますので、agodaのような予約サイトか、現地の日系不動産会社に相談してみるといいでしょう。
海外旅行ライターはコロナ前後で働き方・生活の方法が変わるかも
海外旅行ライターは、コロナ後に向けて、いまのうちから新しい収入源を作ってくことをおすすめするとともに、コロナが落ちついて海外渡航が可能になった際も、これまでとはまた異なる準備や現地の滞在方法が必要となることが予想されます。是非安心・安全の取材旅行を楽しんでください。