昨今はトラベルライターの需要に伴い、「トラベルライター養成講座」も多く主催されるようになりました。しかし、「本当に養成講座は受講するべき?」という意見も多くあります。そこで、ここでは現役の旅行ライターがトラベルライター養成講座の要否を解説します。
トラベルライターの需要は年々増加傾向。高いスキルが求められる時代に
一昔前までトラベルライターは非常にニッチな世界でしたが、昨今は観光情報サイトや旅行予約サイトも増えてきて、トラベルライターの需要が急速に拡大しています。
トラベルライターの多くはフリーランスとなるため、良くも悪くもしのぎを削る世界です。旅行記事の需要拡大に伴い、今度は「質」が求められるようになり、ベテランライターも含めてふるいに掛けられているのが近年の業界背景となります。
トラベルライター向けの入門教科書・参考書はない?
フリーランスとなるトラベルライターは名刺さえ作ればその日から職に就けると言えますが、上述したように、今後は高い執筆スキルが求められるでしょう。
今からトラベルライターを志望する人の中には、「トラベルライターの入門的な教科書・参考書を買って勉強したい」という人もいますが、書店を探してもなかなか見つけることができません。
トラベルライターの歴史は浅く、2000年以降のIT時代に生まれたものとなります。仕事の探し方やSEOライティング、業界の市場は日々変わっているため、教科書や参考書で語れるものではありません。
近年増えてきた「トラベルライター養成講座」とは?
そこで近年見かけるようになったのが、トラベルライター養成講座です。IT企業や観光サイトが主催することが多いですが、稀に出版社とタイアップして主催される講座も見かけます。
トラベルライター養成講座の主な内容は、トラベルライターの仕事内容や執筆・取材・撮影・画像加工方法など多岐にわたりますが、講座によってどこのプログラムに注力しているかはまちまちです。
おすすめのトラベルライター養成講座の条件とは
しかし、ネット上に散見されるすべてのトラベルライター養成講座がおすすめというわけではありません。中には「これって意味あるの?」といった講座もしばしば見かけますので、受講する方はしっかりと吟味する必要があります。
1.現役トラベルライターが講師
受講者の世代に近い若いトラベルライターが講師であることは非常に重要です。中高年世代の講師は、トラベルライターというよりは記者・ジャーナリストが本業であることが多いため、一般の人が志望するトラベルライターと比較すると、踏んできたキャリアが大きく異るのであまり参考にはならないかもしれません。
また、講師は単に現役トラベルライターというだけでは不十分です。トラベルライターとしてサラリーマン以上の収入がある人が登壇しなければ、「やっぱりトラベルライターは不安定な仕事なんだ」と受講生はがっかりしてしまうでしょう。
2.教科書で学べない現地・仕事体験を教えてくれる
トラベルライター養成講座でありがちなのが、「記事の書き方」に特化したものです。SEOライティングは教科書や参考書を買えば十分ですし、国語文章力は教えられて短期間で伸びるものではありません。
一方でトラベルライターの養成講座は、スキル向上を目的というよりはネットや本には載っていない実際のトラベルライターとしての仕事内容や、どんな生活を日々おくっているかに焦点を当てているものがおすすめです。
トラベルライターはまだまだ実態が不透明な部分が多いので、現在志望している人にとっては、よりリアルな体験談を学ぶことがモチベーションに繋がるはずです。
3.仕事の探し方や収入事情など実際的な問題や疑問を解決してくれる
トラベルライター養成講座では記事の書き方に重きを置きがちですが、仕事を探し方や収入事情についても触れてくれる講座が良心的と言えます。
求人の探し方は、単にクラウドソーシングサイトの利用ではなく、企画書の作り方や編プロ・旅行会社へ自分を売り込む方法や持ち込み方法を教えてくれる講座がおすすめです。
なぜなら、クラウドソーシングサイトは副業や趣味で利用するのであればいいのですが、トラベルライターを本業にして、しっかりと収入を得ることを考えた場合は利用に適しているとは言えません。
また、受講生の多くはトラベルライターの懐事情も気になるところです。そういった予見できる点もしっかりとフォローして具体的な解説をしてくれる講座は、優良といえるのではないでしょうか。
おすすめできないトラベルライター養成講座とは
一方でトラベルライター養成講座として、おすすめできないものも実は少なくありません。コロナ以降は観光サイトを中心としたIT企業が自社の利益のために中身のない講座を主催しているケースも目立ちます。
少なくとも下記で解説する条件に当てはまる講座は、できる限り避けるのがいいでしょう。
1.主催陣や講師が編集部だけで構成されている
養成講座の受講料が相場よりも格安な場合は、主催陣営に注意が必要です。現役トラベルライターや有名作家・講師を招くことをせず、自社の編集人員が講師・主催している講座は、とてもではありませんが優良とはいえません。
なぜなら、受講生はトラベルライターを志望しているのであって、編集者になりたいわけではないからです。また、ほとんどのトラベルライターはフリーランスとして活動することになるので、登壇したトラベルライターが、主催する運営会社の社員である場合も、そこで得られる情報はあまり参考にはならないでしょう。
2.SEOライティングが中心の講座となっている
こちらもありがちなトラベルライター養成講座を受講した失敗例です。近年のトラベルライターはWEB記事が主流となっているため、Google検索順位の上位表示を達成する施策である「SEO対策・SEOライティング技術」は必須のスキルとなります。
しかし、SEOライティング技術は、何も養成講座で学ぶべきことではなく、それこそ参考書やネットで得られる情報で十分です。
養成講座を主催するIT企業は、自社には具体的に紹介できるトラベルライターの収入事情や仕事内容、生活情報を持ち合わせていないため、SEO対策を解説して、プログラムを埋めている事情が見え隠れしています。
3.画像の加工方法やサムネ作りなどの解説が多い
トラベルライター養成講座には、決まって「撮影した画像の加工方法」や「サムネ画の作り方・加工技術」などを学べる時間があります。プログラム自体はあってもいいのですが、1回の受講の半分を取るような時間構成はよろしくありません。
トラベルライターにとって画像加工技術の習得はそれほど重要ではありませんし、サムネ作りの技術を学んでも活かせる場はほとんどありません。もっと言ってしまえば、サムネ作りはトラベルライターではなく編集者の仕事です。トラベルライターの仕事内容としては、両者ともに実践的とは言えません。
フリーランスのトラベルライターは養成講座を受講するべきか
今回はトラベルライター養成講座の概要や優良とそうでない講座の違いをご紹介しました。会社に属さないフリーランスは、学ぶ場所・機会を自分で作らなければならないため、養成講座自体はおすすめできますし、数年後にはライターの登竜門になっていてもおかしくないでしょう。
しかし、養成講座が重要視されるようになると、それだけ粗悪な講座も増えてきます。受講生はしっかりと目利きをした上で、受講する講座を選ぶようにしましょう。