トラベルライターの中でも日本国内の記事を主に書いているのであれば、ビザ(査証)は必要としませんね。しかし、海外を渡り歩くトラベルライターであれば、ビザは必ず付きまとう問題となります。
ここではトラベルライターが取得するべきビザや実情を鑑みての対応。ビザ免除国とそうでない国の違いなど、知っておくべきビザにまつわる知識や問題点をご紹介します。
そもそもビザ(査証)とは
ビザとは「査証」とも呼ばれていて、外国に入国するにあたって、入国許可の申請証の1つとなります。日本人が一般的に外国を旅行する際、ビザが必要となるケースは短期滞在に限っていえばほとんどありません。これは日本が世界各国と良好な国交を築きあげている長年の成果といえ、2020年4月時点で短期旅行に際してビザが免除される国は、実に191か国に及びます。
しかし、ビザの免除条件を超える目的での入国や、中長期の滞在が予想される場合はビザの事前取得が必要となります。
トラベルライターが取得するべきビザ
ビザには観光ビザや就業ビザ、商用ビザ、配偶者ビザなど複数の種類がありますが、海外を取材する場合、世界で活躍しているトラベルライターはどのようなビザを取得しているのでしょうか。
厳密に言えば報道ビザが必要
トラベルライターという職業に合致したビザは、「報道ビザ」となります。世界を股にかけるジャーナリストや著名人を取材する取材班のほとんどは、しっかりとこの報道ビザを取得しているようです。しかし、想像に易いかもしれませんが、報道ビザは一般的な商用ビザ(ビジネス目的で入国するビザ)と比べると難易度は極端に上がり、社会主義のような厳しい報道規制をしいている国だと、滞在中は役人が同行したり、写真や記事、持ち物などがすべてチェックされたりと、仕事に支障をきたします。
報道ビザの必要の有無
「たかがレストランの取材だから、報道ビザは必要ないよね」と思うかもしれませんが、厳密に言うと、報道ビザは必要となります。報道ビザの取得の有無は、取材の範囲ではなく、職種によって決まるからです。具体的な職種は、報道カメラマン、雑誌記者、新聞社職員、編集者などが挙げられます。基本的に出版・報道目的で当該国への入国に対しては、この報道ビザの取得が義務付けられています。
もし海外情報を掲載する新聞社や雑誌社などに勤めていれば、報道ビザの取得も慣れたものとなりますが、フリーランスのトラベルライターが個人で報道ビザを取得するのは、あまり現実的ではありません。そのため、実際は観光ビザ、もしくは観光目的の入国におけるビザ免除を利用して、取材対象国に入国し、仕事をこなすことになるでしょう。
この国は気を付けよう!ビザ免除のない国(ビザの取得が必要となる国)
冒頭にご説明したように、日本のパスポートは世界でも無敵を誇り、ほとんどの国で観光目的の短期滞在であればビザが免除されます。しかし、一部の国では数日程度の滞在であってもビザの取得が必要となりますので、下記の国が取材対象国になっている場合は、ビザの取得条件をしっかりと調べておきましょう。
アジアのビザ対象国と滞在可能日数
- インド 90日以内
- カンボジア 30日以内
- ネパール 15日以内、30日以内、90日以内
- ミャンマー 4週間※2020年9月30日まで試験的にビザ免除
- ヨルダン 30日以内
- イラン 30日以内
- イラク 10日以内
アフリカのビザ対象国と滞在可能日数
- エジプト 30日以内
- アルジェリア 30日以内
- ガーナ 3か月以内
- カメルーンなど多数
※基本的にアフリカの入国に対してはビザが必要と考えてください。
その他のビザ対象国と滞在可能日数
- ロシア 30日以内
ビザの取得方法はさまざま
旅行の取材でビザ取得が義務付けられている国へ行く場合は、通常は日本にいるうちからビザの取得手続きを行います。ビザの取得にかかる日数は国によってまちまちなので、できれば渡航が決まったらその日の内に必要書類を準備する気構えでいましょう。
一番簡単なアライバルビザ
アライバルビザはビザ取得の中でも最も簡単な方法です。アライバルビザは入国審査の傍に設置されている窓口でビザを申請することができるので、日本国内の手続きは不要となります。ただし、国によっては「賄賂を要求された」、「長蛇の列で3時間待たされた」といったトラブルもあるようです。
最近増えてきた電子ビザ(eビザ)
わざわざ大使館に申請&受け取りに出向くのが大変、という人も多くいますし、むしろビザ取得に関してはそれが一番厄介でもあります。そこで最近各国の対応として増えてきたのが、「eビザ」と呼ばれる電子ビザ申請です。オンライン上でビザの申請をすることができ、あとは書類を印刷して入国審査で提出するだけとなります。電子ビザで取得できる種類が少ないのと、比較的大規模の空港でないと受け付けてくれないのが残念ですが、大使館に行く時間が惜しい人にとっては、非常に魅力的な取得方法です。
大使館・領事館にてビザ申請&取得
アライバルビザやeビザに対応していない国は、大使館・領事館でビザの申請及び取得をすることとなります。代行業者に依頼するのもいいですが、自分で行うとなると、申請と受け取りに最低2回は足を運ぶ必要がありますので、時間に余裕を見て手続きを行ってください。また、取材先の国で予定よりも滞在が延びてしまい、ビザ免除や現在所有のビザの範囲が超えてしまう場合も、現地に所在を置く大使館もしくは領事館に赴くこととなります。
現地でビザを更新する際の注意点
取材先の現地でビザを取得、もしくは更新する際は大使館か領事館に出向くことになりますが、ビザの発給は5~10日前後かかる場合が多いため、自分の残存滞在可能日数を確認した上で、早めに更新手続きをするようにしてください。また、大使館や領事館は各都市にあるわけではないので、自分が滞在している都市にない場合も考えられます。トラベルライターとして渡航する前に、大使館&領事館の所在地は必ずメモしておくようにしましょう。
ビザの取得条件は突然変わる!常に最新の情報を把握しておく
数日の短期滞在であれば、ビザの条件はあまり気にする必要はないかもしれませんが、トラベルライターとして渡航するのであれば、報酬に見合う成果が現地で必要となります。取材案件を早々に終わらせたあとは観光地を回って、独自取材・撮影をして、帰国後にクライアントにネタを提出できるようにストックを作っておきたいところ。そのため、ビザ免除を受けられるが、滞在可能日数が短い国においては、事前にビザを取得しておくのも一つの方法です。
ただし、東南アジアや中近東といった新興国では、ビザの取得に関する法律が頻繁に変わることがあります。1年前、2年前の古い情報で臨むと、ビザの取得条件を満たすことができなく、滞在許可が下りないことも考えられます。現地でビザを更新できなく期日を過ぎてしまうと不法滞在となるので、現地のビザ取得条件は必ず最新版を把握しておくようにしましょう。
ビザはかなりセンシティブな問題となる。早めの解決を
トラベルライターとして海外取材をこなしていくと、必ずビザの問題が立ちはだかることでしょう。海外現地に到着したあとでは、問題は解決できない場合があり、帰国を余儀なくされることもあるかもしれません。非常にセンシティブな問題となるため、取材する国におけるビザの情報は、必ず当該国の大使館や領事館のホームページで確認するようにしてください。